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「……お前に捨てられるぐらいなら、俺がお前を捨ててやる。だから、さっさとこの屋敷から出て行ってくれ。
 俺はお前の妹と結婚する。これはもう確定事項だ。今さら後悔しても、もう遅いからな」

「……はい?」

 唐突に告げられた婚約破棄。しかし、私にはその理由がわからない。言い方的に私が悪いみたいだけど……。
 ……やっぱり、心当たりがない。私がこの人を捨てる、というのがよくわからないし、何よりも……。

「ここ、私が買った屋敷なんだけど?」

「だからなんだ。
 マーシャはここに住みたいと言っている。こうなったのはお前のせいなんだから、お前が出て行け」

「……わかったわ。仮に私がここを出て行くとして、私があなたを捨てたっていうのはどういうこと?
 私は浮気なんてしていないんだけど」

「はぁ? お前、俺を馬鹿にしているのか。俺と初めて会ったとき、お前は装飾品もまったく身につけていなかったし、化粧だって最低限しかしていなかった。
 それなのに、最近のお前は妙に色気づいている。つまり、他に男ができたってことだろうが」

 ……なるほど。確かにそう言われてみれば、そう見えても仕方のないことをしていたかもしれない。
 最近の私はこれからのことを考えて、お化粧を勉強し始めたし身なりも気をつけ始めた。

 でも、それは決して他に男ができたからというわけではなく、他に好きな男ができたからというわけでもない。
 今は婚約している状態だから気にしていなかったけど、結婚するとなれば、色々なパーティーにも夫婦揃って出席することもあるだろうからと、今から馬鹿にされないように、自分なりの努力をしていただけ。

「ごめんなさい、レイフォード。違うの。私がお化粧を始めたのはあなたのためであって、他の男の――」

「――黙れ! 今さら信じられるか、そんな戯言!
 いいからさっさと出て行け……この、ビッチが!」

 その瞬間、私の中で何かが弾けた。
 確かに私にも悪い部分はある。だけど、何も確かめずに浮気していると決めつけ、ビッチと私を侮辱した。
 その発言は女として看過できるものではない。

「わかりました。この屋敷から出て行きます。
 ですが、この屋敷の所有権は私にあることをお忘れなきよう。……今までありがとうございました」

 私は今すぐに荷物をまとめて出て行った。
 だけど、これで何事もなく終わるなんて、思わないでくださいね?



 ――そして、一ヶ月が経過した頃。

 私が買った屋敷は無事に取り壊された。いやぁ、壊すの簡単でよかったです。私は本当にまったく疑っていなかったのですが、どうやら浮気をしていたのはレイフォードの方で、すでに妹とは肉体関係があったみたい。
 
 それで、二人はよく歓楽街にあるそういういかがわしいことをするホテルに泊まっていたようで、それは妹が屋敷に住むようになってからも変わらず……。
 で、大体そういう日は朝帰りなので、帰ってくる前に業者に依頼して取り壊してもらったのだ。

 まったく、妹と結婚したいならこんな回りくどい言い方せずに婚約破棄してくれてよかったのに。
 そんなに私を悪者にしたかったのかしら。
 でも、よかった。無駄な努力をせずに済んで。
 私は結婚自体に願望はあるけど、貴族とはしたくないんだよね。面倒だし。

 普通の平民なら、外見でなく素の私を見てくれるだろうし、そっちの方が嬉しい。

 あ、そうそう。屋敷を取り壊したその日のうちに、妹と元・婚約者が何やら文句を言ってきたけど、あの屋敷の所有権は私にあるんだから、何をしても問題ない。
 そのことを伝えたのに、あーだこーだ騒いで、結局ご近所の方に通報されて兵士に連行されていった。

 その様子を見て、私は笑うのに必死でした。

 本当、ざまぁないですね。でも、私は願っていますのよ? 二人が幸せな結婚生活を送れることを……ね。

                  ~完~











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