刀剣武具士のクリエイトアート【最適を極めし無形】

白鳥kei

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一話

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1
天井の隙間から仄かに陽光差し込む洞窟でモンスターは男と対峙する。
天井で巣を張る5メートル程の黒い巨大な【錬金蜘蛛(アルケミースパイダー)】は口から硬質化した糸を弾丸の様に飛ばして男を貫こうとする。
それを躱しながら男は錬金蜘蛛の真下に向かい、走る。
十数発は放った攻撃全てが避けられ、当たらないと判断した錬金蜘蛛は吐く糸を硬質化から切断性に特化した糸に変えて男の周りに投網状に飛ばす。
その投網状の糸に触れた洞窟内の岩はバターの様に切れる。
それは、例え鋼鉄の鎧ですらバラバラにする程の切れ味。
だが、その鋭利な糸は対象に触れる前に男の手に持った槍によって男の進行ルートにある糸は全て切り落とされる。
自身の真下まで十数メートルまで来られた錬金蜘蛛はこれ以上の接近を防ぐ為に真下の地面に粘性に特化した糸を乱雑に吐く。床一面に敷かれた糸の床は触れた物をワイバーンですら決して逃さない程の粘着性。
その糸に捕まったのなら、そのままトドメを刺す。
糸を避けようとしたらその隙を突く。
そう判断して配置した錬金蜘蛛だったが、次の瞬間見た光景はその糸の床へ持っていた槍を地面に刺してその勢いで槍ごと自分に向かって跳ぶ男の姿だった。
目前まで来られ、構えられた槍に対して咄嗟に両前足を使い防ごうと身構える。
が、それに対して男は錬金蜘蛛を狙わず、足場である巣を切り裂いた。
拠り所である巣を失い、なす術もなく地面に仰向けに倒れた錬金蜘蛛は体勢を直そうと動くが、先程自身が敷いた糸の床によって身動きが取れない事に気付く。
そこへ落下して来た男によって首を槍で突き刺され、錬金蜘蛛はそのまま力尽きた。
2
数分後、武器をしまい倒した錬金蜘蛛から地面に降りる。
錬金蜘蛛は自身の出す糸に魔力を込め、様々な特性を付与して操れる代わりに錬金蜘蛛から離れた糸は数分で魔力が無くなり、ただの糸になる。
故に、既に床一面の糸は一切の粘着力を無くしていた。
男は解体しながら素材を集める。
「爪と牙と皮と…お⁉︎これはかなり良い魔結晶だ‼︎」
機嫌良く、野球ボール程の無色透明な玉を他の素材と共にしまう。
「さてと、ここでの用事も終わったし、外で朝飯食べたら戻るか」
そう言って洞窟からその男、ラストは出て行った。
3
洞窟から離れた草原でラストは地面に槍を刺し、腰のバッグから取り出したシートを敷き、弁当箱と水筒を取り出す。
「深夜からずっと食べずに来た物だから流石にそろそろ食べないとぶっ倒れてしまうぜ」
そう言いながら食事の準備を進めながら
「しかし大分素材も集まったし、そろそろ街に戻らないとな~」
と苦々しい顔で呟く。
ここ数日、素材集めの為に街に戻らず、この近くの村と周辺を行き来してたが、流石に拠点の街に戻らねばギルドに怒られる。
(まぁ、とりあえずはこの弁当を食べて、もう少し素材集めてから村で一晩過ごして翌朝帰れば良いか)
そう予定を立ててから弁当箱を開けようとして…
『嫌‼︎助け…誰か助けて‼︎』
…叫び声が聞こえた。
素早く弁当箱や水筒などをバッグにしまった後、立ち上がり不機嫌そうに
「森の中、5kmぐらい先か…」
つぶやき、傍らに刺してた槍を引き抜いて先にある森を見つめる。
「折角、仕事終わりに気持ち良く飯食べようと思ったのにな‼︎」
槍を片手に持ち、森の方へラストは駆け出した。
4
木々が生い茂り、手掛かり無しでは捜索など困難な森の中、まるで目的地が分かるかの様に木々や岩を飛び越える。
その先で目的の人を見つける。
見つけた人は女性で岩を背に尻餅をつき、それを1m程の緑色の人型をした【ゴブリン】が棍棒を持ち、襲おうとしていた所だった。
「ゴブリンが1体か…なら、このまま‼︎」
ゴブリンが背後から走って来る自分に気付くが、振り向いた瞬間に右手に持った槍を水平に薙ぎ払い、ゴブリンを両断する。
そして槍を回して血を落としてから地面に突き刺した。
「周辺にモンスターの反応は…良し、今の所は大丈夫か。おい、大丈夫か」
女性を見て声をかける。
パッと見た所、目立った怪我は見当たらないので大丈夫だとは思うが、念の為確認をする。
「あ…はい、大丈夫です…。あの、ありがとうございます」
女性は自分を見上げながら恐る恐る頷いた。
それに安堵してから女性を観察する。
黒髪の長髪で、この周辺どころか街でも見ないレベルの容姿端麗。年齢は18歳の自分より少し若いぐらい。服装は白のシャツに紺のスカートとシンプルだが、使用されてる物はかなり良い生地を使ってるのが分かる。
「えっと…今の所は周りにモンスターは居ないけど、この辺りはモンスターが出やすい。とりあえず安全な所まで行こうと思うけど歩けそうか?あ~、俺の名前はラスト。よろしく」
美人慣れしてない為、少ししどろもどろになりかけたが、手を差し伸べながら声をかける。
「はい、大丈夫です」
手を握りそのまま女性は立ち上がり、
「私はカンナギと言います。ありがとうございます。」
そう女性は名乗った。
5
森を出て、自分が休んでた草原まで戻った頃には太陽が真上を少し過ぎた頃だった。
ここまで、自分が先導し、カンナギがそれに無言で着いて来る状態だった。
