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9話 とどけ!救難信号!
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「よいしょぉー」
「ギュオオオっ!?」
バゴンと音がして、リザードマンが宙を舞う。そのまま、木へと激突したリザードマンは動かなくなった。
『これで十匹。随分狩ったな』
「誰の為だと思ってんの?」
冒険者を始めて数日。私は来る日も来る日も仕事をこなしていた。全てはこの猫のせい。
『生きていたら腹は減るんだ。しょうがないだろ』
「じゃあ、自分で稼いできてよ」
この猫、食費がかかりすぎる。前からよく食べるのは知っていたけど、まさかここまで食費がかかるとは。この小さな身体に、何故あれだけの量が必要なのか。それに無駄にグルメだし。
『だから、こうして手伝ってるだろ。腹いっぱい食べる為に!』
「腹八分目って知ってる?」
倒したリザードマン達はカーバンクルがサイコキネシスで運搬している。十匹目も今までの倒したものとひとまとめに。リザードマンの塊が出来ていた。
冒険者はクエストを受け、対象を討伐したら、その証として指定の部位を持ち帰ることで、報酬金が得られるようになっている。大抵、耳とか鼻とかを剥ぎ取り、持ち帰ってクエスト達成の報奨金を得る。
それとは別に、魔物の素材は買取もしてくれる。だから、指定部位以外も持ち帰れば、その分貰えるお金が増える。その為、剥ぎ取りを行わず、本体そのものを持って帰ることにしている。カーバンクルはサイコキネシスでそれを運ぶ運搬係。手伝ってくれてはいるけど、倒すのは私なんだから、なんか複雑。
「とりあえず、だいたい狩り尽くしたね。一回ギルドに戻ろっか」
リュックを背負い直し、杖も持ち直す。
この杖はシルフに作って貰った。まあ、杖と言うより木材に近いけど。木をそれっぽい形に切るだけした物。
武器とは言いにくいが無いよりマシ。それに魔力を流さなければ、あの棍棒みたいにはならないということに気づいた。魔力を流さず殴るだけなら、そんなにすぐ壊れたりしない。まだ二本しか壊れてないし。
そんな感じで、そろそろ戻ろうと準備していた時、空が急に暗くなった。さっきまでは陽の光がさんさんと差し込めんでいたのに、今は暗い影に。そして、上を見ると、その影の主が降りてきた。
「グルオオオオ!!」
「あっ、ワイバーンだ」
降りてきたのはワイバーンだった。
「えーと、図鑑図鑑」
私はリュックからギルドより貰った図鑑を取り出す。その図鑑には魔物や植物などの見た目や特徴、ランクが書かれていた。
「えー、あった。ワイバーン。翼を持ち、高温の炎を吐く。尾には毒があり、非常に危険。Aランク」
ワイバーンの図鑑説明を読む。私は魔物のことあんまり詳しくないから、この図鑑は助かる。また一つ、賢くなってしまった。
「Aランクか。駄目じゃん」
私の冒険者ランクはCランク。対する、ワイバーンはAランク。冒険者は自分のランクより高い魔物のクエストは受けられない。もし仮に高いランクの魔物に遭遇した時は、逃走し、救難信号を出すように教えられた。
「えーと、救難信号ってどれだっけ。あっ、あった。これを、……どうするんだっけ」
リュックからギルド支給の救難信号装置を取り出す。筒状の物に紐が着いたこの装置は、使用すると花火の様に打ち上がり、救難信号を周り知らせることが出来る。
でも、これどうやって使うんだっけ。この紐引っ張るんだっけ。いや、でも、打ち上げるってことは下から押す必要があるんじゃ? でも、そんな押せるような構造になってないしなあ。
『……おい、アリシア。早くどうするか決めてよ』
「んー、ちょっと待って。説明書どっかにあったはずだったから」
ワイバーンは宙に浮いているリザードマンの塊へと噛み付いていた。元々、それ狙いでやって来たのだろう。
