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20話 人に聞いた方が早い
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「こ、これは……!」
ヴェンが目を見開く。これはなに!? どっち!?
「ど、どう……?」
「……美味い! すごく美味いぞアリシア!」
「ほ、本当に!?」
本当に!? 私の作ったクッキー美味しい!?
「ああ! 外はサクサクしてるが、中はしっとりしていていい食感だ! このチョコチップもいいな! 何枚でも食べられそうだ!」
ヴェンはもう一枚クッキーを口に運ぶ。よ、よかった……。味見はしたけれど、色々と自分が信じられなくて不安だった。
昨日、色々あった後、クッキー作りを再開した。リリィに教えられながら、自分で作って、今日ギルドでヴェンに渡せた。
『アリシア頑張りましたものね! それじゃあ、教えた続きのセリフを……』
「言わないよ?」
リリィはちょっと黙っててね。クッキー作り協力はありがとう。でも、教えられたセリフを言う事は一生ないよ。
『では、僭越ながらわたくしが代弁いたしますわ。コホン。美味しいのはクッキーだけじゃなくて、わたしも……』
「はいお口チャック」
誰もそんなこと頼んでないよ。静かにしてね。
『うむぅ。仕方ないですわね。後は若い二人にお任せしますわ。さあ、行きますわよカーバンクル』
『いや、ボクは帰らないけどな』
『……じゃあ、あとで報告お願いしますわ!』
『任された!』
「何のよ」
馬鹿なこと言ってないでよ。リリィはありがとう。次は、もう少し抑えられるようになってね。
さて、クッキーも渡せたしこれで完了……、ではなく、メインがまだ残っている。
「鍵の件だが、軽く調べてみたが、まだ特に何も見つかっていない」
そう。鍵の件だ。
今私達の手元には二本の鍵が。ヴェンが元々持っていた赤い鍵と、この前手に入れた青い鍵。
「そもそも、この鍵何なんだろうね」
ガラスのように透き通った色をしている二本の鍵。ガラスみたいだけど、ものすごく硬い。踏んでも殴ってもヒビ一つ入らない。不思議な鍵。
赤い鍵は青の鍵を手に入れる時に使ったけど、そもそも何の為にこれはあるんだろう。
「何なのかは分からないが、次の猿も同じ鍵を持っているんだろう?」
青い鍵を手に入れた時に見えた光景。緑の猿と生い茂った森。そして、尻尾にあった緑色の鍵。これが手に入れば三本の鍵があることになる。
「うーん。何なんだろう……?」
結局よく分からないな。調べても出てこないなら、どうしたらいいだろう。
『あの爺さん呼んだらどうだ?』
「爺さん? 亀じい?」
『違う。お前のこと嫌いなじじい』
「……あっちかぁ」
これだけでだれか分かってしまうって悲しいね。まあ、表だって嫌いって言わないだけで、心の中で思ってる精霊はいっぱいいるかもしれないけど。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
私は建物の外に出る。そして、戻ってきた。
「おっ、……アリシア。そちらの方は?」
『儂はヴァフスルーズニル。儂の知識が必要とな?』
戻って来た時、私はもう一人と一緒に戻って来た。髭もさぁのおじいちゃんと。すんごい知識が豊富な巨人。そのままの大きさだと建物壊しちゃうから、外で呼んでから縮んでもらった。
「そう。この鍵のこと教えて欲しいの」
『……フッ。そんなことも知らんのか、小娘。まあ人間のテストですら、いつも満点ではなかったし仕方がないか』
はあーやれやれと首を振るヴァフスルーズニル。満点じゃなくても、ちゃんと上位だったし。
「なんでもいいから教えてよ」
『フン。それが教えてもらう態度か? 儂が知っているのとは随分異なるようじゃが?』
「分かった。じゃあ、歯食いしばってね」
『……これだから嫌なんじゃこいつは』
何が嫌なのさ。これが私の知ってる教えてもらう態度だよ。
『まったく。この暴力娘が。……この鍵は赤の鍵と青いの鍵。精霊王へと繋がる鍵の一つじゃ』
「精霊王へ?」
精霊王ってヴェンが探してるっていう?
『遥か昔、精霊王が封印された際に、最後の力で自身の封印されし場へ繋がる道を作った。じゃが、道は不安定で五つに分かれてしまった。その時に出来たのがこの鍵と言われておる』
へえ。そんな話が。
「なんで精霊王って封印されたの?」
『知らん』
「え?」
え、知らないの? あんだけ偉そうにしてたくせに?
