香菜さんの男子禁制酒場

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婚活モンスター「ミドサゴン」(8)

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え?と香菜さんが鋭い視線を女性に向ける。またしても失礼な事を言っている事に無自覚なのか、結婚詐欺にあって正気でいられないのか、彼女は 何事もなかったかのように話し続ける。
「なんか寂しそうで痛い女って思われそうで。幸せそうに見えないじゃないですか。さっきみたいに頼んでもないのに勝手に見合い話を持ちかけられるし」
 うわ、俺、迷惑がられている!俺から誘った訳でもないのに……祐介は 恥ずかしくて泣きそうになる。しかし、本当に泣きそうな表情を浮かべているのはその女性の方だった。
「どうしてなのかな…。私は仕事も美容も頑張ってきて、それなりに勝ってきたしモテてきたのに、いざ婚活では負け続けて、自分が一番なりたくない女に今、なっているんですよね、頑張ってきたのになあ。」
 どうやら自分と結婚する事はこの女性にとって負けらしい。確かに弁護士でもハイスペでもないが、悲劇ぶった上から目線に祐介は『だから結婚詐欺に遭うのだ』と心の中で毒付いてしまう。
「ごめんなさいねえ、女性客が幸せに見えない『こういうお店』で」
 香菜さんが慇懃に謝罪し、女性は自らの暴言にようやく気付き「あ…」と声を漏らした。そして気まずそうに「すいません、そういう意味じゃ…」と頭を下げる。
「そういう意味でしょ?『ミドサゴン』のあなたが言ってるのは」
「ミド、サゴン?」
 聞きなれない単語に女性は真顔で返す。
「婚活モンスター『ミドサゴン』です」
「なんですか?それ。モンスターってどういう事ですか?」
「大体、三十三歳から三十六歳のミドサーは婚活を拗らせるうちにモンスター化するって事。まだ自分はおばさんであるアラフォーではない。でももう二十代ではないのに若さを捨てきれず『女の子』を引きずってしまう。結婚相手を高望みしてまだギリギリ自分は『選べる側』だと思っている。一方、キャリアはまだまだ中途半端で中々評価されず収入もイマイチ。だから仕事に生きるにはあまりにも将来が不安で、結婚相手の年収はもちろん相応のものを求める。そして、まだまだ女の子のつもりでも出産が段々と難しくなってくるアラフォーへのリミットは容赦なく迫ってくる。どんどん焦ってしまう。しかし男性側は相手は若ければ若い方がいいと思っているので、ミドサー後半から女性はどんどん人気がなくなる。そんな男性を『一体何様なのか、お前の年収は年齢は容姿は人格は若い女と釣り合いが取れるのか』と 自らを棚の上に上げて腹がたってしまう。そして、自分はこれほど頑張っているのに婚活がうまくいかない原因は全て周りが悪いのだと火を吹くように誰彼と構わず当たり屋の如き文句を垂れ流す。恐ろしきモンスター、それがミドサゴンよ!」 
「うう!」
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