婚約破棄? いいですけど、なんで私の杖奪うのですか?

ノミ

文字の大きさ
10 / 21

10話 そんなに褒めても何も出ないよ

しおりを挟む
「ただいまー」
「あっ、おかえりなええ!?」

 ギルドに帰って来たら、受付のお姉さんが盛大に迎えてくれた。いいね、そのリアクション。

「これ、クエストのリザードマン。こっちはおまけのワイバーン」
「ワイバーンがおまけなんですか!?」

 だって、私Aランクのクエスト受けられないからね。おまけになるよ。

「と、とりあえず、クエストの処理と、素材の鑑定、換金対応いたしますね」
「うん、よろしく」

 一時間後。

「お待たせしました。これが今回の報酬となります」

 わあ、すごいいっぱい。金、銀、銅。全部の貨幣がいっぱいある。

『ニャッハ! 今夜はパーティーだな!』
「駄目。そんなことしたらすぐ無くなるでしょ」

 これだけの大金があれば、かなりの間遊んで暮らせる。カーバンクルのパーティーなんかしたら、数日で無くなるから駄目。私、働きたくない。

「それと今回の結果を受けて、アリシアさんをAランクにランクアップしました!」
「え、ランクアップ? 試験は?」

 確か、ランクアップには、実績と試験の合格が必要って言われたはず。私はまだ大した実績もないし、試験も受けてないんだけど。

「大丈夫です! アリシアさんの実力なら何の問題もありません! ほぼ、外傷なくワイバーンを仕留めるなんて相当な実力がないと出来ませんから! 上から承認も貰ったので今からAランクです!」

 上の人の承認まで貰ってきたの? クエストの処理と素材の鑑定、換金と、上の人に話しして承認まで貰うのをこの一時間でやってきたの? え、なんなのこの人。シゴデキ過ぎない?

「こちらギルドカードお返しします。これからもご活躍も期待していますね! アリシアさんなら、すぐにSランクになれますよ! 期待の超新星ですよ!」
「あはは、ありがとう」

 人のヨイショまでしちゃって。なんなのこの人。高性能過ぎない? 

 この日は、この後高性能さんと雑談してから宿へと帰っていった。終始ヨイショしてくれて、非常に気持ちよかった。そんなに言うんだったら、これからも頑張ろっと。





「では、行ってらっしゃい! お気をつけて!」
「うん。行ってきます」

 次の日。高性能さんにお見送りされて、私はギルドを出た。今日は初めてのAランククエストに挑戦だ。挑戦するクエストは、

 大海の魔物、シーサーペントの討伐。

 なんでも最近、大きな商船がいくつもこのシーサーペントにやられているらしい。船は沈められ、商品も船員にも被害が出ている。そいつの討伐。

 昨日もう働きたくないと思ったのに、なんで次の日にはもう働いているんだろう。ヨイショされて、頑張ろうとは思ったけど、こんなに早く仕事するつもりは無かった。なんでこんなに早く仕事しないといけないの? 本当にこの猫は。

 最寄りの場所は、港町エルン。ここからは歩いたら数日かかっちゃうな。ということで、

「エルンまで送ってほしいんだ」
『またそんなことであたしを呼んだのー!?』

 だって、シルフに乗っけて貰うのが早いんだもん。

『もっとさー、なんかさー、いい感じのことで呼びなよー』
「ふわふわしてるね」

 言ってることがふわっふわで、結局、どういうことなら呼んで良いのか分からないな。 
 渋ってるシルフ。フッ。でもね、今回こっちには切り札があるんだよ。

「シルフこれあげる」
『こ、これは……!……フッフッフッ。お主も悪よのぉ?』
「いえいえ、領主様程ではございませんよ?」
『「アッハッハ!」』
『……何馬鹿なことやってるんだ』

 スッとシルフに差し出したのはビー玉。こういう綺麗なガラスがシルフ好きなんだよね。

 賄賂を渡し、シルフの風に乗る。さあ、エルンへ向けて出発。

『なんでカーバンクルまで飛ばさないといけないのー!? 自分で飛べるじゃん!』
『ニャハハ! その賄賂はボクが稼いだお金で買ったんだから、当然だろ?』
「はいはい、喧嘩しないー」

 シルフの風に乗りながら、空の旅路を満喫中。このふわふわ感がたまらないよね。カーバンクルのサイコキネシスは動かされてるって感じだし、面白くないけど、シルフのは浮遊感があっていいな。このうるさい二匹がいなければ、今ごろ爆睡してるのに。

 そんなこんなで二匹の喧嘩を眺めていたら、目的の町へと着いた。港町エルン。漁業や、交易が盛んな海の町。

『潮風が気持ちいいねー!』
「そうだね。潮風なんて初めてだよ」

 なんか少し独特の匂いがするような。それに顔に当たる感じも普通の風と違う。

『そうか? なんかベタつくというか……』
『これだから猫はー。風の違いや良さを分かってないねー』
『うるさい! もう用は済んだんだから帰れ!』
『はあ!? 誰のおかげでここまで来れたと思ってんのー!?』
『自分の力でも来れましたー』
『勝手にタダ乗りしたくせにー!』
「はいはい、そこまで。シルフ、ここまでありがとね。もう一個あげるよ」

 シルフにもう一個ビー玉をあげて、別れの挨拶をする。バイバイ。また帰りよろしくね。

 今日はもう遅いし、クエストは明日行くとするか。魚!魚!とうるさい猫は放っておいて、今日の宿を探しにいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
王城内で開かれたパーティーで王太子は宣言した。その内容に聖女は思わず声が出た、「え、どうしましょう」と。*世界観はふわっとしてます。*何番煎じ、よくある設定のざまぁ話です。*書きたいとこだけ書いた話で、あっさり終わります。*本編とオマケで完結。*カクヨム様でも公開。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

聖女を追放した国が滅びかけ、今さら戻ってこいは遅い

タマ マコト
ファンタジー
聖女リディアは国と民のために全てを捧げてきたのに、王太子ユリウスと伯爵令嬢エリシアの陰謀によって“無能”と断じられ、婚約も地位も奪われる。 さらに追放の夜、護衛に偽装した兵たちに命まで狙われ、雨の森で倒れ込む。 絶望の淵で彼女を救ったのは、隣国ノルディアの騎士団。 暖かな場所に運ばれたリディアは、初めて“聖女ではなく、一人の人間として扱われる優しさ”に触れ、自分がどれほど疲れ、傷ついていたかを思い知る。 そして彼女と祖国の運命は、この瞬間から静かにすれ違い始める。

処理中です...