『そもそも、精霊王は儂らが生まれる前にいたとされる存在。今の精霊で精霊王を直接見たことがあるものなどおらん』
そうなんだ。そう言えばカーバンクルもそんな様なこと言ってたな。おとぎ話だって。
『ん? いや、一人いたな。この話自体、彼から聞いたものじゃった』
「誰それ?」
『霊亀殿じゃ』
霊亀。亀じいかぁ。確かに精霊の中で一番年上って言ってたな。でも、
「亀じいってまだ寝てるよね?」
『その通り。次いつ起きるかは分からん』
亀じいは年からか寝てる時間が非常に長い。私は数年前起きた時に一度会ったけど、それ以来ずっと寝てる。前起きた時も百年近くは寝てたって話だし、次いつ起きるかも分からない。無理矢理起こすのも、……面倒だし。
『他に聞きたいことは?』
「んー、あっ、緑の猿って知ってる?」
『緑の猿?』
「そ。この鍵触れた時に見えたんだけどさ、すごく木が生い茂った所に一匹の緑の猿が見えたんだ。次の鍵に関係あると思うんだけど」
『ふむ……。ソポか?』
「ソポ?」
ソポ? それが猿の名前?
『ソンム地方にある熱帯雨林に生息する猿だ。緑の体をしているということ以外情報は無い。お前の言う生い茂った森、緑の猿にある程度合致すると思うぞ』
全く情報のない猿か。鍵に関係あるから情報が無いのかな? 現状唯一の手がかりだし、調べてみる価値はありそうだね。
「ソンム地方ってここから近いの?」
『いや。かなり距離があるな』
「そっか。シルフに頑張ってもらうしかないか」
『……お前まだ精霊をそんなことに使っておるのか。流石はあの異名を持つ女よ』
はいはい、余計な事言わない。拳が火を吹くよ。
「よし。では、目的地はソンム熱帯雨林だな。だが、少し時間をくれないか? 便利屋の依頼が溜まっていてな……」
便利屋のお仕事か。人気者だもんね。大変だね。
「急いでないしいつでもいいよ。お仕事溜まってるんだったら何か手伝うよ?」
私でも出来ることがあるなら手伝うよ。出来るものだけね。簡単なやつね。繊細さとか要らないやつね。
「本当か!? それじゃあ、一つお願いしようかな」
「うん。いいよ。何すればいいの?」
「明日、ギルドで……」
私はヴェンから仕事を引き受けた。
……でも、私なんかがしていいんだろうか。
ヴェンが目を見開く。これはなに!? どっち!?
「ど、どう……?」
「……美味い! すごく美味いぞアリシア!」
「ほ、本当に!?」
本当に!? 私の作ったクッキー美味しい!?
「ああ! 外はサクサクしてるが、中はしっとりしていていい食感だ! このチョコチップもいいな! 何枚でも食べられそうだ!」
ヴェンはもう一枚クッキーを口に運ぶ。よ、よかった……。味見はしたけれど、色々と自分が信じられなくて不安だった。
昨日、色々あった後、クッキー作りを再開した。リリィに教えられながら、自分で作って、今日ギルドでヴェンに渡せた。
『アリシア頑張りましたものね! それじゃあ、教えた続きのセリフを……』
「言わないよ?」
リリィはちょっと黙っててね。クッキー作り協力はありがとう。でも、教えられたセリフを言う事は一生ないよ。
『では、僭越ながらわたくしが代弁いたしますわ。コホン。美味しいのはクッキーだけじゃなくて、わたしも……』
「はいお口チャック」
誰もそんなこと頼んでないよ。静かにしてね。
『うむぅ。仕方ないですわね。後は若い二人にお任せしますわ。さあ、行きますわよカーバンクル』
『いや、ボクは帰らないけどな』
『……じゃあ、あとで報告お願いしますわ!』
『任された!』
「何のよ」
馬鹿なこと言ってないでよ。リリィはありがとう。次は、もう少し抑えられるようになってね。
さて、クッキーも渡せたしこれで完了……、ではなく、メインがまだ残っている。
「鍵の件だが、軽く調べてみたが、まだ特に何も見つかっていない」
そう。鍵の件だ。
今私達の手元には二本の鍵が。ヴェンが元々持っていた赤い鍵と、この前手に入れた青い鍵。
「そもそも、この鍵何なんだろうね」
ガラスのように透き通った色をしている二本の鍵。ガラスみたいだけど、ものすごく硬い。踏んでも殴ってもヒビ一つ入らない。不思議な鍵。
赤い鍵は青の鍵を手に入れる時に使ったけど、そもそも何の為にこれはあるんだろう。
「何なのかは分からないが、次の猿も同じ鍵を持っているんだろう?」
青い鍵を手に入れた時に見えた光景。緑の猿と生い茂った森。そして、尻尾にあった緑色の鍵。これが手に入れば三本の鍵があることになる。
