香菜さんの男子禁制酒場

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性被害をポルノとして消費する男たち(5)

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「『どんなセックスするんだろう』って言われたの。遠田課長に」
 遥香さんは唐突に言った。
 店内の空気が凍りついた。
 祐介とタクさんは会話をやめて、遥香さんの次の言葉を待つ。
 人の会話を盗み聞くのは悪趣味だと思いつつ、祐介とタクさんは己の耳に全神経を集中させる。
「なんだそれ。その話、本当かよ?」
 三宅さんは語気を強めた。
「遥香の幻聴なんじゃないの?」
「はあ?ふざけないでよ!幻聴でそんな気持ち悪い事聞こえるわけないじゃない!」
 遥香さんは尖った声を出した。「絶対に視線を向けてはいけない」と思いながらも、
 祐介とタクさんは全身を聴覚にして話の続きを待つ。
「どういう会話の流れでそんな事言うんだよ」
「去年の飲み会の時よ。『彼氏いないの?』から『どんな男が好きなの?』って聞いてきて、
 透君との事を知られたくないし面倒だから『ティモシー・シャラメ』って答えたの。
 そしたら『何そのおまじないみたいな名前の人』って画像検索し出して
『へーこんな男に抱かれたいんだー』とか言い出して、
 それで『君はどんなセックスするんだろう』って言われたのよ」
 淀みなく説明する遥香さんの言葉を三宅さんは黙って聞いている。
 いや、どうやら言葉が出ないようだった。
「『何言ってんですか!』って笑って流したら、
それ以来、ちょくちょく電話が着て出ないわけにもいかないから出ると
『休日に隣の町でご飯食べに行こうよ』って」
「そんな、まさか。だって遠田さん、家族想いの良いパパじゃないか。
 Facebookだってよく家族の写真をアップしてるし」
「何それ。気持ち悪いからフォロー外してて知らない」
「この間だって、奥さんの微笑ましい変顔写真をアップしてるし」
「何それ!馬鹿じゃないの。セクハラを知られないように保険でそう言う事をアップして
 るのよ。ほんと最低」
 三宅さんはしばしの沈黙の後、絞り出すように言う。
「ていうかさあ、遥香、何でそれ今まで俺に黙ってたんだよ」
「だって…透君を心配させたくなかったから」
「だいたい、そんな事言われて笑って流すって、本当は遠田課長の誘い、満更でもなかったんじゃないか?」
「はあ?」
「もしかして、一回くらい一緒に遊びに行ったんじゃないのか?」
「ふざけないでよ!」
 遥香さんは目を見開いて叫ぶ。見ないようにしていた祐介とタクさんも思わず視線を向けたその瞬間だった。
「ちょっと、出て行ってくれる?」
 香菜さんが落ち着いた低い声で言った。
 カウンターに座る四人は驚いて顔を上げて香菜さんを見た。
 香菜さんがその言葉を向けた相手は祐介とタクさんだった。
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