でも、残念ながら塊はカーバンクルのサイコキネシスに守れてるので、いくら噛めどもその歯はリザードマンへと届かない。カーバンクルもうちょっと待って。私ランク足りないから、救難信号打たないといけないから。説明書もリュックに入れたはずなんだけどなぁ。
無いなぁ、無いなぁとリュックの中を探す。一回読んだから、いいやって捨てたのかな。流し読みしかしてないのに。
「グルルル、グオオオオッ!!!」
わ、うるさ。ワイバーンが吠えだした。きっと、目の前にご飯があるのに、食べられないことへ苛ついてきたんだろう。
うるさいなと思い、チラッとワイバーンの方を見た。その時、ばっちり目が合ってしまった。
「グルルオオオッ!!」
え、なんで私に向かって怒ってるの。私、何もしてないんだけど。リュックの中身ぶちまけてるだけなんだけれど。
八つ当たりの矛先は私へと。ワイバーンが口を開け、大きく息を吸う。その口内は、燃える炎が。これは炎のブレス攻撃か。あっ、丁度いいや。
杖を拾い、ワイバーンの下へ。その時、丁度ワイバーンはブレスを吐く直前だった。あれ使い方分からないから、こっち使わせてもらおう。
「救難信号でーす!」
ワイバーンの下顎を杖で叩きあげる。叩き上げられたワイバーンは、その衝撃から上を向き、そのままブレスを空へ向けて吐き出した。空へと伸びる一筋の炎の線。これで誰か分かってくれるはず。
「よし、じゃあ、行くよ。カーバンクル」
救難信号も出せた。後はさっさと逃走だ。早く広げた中身をリュックに片付けないと。
『……こいつも討伐完了だぞ。今の一撃で』
「え?」
見ると、ワイバーンは仰向きで倒れて動かなかった。そんなに力は込めてないんだけど、頭の打ちどころが悪かったのだろうか。
『ま、臨時ボーナスだな。これも持って帰って、ステーキを食べようぜ!』
ルンルンとワイバーンも持ち上げ、歩き出すカーバンクル。臨時ボーナスもすぐに無くなるんだろうなと思いながら、私はその後ろ姿を追っていった。
「ギュオオオっ!?」
バゴンと音がして、リザードマンが宙を舞う。そのまま、木へと激突したリザードマンは動かなくなった。
『これで十匹。随分狩ったな』
「誰の為だと思ってんの?」
冒険者を始めて数日。私は来る日も来る日も仕事をこなしていた。全てはこの猫のせい。
『生きていたら腹は減るんだ。しょうがないだろ』
「じゃあ、自分で稼いできてよ」
この猫、食費がかかりすぎる。前からよく食べるのは知っていたけど、まさかここまで食費がかかるとは。この小さな身体に、何故あれだけの量が必要なのか。それに無駄にグルメだし。
『だから、こうして手伝ってるだろ。腹いっぱい食べる為に!』
「腹八分目って知ってる?」
倒したリザードマン達はカーバンクルがサイコキネシスで運搬している。十匹目も今までの倒したものとひとまとめに。リザードマンの塊が出来ていた。
冒険者はクエストを受け、対象を討伐したら、その証として指定の部位を持ち帰ることで、報酬金が得られるようになっている。大抵、耳とか鼻とかを剥ぎ取り、持ち帰ってクエスト達成の報奨金を得る。
それとは別に、魔物の素材は買取もしてくれる。だから、指定部位以外も持ち帰れば、その分貰えるお金が増える。その為、剥ぎ取りを行わず、本体そのものを持って帰ることにしている。カーバンクルはサイコキネシスでそれを運ぶ運搬係。手伝ってくれてはいるけど、倒すのは私なんだから、なんか複雑。
「とりあえず、だいたい狩り尽くしたね。一回ギルドに戻ろっか」
リュックを背負い直し、杖も持ち直す。
この杖はシルフに作って貰った。まあ、杖と言うより木材に近いけど。木をそれっぽい形に切るだけした物。
武器とは言いにくいが無いよりマシ。それに魔力を流さなければ、あの棍棒みたいにはならないということに気づいた。魔力を流さず殴るだけなら、そんなにすぐ壊れたりしない。まだ二本しか壊れてないし。
