2 / 24
コンビニ家族編
AIの妖精
しおりを挟む
「お父さん、大丈夫?」
深夜三時頃に、絆は父親が心配になって二階の自宅からコンビ二店舗に降りてきていた。
日本最大のコンビ二チェーン<8-12>では、この二階が自宅のシステムが標準であり、何といっても通勤時間ゼロ分、通勤費ゼロだとその効率性を誇っていた。
<8-12>米国本部は朝8時から夜の12時まで営業であるが、何故か日本支部だけ24時間営業である。日本人は働き過ぎだと言われる訳だ。
父親の春樹は案の定、コンビ二のレジで眠りこけていて、母親の妙子は仮眠中である。
「父さん、疲れたね。絆がレジ打つよ。寝ててね」
絆はバックヤードの更衣室で制服に着替えてレジに立つ。
過疎が進んだ地方都市の深夜三時ではさすがに客が途絶える。
だが、店舗の指導をしてくれているSVさんによれば、深夜に営業しないと昼間の売上げが三割落ちるそうで、バイトがいないと父親の春樹がレジに立つようにしていた。
絆からみたら、もう店を閉めてもいいんじゃないかと思う。
絆も眠い目をこすって必死で耐えていたが、ついにあまりの暇さに立ったまま居眠りをはじめた。
その時、POSレジの上に不思議な立体映像が浮かび上がった。
エメラルドグリーンの髪、ブルーの瞳で透明の翅をもつ、掌に乗るぐらいの妖精のような少女である。
「・・・・・はっ! いつのまにか、寝てたわ。――あなた、誰なの?」
絆はPOSレジの上に見える、妖精のような小さな少女に気づいて話しかけていた。
「AIの妖精、ルナで~す」
と軽い感じの返事が返ってきた。
「うん? AI? 人工知能とかいうやつ? このPOSレジ、そういう機能が付いてるの?」
絆は眠い目を何度もこすりながら、そういう解釈をした。
「まあ、そんなところです。え~と~、あなたの願いは何ですか?」
「うーん、それはねえ。か・・・・じゃなくて、このコンビ二が流行って生活が楽になることかな。このままじゃ、私の両親、死んじゃうよ」
絆は本当は彼氏が欲しいといいかけて、少し考えて、やっぱり、両親のことを考えた。
「お安い御用です」
ルナはPOSレジをハッキングして、あるデータを書き換えた。
それは廃棄食品のロスチャージと呼ばれる特殊会計システムだった。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「え? もう終わったの?」
「うん、明日から売上げも利益もバンバン上がりますよ」
ルナは右手を高く上げるポーズでいう。
「ほんと。嘘でしょ?」
「明日も深夜三時に、ここに出てくるので、今日一日楽しみに過ごしてみてね」
「うん、まあいいか。小さな妖精さん」
絆も疲れが溜まっているので、とりあえず、納得することにした。
「では、バイバーイ!」
手を振りながら、ルナはPOSレジの上から夢のように姿を消した。
AIの妖精と名乗るルナの最初の魔法はそうやってはじまった。
絆は今日の夕方には最初の奇跡を見ることになる。
深夜三時頃に、絆は父親が心配になって二階の自宅からコンビ二店舗に降りてきていた。
日本最大のコンビ二チェーン<8-12>では、この二階が自宅のシステムが標準であり、何といっても通勤時間ゼロ分、通勤費ゼロだとその効率性を誇っていた。
<8-12>米国本部は朝8時から夜の12時まで営業であるが、何故か日本支部だけ24時間営業である。日本人は働き過ぎだと言われる訳だ。
父親の春樹は案の定、コンビ二のレジで眠りこけていて、母親の妙子は仮眠中である。
「父さん、疲れたね。絆がレジ打つよ。寝ててね」
絆はバックヤードの更衣室で制服に着替えてレジに立つ。
過疎が進んだ地方都市の深夜三時ではさすがに客が途絶える。
だが、店舗の指導をしてくれているSVさんによれば、深夜に営業しないと昼間の売上げが三割落ちるそうで、バイトがいないと父親の春樹がレジに立つようにしていた。
絆からみたら、もう店を閉めてもいいんじゃないかと思う。
絆も眠い目をこすって必死で耐えていたが、ついにあまりの暇さに立ったまま居眠りをはじめた。
その時、POSレジの上に不思議な立体映像が浮かび上がった。
エメラルドグリーンの髪、ブルーの瞳で透明の翅をもつ、掌に乗るぐらいの妖精のような少女である。
「・・・・・はっ! いつのまにか、寝てたわ。――あなた、誰なの?」
絆はPOSレジの上に見える、妖精のような小さな少女に気づいて話しかけていた。
「AIの妖精、ルナで~す」
と軽い感じの返事が返ってきた。
「うん? AI? 人工知能とかいうやつ? このPOSレジ、そういう機能が付いてるの?」
絆は眠い目を何度もこすりながら、そういう解釈をした。
「まあ、そんなところです。え~と~、あなたの願いは何ですか?」
「うーん、それはねえ。か・・・・じゃなくて、このコンビ二が流行って生活が楽になることかな。このままじゃ、私の両親、死んじゃうよ」
絆は本当は彼氏が欲しいといいかけて、少し考えて、やっぱり、両親のことを考えた。
「お安い御用です」
ルナはPOSレジをハッキングして、あるデータを書き換えた。
それは廃棄食品のロスチャージと呼ばれる特殊会計システムだった。
「はい、これで大丈夫ですよ」
「え? もう終わったの?」
「うん、明日から売上げも利益もバンバン上がりますよ」
ルナは右手を高く上げるポーズでいう。
「ほんと。嘘でしょ?」
「明日も深夜三時に、ここに出てくるので、今日一日楽しみに過ごしてみてね」
「うん、まあいいか。小さな妖精さん」
絆も疲れが溜まっているので、とりあえず、納得することにした。
「では、バイバーイ!」
手を振りながら、ルナはPOSレジの上から夢のように姿を消した。
AIの妖精と名乗るルナの最初の魔法はそうやってはじまった。
絆は今日の夕方には最初の奇跡を見ることになる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる