社畜OL(22)、魔女(9)になる~どうやら世界を滅ぼす魔女のようです~

ありすぶるー

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王都炎上篇

第22話 《疑念》

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 塔を出る頃には、眠らせた警備隊たちもすでに起きかけていた。それもそうだ。入ってから、2時間も経っているのだから。もう少し遅かったら、ばったり出くわしていたかもしれない。

(こんなぐっすり眠るなんて、よっぽど疲れてたんだろうな、この人達……)

 社畜時代の自分と重ねながら、イブキは塔を後にしたのだった。
 


 
 そして今、イブキは広場前の酒場に来ていた。広場前には酒場は一軒しかなく、フィオの情報によれば魔法七星の一人、レーベはここにいるはずだ。

 だが、イブキは門前払いを食らっていた。酒場の前にいた男性に、見つかってしまったのだ。もちろん、フードは被ったままなので、《災禍の魔女》とはばれていないはず。
 男性は諭すようにゆっくりと話す。

「嬢ちゃん、ここは子供は入れないんだよ」

「レーベって人に会いたいの。お酒も飲まないし、入らせてよ」

「そんなことしたら、俺が怒られちまうよ」

 この繰り返しだ。幼女姿のこの体も、こういう時に案外不便なものだ。

「じゃあ、呼んできてほしいな」

「伝えとくよ、どんな要件だい?」

 イブキは黙ってしまった。このまま、話してもいいものか。できれば、二人きりのときがいいが……。

「ええっとぉ」

 その時、酒場の扉が開いて、髪を短く切りそろえた、細身の背の高い男が現れた。
 歳は30くらいだろう。唇が厚く、目はぱっちりとしている。なぜか、顔はばっちりメイクしていた。

「アタシに何の用?」

 その男がかすれた声でイブキへ投げかける。イブキはそこで理解した。多分、この人は『ソッチ』の人だ、と。別に偏見はないけれど。

「あなたが、レーベ=シルビオ?」

「そうよん」

 男――レーベは変な口調で応え、イブキへウィンクした。

(寒気がっ……!!)

 イブキが二人きりで話したい、と伝えると、レーベは承諾してついてきてくれた。噴水前のベンチに二人腰掛けると、口火を切ったのはレーベだった。

「久しぶりねぇ、《災禍の魔女》さん。あなたがなんで、エネガルム内部にいるのかしらねん」

 魔女裁判のこともあり、魔法七星に顔を覚えられていることは承知の上だった。フードだけでは、限界があったか。
 イブキは挑戦的な目で、隣のレーベを見る。

「どうする? わたしを、氷花騎士団に突き出す?」

「いいえ。あなたに、興味があったのよ。丁度いいわ。でも、まずはあなたの話を聞こうかしら」

 レーベがまたウィンクする。イブキは胸焼けのような感覚を覚えてしまう。

(破壊力がすげー……)

 気を取り直して、イブキは問う。

「カルラ山の転移ポータル……竜人族の話って多分聞いてるよね?」

「ええ。氷花騎士団から、魔法七星に報告があったわね。あなたが竜人族を撃退して、逃げてこられたんだってね」

「まあ、ね。その時に、一年前の予言について聞いたの。竜人族がエネガルムを火の海にする、って。それを食い止めるために、竜人族討伐部隊が組まれた、ってね。その時、指揮を取っていたのって、あなた?」

 はっきりと訊きすぎたかと思ったが、レーベは対して気にしていない様子で応えてくれた。

「その通りよ。アタシが、確かに指揮を取ったわ。もう二度と、あんなことしたくないけれどね」

「その時に、竜人族を殺したり……捕らえたりしていたって聞いたの。リムル神の予言は絶対だと聞いたわ。その予言は必ず現実になるはず。なのに、なぜ……?」

「そうか、あなたは知らないのね。予言は、たしかに覆された例はない。けれど、予言をにはできるのよ」

「ど、どうやって!?」

 イブキは無意識に詰め寄ってしまう。自分の、《災禍の魔女》としての予言も、なかったことにできるかも、と考えたのだ。

 しかし、レーベの答えは求めていたものとは違うものだった。

「予言の対象を、消すのよ。つまり……竜人族さえいなくなれば、予言の出来事は必ず起きない」

「対象がいなくなれば……? でも、だからって……」

「あなたはわかっていないのよ。残酷だと言うんでしょうね。でもね、アタシはそうは思わない。エネガルムが襲撃されたら、ひとたまりもないわ。いろんな人が、死ぬかもしれないのだから。だからアタシは、魔法七星として、みんなを守るために必死なのよ」

 レーベは夜空を見上げる。あいにく雲が厚くて、星が見えない。

(本当に、そうなのかな?)

 イブキはレーベの言葉を信じていなかった。レーベが持つ『予言の書』の中を見るまでは、信用できない。だが、足を踏み入れ過ぎたら、警戒されておしまいだ。『予言の書』については気づかないフリを続け、探っていくしか無い。

「ねえ、わたし、宿がないのよね。レーベの家に泊まらせてくれない?」

「アタシの家に?」

「うん。嫌ならいいけど。こーんな幼女さんをぽつんと置いてけぼりにしたいならね」
 
 レーベは笑った。強引すぎただろうか。でも、映画の主人公が「潜入捜査は時に大胆に」って言っていたし……。

「いいわよ、来なさい。ただし、他の魔法七星や氷花騎士団には内緒よ?」

 イブキは頷いた。これはチャンスだ。うまく行けば竜人族に関する『予言の書』の中身を見ることができるかも。

 イブキは意気揚々と立ち上がる。レーベは「んもう、はしゃいじゃって、カ・ワ・イ・イ」とまたイブキを震え上がらせていた……。


 

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