「うーん。何なんだろう……?」
結局よく分からないな。調べても出てこないなら、どうしたらいいだろう。
『あの爺さん呼んだらどうだ?』
「爺さん? 亀じい?」
『違う。お前のこと嫌いなじじい』
「……あっちかぁ」
これだけでだれか分かってしまうって悲しいね。まあ、表だって嫌いって言わないだけで、心の中で思ってる精霊はいっぱいいるかもしれないけど。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
私は建物の外に出る。そして、戻ってきた。
「おっ、……アリシア。そちらの方は?」
『儂はヴァフスルーズニル。儂の知識が必要とな?』
戻って来た時、私はもう一人と一緒に戻って来た。髭もさぁのおじいちゃんと。すんごい知識が豊富な巨人。そのままの大きさだと建物壊しちゃうから、外で呼んでから縮んでもらった。
「そう。この鍵のこと教えて欲しいの」
『……フッ。そんなことも知らんのか、小娘。まあ人間のテストですら、いつも満点ではなかったし仕方がないか』
はあーやれやれと首を振るヴァフスルーズニル。満点じゃなくても、ちゃんと上位だったし。
「なんでもいいから教えてよ」
『フン。それが教えてもらう態度か? 儂が知っているのとは随分異なるようじゃが?』
「分かった。じゃあ、歯食いしばってね」
『……これだから嫌なんじゃこいつは』
何が嫌なのさ。これが私の知ってる教えてもらう態度だよ。
『まったく。この暴力娘が。……この鍵は赤の鍵と青いの鍵。精霊王へと繋がる鍵の一つじゃ』
「精霊王へ?」
精霊王ってヴェンが探してるっていう?
『遥か昔、精霊王が封印された際に、最後の力で自身の封印されし場へ繋がる道を作った。じゃが、道は不安定で五つに分かれてしまった。その時に出来たのがこの鍵と言われておる』
へえ。そんな話が。
「なんで精霊王って封印されたの?」
『知らん』
「え?」
え、知らないの? あんだけ偉そうにしてたくせに?
『そもそも、精霊王は儂らが生まれる前にいたとされる存在。今の精霊で精霊王を直接見たことがあるものなどおらん』
そうなんだ。そう言えばカーバンクルもそんな様なこと言ってたな。おとぎ話だって。
『ん? いや、一人いたな。この話自体、彼から聞いたものじゃった』
「誰それ?」
『霊亀殿じゃ』
霊亀。亀じいかぁ。確かに精霊の中で一番年上って言ってたな。でも、
「亀じいってまだ寝てるよね?」
『その通り。次いつ起きるかは分からん』
亀じいは年からか寝てる時間が非常に長い。私は数年前起きた時に一度会ったけど、それ以来ずっと寝てる。前起きた時も百年近くは寝てたって話だし、次いつ起きるかも分からない。無理矢理起こすのも、……面倒だし。
『他に聞きたいことは?』
「んー、あっ、緑の猿って知ってる?」
『緑の猿?』
「そ。この鍵触れた時に見えたんだけどさ、すごく木が生い茂った所に一匹の緑の猿が見えたんだ。次の鍵に関係あると思うんだけど」
『ふむ……。ソポか?』
「ソポ?」
ソポ? それが猿の名前?
『ソンム地方にある熱帯雨林に生息する猿だ。緑の体をしているということ以外情報は無い。お前の言う生い茂った森、緑の猿にある程度合致すると思うぞ』
全く情報のない猿か。鍵に関係あるから情報が無いのかな? 現状唯一の手がかりだし、調べてみる価値はありそうだね。
「ソンム地方ってここから近いの?」
『いや。かなり距離があるな』
「そっか。シルフに頑張ってもらうしかないか」
『……お前まだ精霊をそんなことに使っておるのか。流石はあの異名を持つ女よ』
はいはい、余計な事言わない。拳が火を吹くよ。
「よし。では、目的地はソンム熱帯雨林だな。だが、少し時間をくれないか? 便利屋の依頼が溜まっていてな……」
便利屋のお仕事か。人気者だもんね。大変だね。
「急いでないしいつでもいいよ。お仕事溜まってるんだったら何か手伝うよ?」
私でも出来ることがあるなら手伝うよ。出来るものだけね。簡単なやつね。繊細さとか要らないやつね。
「本当か!? それじゃあ、一つお願いしようかな」
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私はヴェンから仕事を引き受けた。
……でも、私なんかがしていいんだろうか。
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