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マンスプレイニングという名の公害(1)
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東京から車で片道4時間かかる山間の町。
そこには古民家を改装したお洒落で小さな居酒屋『円』がある。
『円』は香菜さんというキリッとした美人女将が一人で切り盛りしている。
この女将、料理は美味いがかなりの気分屋。
メニューはその日に仕入れた食材と気分で決める。だから「いつもの」なんてオーダーは出来ない。
ただこの山間の町は豊かな山の食材と、隣町の海から採れる海の食材に恵まれているので、
何を食べても美味しいし、まずハズレはない。
ただ困った事に香菜さんには「好きな食材にハマると、徹底的にその食材を使ったメニューを作る」
という癖がある。
「ブーム」という奴である。
パクチーだったり、チーズだったり、山芋だったり、ついこの間まではなぜか餅。
まるで親の仇のようにその食材をアレンジしたメニューが次々に出てくるから、苦手な客は辛いかもしれない。
でも、今までにない食材のアレンジメニューに触れる事によって、苦手を克服した客は多い。
『円』の常連であるタクさんと祐介もその一人である。
「なんだ、また山菜?」
目の前に出された小さなキッシュをジッと見てタクさんは言う。
中に入っている具材はぐるぐると渦を巻いた植物。どうやらワラビとコゴミである。
今、この山の町は山菜が採れる季節になった。
タクさんと祐介は山の町で移動スーパーの運転手をしている。
この時期、限界集落を巡っていてよく売れる商品が重曹だ。
山菜のアク抜きとして使われるのだ。
そしてアクを抜いた山菜を使った料理をお客さんから逆に差し入れとして頂いている。
それなのに『円』でも連日、コシアブラ、フキ、ウド、たらの芽、セリ、行者にんにく、
フキノトウと山菜責めのお品書きが続いている。タクさんと祐介は少々、山菜に食傷気味であったのだ。
「『また』って何よ。『また』って。嫌なら食べなくても、あ、なんなら来なくてもいいわよ」
「ひでえなあ。嫌なら来るなって。チンピラ経営かよ」
タクさんはグチグチ言いながら一口食べる。目の前に出されたキッシュをあまり気乗りせず、
じっと見つめていた祐介も一口、口の中へと運ぶ。
その瞬間、二人は目を見開き見つめ合う。
「いけるな、これ」
「ですね!複雑な苦味とエグ味のパンチが効いててビールに合います!」
「フッフッフッフ」
苦手だと言っていた人が「美味しい」と評価を変えると、香菜さんは勝ち誇ったような顔をする。
こうところは本当に勝気で大人気ない人なのである。
そんな癖の強い香菜さんが切り盛りする「円」は、母性や安らぎを求める男性客にとっては
居心地が悪いところなのかもしれない。
その上、下品な言動をする酔客には厳しくレッドカードを叩きつけ、
態度によっては永久に出入り禁止を申し渡すらしい。
タクさんもしょっちゅうイエローカードを出され、二ヶ月に一度はレッドカードを叩きつけられる。
それはしょうがない。タクさんは酔うとかなりうざいのだ。
では永久に出入り禁止になった客は一体何をやったのだろうと祐介は思う。
香菜さんに聞いたら、かつて二人、そんな男性客がいたらしい。
そして今夜、祐介が一緒になった客は、永久に出入り禁止を申し渡された三人目の客の話だ。
そこには古民家を改装したお洒落で小さな居酒屋『円』がある。
『円』は香菜さんというキリッとした美人女将が一人で切り盛りしている。
この女将、料理は美味いがかなりの気分屋。
メニューはその日に仕入れた食材と気分で決める。だから「いつもの」なんてオーダーは出来ない。
ただこの山間の町は豊かな山の食材と、隣町の海から採れる海の食材に恵まれているので、
何を食べても美味しいし、まずハズレはない。
ただ困った事に香菜さんには「好きな食材にハマると、徹底的にその食材を使ったメニューを作る」
という癖がある。
「ブーム」という奴である。
パクチーだったり、チーズだったり、山芋だったり、ついこの間まではなぜか餅。
まるで親の仇のようにその食材をアレンジしたメニューが次々に出てくるから、苦手な客は辛いかもしれない。
でも、今までにない食材のアレンジメニューに触れる事によって、苦手を克服した客は多い。
『円』の常連であるタクさんと祐介もその一人である。
「なんだ、また山菜?」
目の前に出された小さなキッシュをジッと見てタクさんは言う。
中に入っている具材はぐるぐると渦を巻いた植物。どうやらワラビとコゴミである。
今、この山の町は山菜が採れる季節になった。
タクさんと祐介は山の町で移動スーパーの運転手をしている。
この時期、限界集落を巡っていてよく売れる商品が重曹だ。
山菜のアク抜きとして使われるのだ。
そしてアクを抜いた山菜を使った料理をお客さんから逆に差し入れとして頂いている。
それなのに『円』でも連日、コシアブラ、フキ、ウド、たらの芽、セリ、行者にんにく、
フキノトウと山菜責めのお品書きが続いている。タクさんと祐介は少々、山菜に食傷気味であったのだ。
「『また』って何よ。『また』って。嫌なら食べなくても、あ、なんなら来なくてもいいわよ」
「ひでえなあ。嫌なら来るなって。チンピラ経営かよ」
タクさんはグチグチ言いながら一口食べる。目の前に出されたキッシュをあまり気乗りせず、
じっと見つめていた祐介も一口、口の中へと運ぶ。
その瞬間、二人は目を見開き見つめ合う。
「いけるな、これ」
「ですね!複雑な苦味とエグ味のパンチが効いててビールに合います!」
「フッフッフッフ」
苦手だと言っていた人が「美味しい」と評価を変えると、香菜さんは勝ち誇ったような顔をする。
こうところは本当に勝気で大人気ない人なのである。
そんな癖の強い香菜さんが切り盛りする「円」は、母性や安らぎを求める男性客にとっては
居心地が悪いところなのかもしれない。
その上、下品な言動をする酔客には厳しくレッドカードを叩きつけ、
態度によっては永久に出入り禁止を申し渡すらしい。
タクさんもしょっちゅうイエローカードを出され、二ヶ月に一度はレッドカードを叩きつけられる。
それはしょうがない。タクさんは酔うとかなりうざいのだ。
では永久に出入り禁止になった客は一体何をやったのだろうと祐介は思う。
香菜さんに聞いたら、かつて二人、そんな男性客がいたらしい。
そして今夜、祐介が一緒になった客は、永久に出入り禁止を申し渡された三人目の客の話だ。
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