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第2章
HRの記憶
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「あぁ・・・、遂に今日かよ」
私は深々と溜息をついた。この後すぐのHRで、クラスごとの団長、副団長、応援団員を決めるそうだ。黒板にそう書いてある。もう・・・、消したろか?!
頭が段々と重くなり、ごすっと、落とす勢いて机に乗せる。ちらりと菜摘を見てみれば、爛々と目を輝かせて、黒板を見ていた。その姿を見て、ぞわっと寒気と虫唾が背中を通り過ぎる。
「顔色悪いよ?榎本さん?」
視線を前に戻すと、鄒の顔が至近距離にあった。ビクッと肩を震わせれば、近いよ、と一言。
「ご、ごめんね。心配で」
しゅんと肩を窄ませる鄒はとても愛らしい。頭撫でまわしたろかこんにゃろう、って感じだ。
「いいのいいの、心配してくれるなんて嬉しいわ」
自分でも分かる程の、心配の晴れない弱々しい笑顔で、鄒に「心配すんなよ」と言った。
「あ・・・。や、めっちゃ具合悪そうなんだけど。保健室連れてこうか?!」
この言葉に甘えようと決めた私は、鄒の問いかけにこくりと頷いた。もう、決まってしまった運命ならば、現実逃避だ。せめて、その場から消えてダメージを減らそう。と、考えたのだ。
鄒は、私に肩を貸すと、私を引き摺るように連れていく。鄒とはあまり身長差が無く、体重はもしかしたら鄒の方が軽かったりして・・・、いやいやそれはない。
大変そうだったけど、えっちらおっちら保健室に辿りついて、私をベットに寝かせた。
「鄒・・・、ありがとう・・・」
切実にお礼を述べる。もう、これは本当に感謝。
「ううん、いいよ別に。帰りも迎えに来るね」
ニコリと天使のような笑顔を浮かべた鄒が、本物の天使に見えた。そして、手を振って去っていく。
1人になった保健室で私は考えた。なんで、そんなに菜摘が応援団に入ることを嫌がるんだろう。別に、菜摘が失敗したって、他人の振りすれば自分まで恥ずかしくならないじゃないか。
「それが出来ないから、こうなってるんだけどね・・・」
しみじみ呟く。そのまま、すうっとまるで意識を失うように眠ってしまったようで、起きても、忘れていたのか、いくら待っても鄒が来ることは無かった。
寝すぎたせいか、ずきんずきんと頭が脈打つように痛む。頭を手で抑えながら、ベットから立ち上がり、廊下の壁に寄り掛かりながら進んで行った。
「教室にはスクバあるし・・・、戻らないわけにはいかないんだよなぁ」
本当に辛い。視界がぐらぐらと揺れて、また倒れてしまいそうだった。
「あっ!榎本さん!」
不意に後ろから声が掛かる。そこには、なにか運動を中断してきたと思われる汗だくの鄒がいた。
はぁ・・・、鄒が来てくれた・・・。
安心したのか、足から力が抜ける。そしてその場に座り込んでしまった。
微かな視界の中で、懸命にこちらに向かって走る鄒が見えた。
そんな中、私の意識は再び闇へ引きずり込まれたのだった。
「んっ、んっ、んっ・・・ん?」
心地の良い揺れに揺られていたかと思えば、目が覚めた。見えるのは、短い茶髪の襟元。大きな背中。私の太股をがっちりと掴む力強い腕。見慣れた街の景色。
イマイチ状況が理解出来ないまま、相手の肩を肩をトントンと叩いた。
「・・・なぁんで!?」
こちらを振り返った相手の顔を見て、思わず悲鳴に近い叫び声を上げた。私の苦手な怖い顔、ひつじが、私をおぶって町中を歩いていたのだった。
ヤバイ理解出来ない。なんで!?
「ひ、坤くん今日学校いたの?」
まずそこね。ひつじはいつも学校に来ていない。勿論、今日も。
「応援団決めの時だけ来てたんだよ。文句あるか?」
え、なんで応援団決めの時だけ?
頭の中は?でいっぱい。まず、知りたいことを頭の中でまとめる事にした。
1 なんで応援団決めの時だけ出席していたのか?
2 なんで鄒じゃなくてひつじがわたしをおぶっているのか?
3 菜摘は何処?
4 これ最高に恥ずかしい!
これらを一気にひつじに伝えると、めんどくせえな、と嫌な顔をしつつも、歩きながら答えてくれた。
「俺は応援団長にならなきゃいけなかったから。鄒は応援団員で居残り練習中。菜摘もだ、副団長だからな。恥ずかしいって、お前下ろしても歩けんのかよ?」
「いや、歩けない」
キッパリと答える。足が震えているんだもん。菜摘が副団長になったって聞いたから!
っていうか、ひつじが応援団長って超意外だなぁ。
「坤くんは残らなくてよかったの?居残り練習」
「残るはずだった。でも、鄒に頼まれてこうして家まで送ってやってんだろうが」
ひつじが、ギロりとこちらを振り向いて睨む。いやぁ、怖い怖い。
「まぁありが・・・」
「煩いお前もう寝とけよ。耳障り」
ぐさっと胸に矢が刺さる感覚を覚えるも、何故か心地よく感じてしまうひつじの背中で、ひつじに酔ってしまいそうな揺れに揺られ、本日3度目の眠りについた。
ひつじ、いいやつなのかな?
私は深々と溜息をついた。この後すぐのHRで、クラスごとの団長、副団長、応援団員を決めるそうだ。黒板にそう書いてある。もう・・・、消したろか?!
頭が段々と重くなり、ごすっと、落とす勢いて机に乗せる。ちらりと菜摘を見てみれば、爛々と目を輝かせて、黒板を見ていた。その姿を見て、ぞわっと寒気と虫唾が背中を通り過ぎる。
「顔色悪いよ?榎本さん?」
視線を前に戻すと、鄒の顔が至近距離にあった。ビクッと肩を震わせれば、近いよ、と一言。
「ご、ごめんね。心配で」
しゅんと肩を窄ませる鄒はとても愛らしい。頭撫でまわしたろかこんにゃろう、って感じだ。
「いいのいいの、心配してくれるなんて嬉しいわ」
自分でも分かる程の、心配の晴れない弱々しい笑顔で、鄒に「心配すんなよ」と言った。
「あ・・・。や、めっちゃ具合悪そうなんだけど。保健室連れてこうか?!」
この言葉に甘えようと決めた私は、鄒の問いかけにこくりと頷いた。もう、決まってしまった運命ならば、現実逃避だ。せめて、その場から消えてダメージを減らそう。と、考えたのだ。
鄒は、私に肩を貸すと、私を引き摺るように連れていく。鄒とはあまり身長差が無く、体重はもしかしたら鄒の方が軽かったりして・・・、いやいやそれはない。
大変そうだったけど、えっちらおっちら保健室に辿りついて、私をベットに寝かせた。
「鄒・・・、ありがとう・・・」
切実にお礼を述べる。もう、これは本当に感謝。
「ううん、いいよ別に。帰りも迎えに来るね」
ニコリと天使のような笑顔を浮かべた鄒が、本物の天使に見えた。そして、手を振って去っていく。
1人になった保健室で私は考えた。なんで、そんなに菜摘が応援団に入ることを嫌がるんだろう。別に、菜摘が失敗したって、他人の振りすれば自分まで恥ずかしくならないじゃないか。
「それが出来ないから、こうなってるんだけどね・・・」
しみじみ呟く。そのまま、すうっとまるで意識を失うように眠ってしまったようで、起きても、忘れていたのか、いくら待っても鄒が来ることは無かった。
寝すぎたせいか、ずきんずきんと頭が脈打つように痛む。頭を手で抑えながら、ベットから立ち上がり、廊下の壁に寄り掛かりながら進んで行った。
「教室にはスクバあるし・・・、戻らないわけにはいかないんだよなぁ」
本当に辛い。視界がぐらぐらと揺れて、また倒れてしまいそうだった。
「あっ!榎本さん!」
不意に後ろから声が掛かる。そこには、なにか運動を中断してきたと思われる汗だくの鄒がいた。
はぁ・・・、鄒が来てくれた・・・。
安心したのか、足から力が抜ける。そしてその場に座り込んでしまった。
微かな視界の中で、懸命にこちらに向かって走る鄒が見えた。
そんな中、私の意識は再び闇へ引きずり込まれたのだった。
「んっ、んっ、んっ・・・ん?」
心地の良い揺れに揺られていたかと思えば、目が覚めた。見えるのは、短い茶髪の襟元。大きな背中。私の太股をがっちりと掴む力強い腕。見慣れた街の景色。
イマイチ状況が理解出来ないまま、相手の肩を肩をトントンと叩いた。
「・・・なぁんで!?」
こちらを振り返った相手の顔を見て、思わず悲鳴に近い叫び声を上げた。私の苦手な怖い顔、ひつじが、私をおぶって町中を歩いていたのだった。
ヤバイ理解出来ない。なんで!?
「ひ、坤くん今日学校いたの?」
まずそこね。ひつじはいつも学校に来ていない。勿論、今日も。
「応援団決めの時だけ来てたんだよ。文句あるか?」
え、なんで応援団決めの時だけ?
頭の中は?でいっぱい。まず、知りたいことを頭の中でまとめる事にした。
1 なんで応援団決めの時だけ出席していたのか?
2 なんで鄒じゃなくてひつじがわたしをおぶっているのか?
3 菜摘は何処?
4 これ最高に恥ずかしい!
これらを一気にひつじに伝えると、めんどくせえな、と嫌な顔をしつつも、歩きながら答えてくれた。
「俺は応援団長にならなきゃいけなかったから。鄒は応援団員で居残り練習中。菜摘もだ、副団長だからな。恥ずかしいって、お前下ろしても歩けんのかよ?」
「いや、歩けない」
キッパリと答える。足が震えているんだもん。菜摘が副団長になったって聞いたから!
っていうか、ひつじが応援団長って超意外だなぁ。
「坤くんは残らなくてよかったの?居残り練習」
「残るはずだった。でも、鄒に頼まれてこうして家まで送ってやってんだろうが」
ひつじが、ギロりとこちらを振り向いて睨む。いやぁ、怖い怖い。
「まぁありが・・・」
「煩いお前もう寝とけよ。耳障り」
ぐさっと胸に矢が刺さる感覚を覚えるも、何故か心地よく感じてしまうひつじの背中で、ひつじに酔ってしまいそうな揺れに揺られ、本日3度目の眠りについた。
ひつじ、いいやつなのかな?
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