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この世で一番嫌いな女、それは「美味しんぼ」の栗田(1)
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「あら、珍しい」
居酒屋「円」の古い木枠の扉を開けて入ってきた客を見て、
カウンターに立つ香菜さんは高い声を出した。
「来ちゃったわよ」
企みの笑みを浮かべてカウンター席に座ったのは、ちょっと太めな中年女性だった。
「どうしちゃったのよ?繁美さん?主婦がこんなところで」
カウンターの端っこで飲んでいた常連のタクさんが声をかける。
繁美さんと呼ばれるその珍客は地元のスーパー茜屋のベテランパートであり、
お惣菜コーナーのチーフである。
「あら、やだ、タクさん。あんたいたの?」
「『いたの?』はないでしょう?『いたの』はー」
タクさんがビールグラスを片手に声を荒げる。
「だって職場の人とあんまり飲みたくないから。祐介君と飲めるのは嬉しいけどね」
タクさんの隣で居心地悪そうに微笑む祐介を繁美さんは見る。
「はー。のっけからエイジハラスメントだよ」
タクさんが枝豆をさやから押し出して、苦い顔で噛みしめる。
「夜、初めて来たけど、昼間と随分雰囲気が変わっていい感じじゃない?」
繁美さんがコードを脱いでカウンター席に座った。
「え?昼間って?ここ、ランチやってるんですか?」
夜にしか『円』に来た事のなかった祐介が驚いた表情で香菜さんに聞いた。
「あ、違う違う。ほら、の時にね、お昼にお弁当出してて、たまに繁美さん
が買いに来てくれたの」
「敵情視察にね、チェックしてたの」
繁美さんが不敵な笑みを浮かべる。
「ここのお弁当も茜屋弁当の参考にしたのよ。パクリよ、ちょいパク」
スーパー茜屋は、にオリジナル弁当を数種類開発し、これが大好評で沢山売れに売れた。
そのお弁当を作ったのが繁美さんなのだ。
「あらー光栄です」
香菜さんが嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「私も何度か買ったんです。茜屋プロデュースのお弁当。
この町のいろんなお店の名物が入っていて、お買い得ですよね」
オリジナル弁当は、ウィルスの流行でお客さんが来なくなったこの町の飲食店や、
お惣菜屋に声をかけ、人気のメニューや惣菜を詰め合わせにしたものだった。
外出できないお客さんとお客さんが来なくて困っているお店を救うWin-Win弁当として注目を集め、
地元のテレビ局が取り上げ繁美さんはZOOM取材を受けたりしたのだ。
「どうしたのよ、今夜は。忙しい年末に家の事、ほっといていいわけ?」
タクさんが聞くと繁美さんは吐き捨てるように答える。
「一年に一度くらい主婦が外で飲んで何が悪いってのよ!あ、ビールでお願いね」
「こわー」
繁美さんの剣幕に、タクさんと祐介は思わず身を縮める。かなりの迫力だ。
「そうそう。なんなら一年に一度と言わず、週に一度飲みにきて下さい」
香菜さんが海の町で作られた地ビールの瓶と足付きグラスを繁美さんの前に差し出した。
「ほんと。そんな生活だったら最高。あら、このグラス、可愛いじゃない」
「ふふ。流石にお目が高い。最近、仕入れたイッタラ のものなんです」
「イッタラ ってフィンランドのメーカーですか?」
「あら、祐介君、流石女子力が高い。ここぞってお客さんの為に何客が仕入れたんだけ
ど、冷製スープとかジュレとか食器にも使えるかなと思って」
「イッタラ だかバッテラだか知らないけど、どういう事よ?俺達には普通のグラスで
さ。客を差別していいのかね」
「うっさい。うちでグラスや皿をいくつも割っといてそんな台詞を言うな。
出入り禁止にならないだけありがたく思え!」
ピシャリと香菜さんがタクさんに止めを刺す。
居酒屋「円」の古い木枠の扉を開けて入ってきた客を見て、
カウンターに立つ香菜さんは高い声を出した。
「来ちゃったわよ」
企みの笑みを浮かべてカウンター席に座ったのは、ちょっと太めな中年女性だった。
「どうしちゃったのよ?繁美さん?主婦がこんなところで」
カウンターの端っこで飲んでいた常連のタクさんが声をかける。
繁美さんと呼ばれるその珍客は地元のスーパー茜屋のベテランパートであり、
お惣菜コーナーのチーフである。
「あら、やだ、タクさん。あんたいたの?」
「『いたの?』はないでしょう?『いたの』はー」
タクさんがビールグラスを片手に声を荒げる。
「だって職場の人とあんまり飲みたくないから。祐介君と飲めるのは嬉しいけどね」
タクさんの隣で居心地悪そうに微笑む祐介を繁美さんは見る。
「はー。のっけからエイジハラスメントだよ」
タクさんが枝豆をさやから押し出して、苦い顔で噛みしめる。
「夜、初めて来たけど、昼間と随分雰囲気が変わっていい感じじゃない?」
繁美さんがコードを脱いでカウンター席に座った。
「え?昼間って?ここ、ランチやってるんですか?」
夜にしか『円』に来た事のなかった祐介が驚いた表情で香菜さんに聞いた。
「あ、違う違う。ほら、の時にね、お昼にお弁当出してて、たまに繁美さん
が買いに来てくれたの」
「敵情視察にね、チェックしてたの」
繁美さんが不敵な笑みを浮かべる。
「ここのお弁当も茜屋弁当の参考にしたのよ。パクリよ、ちょいパク」
スーパー茜屋は、にオリジナル弁当を数種類開発し、これが大好評で沢山売れに売れた。
そのお弁当を作ったのが繁美さんなのだ。
「あらー光栄です」
香菜さんが嬉しそうな微笑みを浮かべる。
「私も何度か買ったんです。茜屋プロデュースのお弁当。
この町のいろんなお店の名物が入っていて、お買い得ですよね」
オリジナル弁当は、ウィルスの流行でお客さんが来なくなったこの町の飲食店や、
お惣菜屋に声をかけ、人気のメニューや惣菜を詰め合わせにしたものだった。
外出できないお客さんとお客さんが来なくて困っているお店を救うWin-Win弁当として注目を集め、
地元のテレビ局が取り上げ繁美さんはZOOM取材を受けたりしたのだ。
「どうしたのよ、今夜は。忙しい年末に家の事、ほっといていいわけ?」
タクさんが聞くと繁美さんは吐き捨てるように答える。
「一年に一度くらい主婦が外で飲んで何が悪いってのよ!あ、ビールでお願いね」
「こわー」
繁美さんの剣幕に、タクさんと祐介は思わず身を縮める。かなりの迫力だ。
「そうそう。なんなら一年に一度と言わず、週に一度飲みにきて下さい」
香菜さんが海の町で作られた地ビールの瓶と足付きグラスを繁美さんの前に差し出した。
「ほんと。そんな生活だったら最高。あら、このグラス、可愛いじゃない」
「ふふ。流石にお目が高い。最近、仕入れたイッタラ のものなんです」
「イッタラ ってフィンランドのメーカーですか?」
「あら、祐介君、流石女子力が高い。ここぞってお客さんの為に何客が仕入れたんだけ
ど、冷製スープとかジュレとか食器にも使えるかなと思って」
「イッタラ だかバッテラだか知らないけど、どういう事よ?俺達には普通のグラスで
さ。客を差別していいのかね」
「うっさい。うちでグラスや皿をいくつも割っといてそんな台詞を言うな。
出入り禁止にならないだけありがたく思え!」
ピシャリと香菜さんがタクさんに止めを刺す。
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