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王都炎上篇
第19話 《一年前の予言 ②》
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ブレインの顔に陰がかかった気がした。イブキはハーレッドの言葉を思い返す。
一年前の悲劇――。
「リムル神の予言……竜人族討伐ですね」
「ええ。魔法七星は討伐隊を組み、竜人族の里を襲撃したのです。もちろん、竜人族は強力な力を持っているので、一筋縄ではいきません。互いに、死者が出るほどでした。火種はどんどん大きくなり、ついには私たちのところにまで火はやってきました。――『彼女』が捕まったんです」
「え……?」
イブキは絶句した。
「ど、どうして?」
「『彼女』が竜人族であることを、街のみんなは知っていました。いきなり捕虜にすると討伐隊が乗り込んできたのです。彼女はそれを受け入れようとしていました。ですが、私は抗ったのです。彼女を取り戻すべく。私は罪人にさえなろうと決意しました。たとえ誰かの命を奪っても、『彼女』だけは助けたい、と。しかし、私は衰えてしました。力及ばずに彼女は捕虜となって……それ以降、彼女がどうなったのか知りません。私が墓守になったのも、それからです。この戦いで亡くなった人々を、たとえ竜人族であろうとしっかりと埋葬してあげたかったのです」
拳を握りしめるブレインを、イブキは見守ることしかできなかった。そんなことが過去にあっただなんて、想像もつかなかったのだ。
「それで、ハーレッドと……?」
「ええ。私は良い人ではありません。ハーレッド様たちに、代わりに復讐をしてもらい、捕虜たちを助けてほしかったのです。この世界に……リムル神の予言に。だから、私は転移ポータルを作り、竜人族へと協力したのです。これだけエネガルムから離れていたら、バレないと思っていましたが。ですが、バレたらバレたで、罠として使えます。そうやって魔法七星へも復讐をする予定だったのですが……」
それから言わんとすることはわかった。ハーレッドにも同じことを言われていたからだ。
「わ、私が邪魔しちゃったってことですね」
「はい。でも、それで良かったのかもしれません」
「私は別に、あなたたちの邪魔をしたかったわけじゃないですよ。ただ、友達を守るためにそうなってしまったわけであって……。私は、復讐には手を貸しません。けれど、捕虜となった竜人族を助けることには協力します」
「ですが、そんなことをしようものなら、罪人に……」
「ふんっ、わたしは《災禍の魔女》ですよ。リムル神の予言通りなら、すでに罪人みたいなものです」
イブキはわざとらしく胸を張って見せた。変な理屈だが、ブレインは笑ってくれた。
「ありがとうございます。……それで、これからどうするつもりですか?」
「ハーレッドには、待機してもらってます。ブレインさんは、当時竜人族討伐について、誰が指揮を取っていたかわかりますか?」
「いえ……魔法七星の誰か、ということしか知りません」
「うーん……同じ魔法七星のノクタなら知ってるのかなぁ……」
シャルにノクタへ直接訊いてもらうことも考えたが、やめたのだ。そんなことをいきなり聞きでもしたら、シャルまで疑われてしまう。イブキが直接聞こうにも、氷花騎士団本部まで入れるわけがない。
「転移ポータルの件はどうしても氷花騎士団内で報告されているから、時間がないんだよな……やっぱり、アレしかないかな……」
「アレ、とは?」
「リムル神の予言は、大司教が管理してるんですよね」
「まあ、そうですが」
「その大司教なら、なにか知っているんじゃないかと思いまして」
「それって、大司教がいる塔へ直接乗り込むってことですか? 面会なんて、できませんよ。魔法七星の誰が指揮を取っていたのかは、他に調べる方法が……」
「いいんです。他にも、確認したいことがあるので」
イブキが確認したいことは二つある――。
ブレインの話を聞く限りでも、竜人族がエネガルムを火の海にするだなんて、想像できやしない。その予言の真偽を確かめたいのだ。会社の報告書も一緒だ。都合の悪い部分は、伝えていない可能性もある。元社畜のイブキならではの考えだった。
もう一つは単純だ。
イブキ自身の《災禍の魔女》としての予言である。本当にそんな予言があるのか。それもついでに確かめたいから。
あとはどうやって塔へ忍び込むかだ。
あの塔に侵入できそうな窓はなかったはずだ。正面からの突破は、不可能だろう。
――魔術がなければ、の話だが。
イブキは立ち上がり、壁に掛けたローブを羽織った。ブレインが咄嗟に声をかける。
「どこへいくおつもりですか?」
「食後の軽い運動です」
ブレインには、イブキがどうするつもりなのかわかっていた。だがこんな小さな女の子に希望を抱いてしまっている。ブレインはそれ以上呼び止めなかった。
イブキは小屋の外へ出ると、フードを被った。そしてぐっと伸びをして、息を吐く。