そんな感じで、そろそろ戻ろうと準備していた時、空が急に暗くなった。さっきまでは陽の光がさんさんと差し込めんでいたのに、今は暗い影に。そして、上を見ると、その影の主が降りてきた。
「グルオオオオ!!」
「あっ、ワイバーンだ」
降りてきたのはワイバーンだった。
「えーと、図鑑図鑑」
私はリュックからギルドより貰った図鑑を取り出す。その図鑑には魔物や植物などの見た目や特徴、ランクが書かれていた。
「えー、あった。ワイバーン。翼を持ち、高温の炎を吐く。尾には毒があり、非常に危険。Aランク」
ワイバーンの図鑑説明を読む。私は魔物のことあんまり詳しくないから、この図鑑は助かる。また一つ、賢くなってしまった。
「Aランクか。駄目じゃん」
私の冒険者ランクはCランク。対する、ワイバーンはAランク。冒険者は自分のランクより高い魔物のクエストは受けられない。もし仮に高いランクの魔物に遭遇した時は、逃走し、救難信号を出すように教えられた。
「えーと、救難信号ってどれだっけ。あっ、あった。これを、……どうするんだっけ」
リュックからギルド支給の救難信号装置を取り出す。筒状の物に紐が着いたこの装置は、使用すると花火の様に打ち上がり、救難信号を周り知らせることが出来る。
でも、これどうやって使うんだっけ。この紐引っ張るんだっけ。いや、でも、打ち上げるってことは下から押す必要があるんじゃ? でも、そんな押せるような構造になってないしなあ。
『……おい、アリシア。早くどうするか決めてよ』
「んー、ちょっと待って。説明書どっかにあったはずだったから」
ワイバーンは宙に浮いているリザードマンの塊へと噛み付いていた。元々、それ狙いでやって来たのだろう。
でも、残念ながら塊はカーバンクルのサイコキネシスに守れてるので、いくら噛めどもその歯はリザードマンへと届かない。カーバンクルもうちょっと待って。私ランク足りないから、救難信号打たないといけないから。説明書もリュックに入れたはずなんだけどなぁ。
無いなぁ、無いなぁとリュックの中を探す。一回読んだから、いいやって捨てたのかな。流し読みしかしてないのに。
「グルルル、グオオオオッ!!!」
わ、うるさ。ワイバーンが吠えだした。きっと、目の前にご飯があるのに、食べられないことへ苛ついてきたんだろう。
うるさいなと思い、チラッとワイバーンの方を見た。その時、ばっちり目が合ってしまった。
「グルルオオオッ!!」
え、なんで私に向かって怒ってるの。私、何もしてないんだけど。リュックの中身ぶちまけてるだけなんだけれど。
八つ当たりの矛先は私へと。ワイバーンが口を開け、大きく息を吸う。その口内は、燃える炎が。これは炎のブレス攻撃か。あっ、丁度いいや。
杖を拾い、ワイバーンの下へ。その時、丁度ワイバーンはブレスを吐く直前だった。あれ使い方分からないから、こっち使わせてもらおう。
「救難信号でーす!」
ワイバーンの下顎を杖で叩きあげる。叩き上げられたワイバーンは、その衝撃から上を向き、そのままブレスを空へ向けて吐き出した。空へと伸びる一筋の炎の線。これで誰か分かってくれるはず。
「よし、じゃあ、行くよ。カーバンクル」
救難信号も出せた。後はさっさと逃走だ。早く広げた中身をリュックに片付けないと。
『……こいつも討伐完了だぞ。今の一撃で』
「え?」
見ると、ワイバーンは仰向きで倒れて動かなかった。そんなに力は込めてないんだけど、頭の打ちどころが悪かったのだろうか。
『ま、臨時ボーナスだな。これも持って帰って、ステーキを食べようぜ!』
ルンルンとワイバーンも持ち上げ、歩き出すカーバンクル。臨時ボーナスもすぐに無くなるんだろうなと思いながら、私はその後ろ姿を追っていった。
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