悪役王子とラスボス少女(ただしバッドエンドではモブ死します)

高八木レイナ

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12 魔物狩り

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 騎士団は一日かけて北の森までやってきていた。
 ハーベルの天幕の中で、リーチェ達は明日の討伐の話し合いをしていた。ハーベルが皆に向かって問う。

「明日、森のどこにそれぞれの部隊を配置するかだが……何か良い案がある者はいるか?」

「従来通りで良いのでは?」

 そう言ったのはダン副長だ。しかし、他の団員が首を振る。

「しかし、森にバラバラに部隊を配置したら、リーチェ嬢の付与魔法が活かしきれません。効果が持続するのは一時間なのですから。戦闘が始まれば、すぐに効果が切れてしまいます。近くの部隊はまた付与魔法をかけてもらうこともできるでしょうが、遠い部隊はリーチェ嬢の掩護なしに戦うことになる」

「かといって一部隊のみで進めば魔物も気配を察して、討伐も難しくなるでしょう……ならば魔法効果は一時間と割り切り、ハーベル王子の率いる主隊にリーチェ嬢を同行してもらって、主隊への付与魔法は継続して行なってもらう、というのが最善ではないでしょうか」
 
 ダン副長の提案に、団員達は腕を組んで眉根をよせた。
 皆が囲んでいる机の上には森の地図があった。中央の川を挟んで、右側を騎士団が、反対側は魔法士団が討伐を行うエリアだ。

「リーチェは部隊の配置や戦略で、何か意見があるか?」

 ハーベルにそう問われて、リーチェは考え込んだ。
 彼を守ることが最優先だが、騎士団としての成果も出さねばならない。それにマルクの率いる魔法士団に負けるのは癪だ。

「そうですね……討伐が始める前に騎士団の皆さんに防護魔法や武器の硬化魔法を付与かけますが、効果が一時間ほどで切れてしまうので、戦闘中に再度、皆さんに付与魔法をかけたいと思います」

 リーチェがそう言うと、ダンが唸る。

「しかし、部隊を森の中に散り散りに配置している以上、全員に付与魔法を再度かけることは難しいだろう。ロジェスチーヌ令嬢をどこかで待機させるにしても、また付与魔法をかけてもらうために部隊を動かすのは時間のロスだし、危険もともなう」

 別の団員がうなずいた。

「やるとしたら、少人数のチームを組んでリーチェ嬢を守りつつ森を移動し、狼煙が上がったところに付与魔法をかけに行くとか……でしょうか?」

「いえ、そんな必要はありませんわ」

 リーチェの言葉に、ハーベルが「どういうことだ?」と眉を動かす。

「付与魔法をかけるために、わざわざ出向く必要はありません。私は崖などの高台に待機し、狼煙が上がったところに向かって広範囲の付与魔法をかければ効果はあります」

 リーチェの発言に辺りはシンとなる。ダンはあんぐりと口を開けているし、ハーベルも目を見開いていた。
 あまり良くないやり方だっただろうか、とリーチェが不安になってきた頃に団員達がざわめきだした。

「ロジェスチーヌ令嬢は離れていても付与魔法が使えるのですか!?」
「そんなことができる者がいるなんて聞いたことがないぞ!」

「えっと、でも至近距離で一人にかけるより効力は落ちてしまいますが……」

 慌ててそう弁明するリーチェに、ハーベルが尋ねる。

「その場合の効果はどのくらいなんだ?」

「……二割ほどに落ちてしまいます」
 
 リーチェの言葉に、周囲の団員達が唖然とした顔をしている。
 もともとが近距離で三割ほどの魔法付与だから、遠距離だとそれより効果が落ちてしまう。
 何かまずいことを言ったかな、とリーチェが思い始めていると、ハーベルが机を叩いた。

「素晴らしい! それで行こう」

「問題はロジェスチーヌ令嬢の魔力がどれくらい持つかだな……広範囲の付与魔法なんて大魔法をかけ続けたら魔力が尽きてしまうだろうし」

 ダンの台詞に、リーチェは目を瞬かせた。

「あ、それについては、よほどでなければ大丈夫だ思います。たとえば数日付与魔法を誰かに与え続けるとかでない限りは心配はいらないかと」

 リーチェはラスボスなのだ。
 これまでのリーチェの経験上、一日くらいなら休みなく付与魔法をかけ続けても大丈夫だろう。
 リーチェは伝説の大魔法士と呼ばれた祖父に幼い頃から魔法の訓練を受けていたし、祖父はリーチェに己と同じくらいの魔力量がある、と話していた。祖父は無尽蔵の魔力持ちと周囲から恐れられていたのだ。

 しかしリーチェの発言に団員達は「嘘だろ……」と天を仰ぐ。

「俺って、もしかして伝説級の大魔法士を前にしているのか?」
「付与魔法って、一般的な魔法士でも一日に数名が限界と聞いたのに……」
「練習中もいったい何人に付与魔法をかけるのかと驚いていたが……ロジェスチーヌ令嬢は本当にすごいな」

 惜しみない称賛を受けて、リーチェは顔が熱くなってくる。
(……そうか、私ができることって褒められることだったのね)

「では、さっそくリーチェの案で進めよう」

 ハーベルの言葉に、団員達が大きくうなずいた。

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