――さあ、リムル神の牙城へ乗り込んでやるとしよう。まずは大司教へ会う。ついでにリムル神に会えたら、文句の一つでも言ってやるのだ。
一年前の悲劇――。
「リムル神の予言……竜人族討伐ですね」
「ええ。魔法七星は討伐隊を組み、竜人族の里を襲撃したのです。もちろん、竜人族は強力な力を持っているので、一筋縄ではいきません。互いに、死者が出るほどでした。火種はどんどん大きくなり、ついには私たちのところにまで火はやってきました。――『彼女』が捕まったんです」
「え……?」
イブキは絶句した。
「ど、どうして?」
「『彼女』が竜人族であることを、街のみんなは知っていました。いきなり捕虜にすると討伐隊が乗り込んできたのです。彼女はそれを受け入れようとしていました。ですが、私は抗ったのです。彼女を取り戻すべく。私は罪人にさえなろうと決意しました。たとえ誰かの命を奪っても、『彼女』だけは助けたい、と。しかし、私は衰えてしました。力及ばずに彼女は捕虜となって……それ以降、彼女がどうなったのか知りません。私が墓守になったのも、それからです。この戦いで亡くなった人々を、たとえ竜人族であろうとしっかりと埋葬してあげたかったのです」
拳を握りしめるブレインを、イブキは見守ることしかできなかった。そんなことが過去にあっただなんて、想像もつかなかったのだ。
「それで、ハーレッドと……?」
「ええ。私は良い人ではありません。ハーレッド様たちに、代わりに復讐をしてもらい、捕虜たちを助けてほしかったのです。この世界に……リムル神の予言に。だから、私は転移ポータルを作り、竜人族へと協力したのです。これだけエネガルムから離れていたら、バレないと思っていましたが。ですが、バレたらバレたで、罠として使えます。そうやって魔法七星へも復讐をする予定だったのですが……」
それから言わんとすることはわかった。ハーレッドにも同じことを言われていたからだ。
「わ、私が邪魔しちゃったってことですね」
「はい。でも、それで良かったのかもしれません」
「私は別に、あなたたちの邪魔をしたかったわけじゃないですよ。ただ、友達を守るためにそうなってしまったわけであって……。私は、復讐には手を貸しません。けれど、捕虜となった竜人族を助けることには協力します」
「ですが、そんなことをしようものなら、罪人に……」
「ふんっ、わたしは《災禍の魔女》ですよ。リムル神の予言通りなら、すでに罪人みたいなものです」
イブキはわざとらしく胸を張って見せた。変な理屈だが、ブレインは笑ってくれた。
「ありがとうございます。……それで、これからどうするつもりですか?」
「ハーレッドには、待機してもらってます。ブレインさんは、当時竜人族討伐について、誰が指揮を取っていたかわかりますか?」
「いえ……魔法七星の誰か、ということしか知りません」
「うーん……同じ魔法七星のノクタなら知ってるのかなぁ……」
シャルにノクタへ直接訊いてもらうことも考えたが、やめたのだ。そんなことをいきなり聞きでもしたら、シャルまで疑われてしまう。イブキが直接聞こうにも、氷花騎士団本部まで入れるわけがない。
「転移ポータルの件はどうしても氷花騎士団内で報告されているから、時間がないんだよな……やっぱり、アレしかないかな……」
「アレ、とは?」
「リムル神の予言は、大司教が管理してるんですよね」
「まあ、そうですが」
「その大司教なら、なにか知っているんじゃないかと思いまして」
「それって、大司教がいる塔へ直接乗り込むってことですか? 面会なんて、できませんよ。魔法七星の誰が指揮を取っていたのかは、他に調べる方法が……」
「いいんです。他にも、確認したいことがあるので」
イブキが確認したいことは二つある――。
ブレインの話を聞く限りでも、竜人族がエネガルムを火の海にするだなんて、想像できやしない。その予言の真偽を確かめたいのだ。会社の報告書も一緒だ。都合の悪い部分は、伝えていない可能性もある。元社畜のイブキならではの考えだった。
もう一つは単純だ。
イブキ自身の《災禍の魔女》としての予言である。本当にそんな予言があるのか。それもついでに確かめたいから。
あとはどうやって塔へ忍び込むかだ。
あの塔に侵入できそうな窓はなかったはずだ。正面からの突破は、不可能だろう。
――魔術がなければ、の話だが。
イブキは立ち上がり、壁に掛けたローブを羽織った。ブレインが咄嗟に声をかける。
「どこへいくおつもりですか?」
「食後の軽い運動です」
ブレインには、イブキがどうするつもりなのかわかっていた。だがこんな小さな女の子に希望を抱いてしまっている。ブレインはそれ以上呼び止めなかった。
イブキは小屋の外へ出ると、フードを被った。そしてぐっと伸びをして、息を吐く。
――さあ、リムル神の牙城へ乗り込んでやるとしよう。まずは大司教へ会う。ついでにリムル神に会えたら、文句の一つでも言ってやるのだ。
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