相手から話しかけて来るのは無かったし、少し歩いただけでカンナギが森の中を歩くのが慣れてないのが分かった為、会話しながら歩く事で転ばない様にする為、話しかけはしなかった。
と、言うのは建前で本心は
(こんな美人と会話なんて経験無いぞ‼︎どうすれば良いんだよ‼︎)
と叫びたくなる気持ちだった。
だが、流石にこのままではいけないと決心し、地面に持っていた槍を突き刺す。
「ここまで来たら後は大丈夫。近くにモンスターも居ないし少し休もう」
そう言って腰のバッグからシートを2つ敷いてその一つに腰を下ろす。
カンナギにも座る様に促すと同じ様にもう片方のシートに腰を下ろす。
「所で、どうしてあの森に?あそこはモンスターが多いから君の様な人には危険しか無いはずだけど」
たまたま自分が気づいたから良かったものの、少しでも遅れてたら最悪のケースになってたのは言うまでもない。理由ぐらいは聞いても良いだろうと思って聞いてみるが…
「……………」
何も言わず申し訳無さそうに俯かれてしまった。
「いや、怒ってる訳じゃないよ‼︎ただ気になっただけだったから。答えたくなかったら言わなくて良いからね」
焦りながらそう答える。
「とりあえずもう昼頃だからご飯でも食べよう。お腹は空いてる?」
腰に着けてたバッグから4人分はあろう弁当箱と水筒を取り出す。
と、それを見たカンナギは顔を上げ、バッグをまじまじと見つめる。
「あ、はいありがとうございます。お腹は空いてますので助かります…あの~そのバッグからどうやってそんな大きな弁当箱を出したんですか?」
と不思議そうに聞いてきた。
「え、収納魔術が付与されたバッグだよ?しまう時に魔力で紐付けして、出す時は紐付けした魔力に合った物をしまった時と同じ状態で出す魔道具だけど見た事無い?」
「はい、初めて見ました」
そう言って物珍しそうにバッグを見つめる。
(大量に収納出来る高ランクの収納魔術が付与された物なら滅多にお目にかかれないけど、低ランクなら村でも持ってる人がいるくらいなのに?)
と、疑問に思うが
「まぁ、とりあえずはご飯にしよう。宿の人に多めに頼んどいて良かったよ」
腹が減っては何とやら、洞窟内で用事を済ませて疲れた所でカンナギを助けるために走ったから、いい加減食べないと倒れかねないと判断したラストは疑問よりも食事を優先して食事を取る。
 村で取れた新鮮な野菜とチキンのサンド、タマゴのサンド等が敷き詰められた弁当を二人で食べ終える。
因みに、食べ始める前はそんなに食べないと言っていたカンナギだが、結果はラストと同じ量を食べていた。
(残りは昼食にしようと思ってたけど凄い食べっぷりだな)
結果、大量にあったサンドイッチは空になっていた。
「本当に助かりました。命だけで無く、食事も頂いて」
深々とおじきするカンナギ。
「気にしないで良いよ、困った時はお互い様だし、それに面白い物も見れたしね」
笑いながら食事の時の事を思い出す。
カンナギは最初は遠慮して少しずつ食べていたが、最終的にサンドイッチが吸い込まれると表現する程の速さで食べていたのだ。
「仕方ないじゃないですか、美味しかったし、安心したらお腹が空いたんですから」
少し膨れっ面になってカンナギは怒る。
「ごめん、ごめん。所でこの後はどうする?俺は一旦、ニケイ村に戻る予定だったけど、近くの町とか村に住んでるのなら護衛して連れてっても良いよ?」
初めの美人慣れしてない事による緊張なんてすっかり無くなりそんな提案をする。
それに、この子とここで別れてまた襲われてても気分が悪い。
とりあえず家のある所までは護衛しようと思って話す。
するとカンナギはまた俯きながら
「分からないんです。気付いたらあそこに居て、周りを見回したらあの化け物に出会って、慌てて逃げて…」
困り顔でそう話した。
「うーん、分からないのか…うん?化け物って…ゴブリンの事を知らないの?」
「はい、ゴブリンという名前なのですか?あの化け物は」
カンナギはうなづく。
(おいおい、ゴブリンなんてここら辺では普通に見かけるモンスターだし、万が一出会ったことが無くても本とかで誰でも知ってるレベルの一般常識だぞ?)
その後、カンナギは少し黙って考え事をしたと思ったら
「実は…記憶が無いんです。自分の名前だけが唯一覚えている事で他は何も…」
「え‼︎記憶が無いって…ここがどこの国とかすらも分からないの⁉︎」
驚き、聞いた事に対して弱々しくうなづくカンナギ。
それに対してラストは
「うーん、それならどうするか…でも帰る場所が分からないなら、一旦ニケイ村に戻ってからじっくり考えた方が良いよな…」
腕を組んで唸りながら考える。
「あの、自分で言うのも変ですが信じてくれるんですか?」
見るとカンナギが困惑しながら自分を見つめてる。
「信じるも何も、今のところ騙すメリットが思いつかないしね。それに…」
「それに?」
カンナギが首を傾げる。
「助けたのなら最後まで見届けないと後が気になって眠れない‼︎」
自慢げに言い放つ。
「だから気にしないで頼りな。とりあえずは近くに村があるからそこまで行こうと思うんだけど良いかな?」
そう尋ねると初めは呆気に取られていたカンナギだったが
「はい、寧ろ私の方からお願いします」
微笑みながら深々とおじきした。
こうして二人は一旦、ニケイ村の方へ向かった。
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