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第2章 黄金竜
12.ギル、逃げ出す
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翌朝、朝食の席で姫君の一人が言った。私の歌は聞き飽きたと言った人だ。確か名前はロジーナ姫。
「あなた、夕べ誰かと話してなかった?」
「さ、さあ……」
私はとぼけた。洞窟では声がよく響くようだ。
「きっと、寝言ね。大きな寝言だこと! ほほほ」
あたりから小馬鹿にしたような笑いが上がる。
私は黙って下を向いた。
その夜、私は竜が眠りにつくのを待って支度を始めた。祖末な野良着に着替える。金髪を隠すヴェールが無いので、髪を小さくまとめショールを頭からかぶった。部屋をこっそり抜け出し、上の空き地に向う。私は自分一人逃げ出していいのだろうかと最後まで迷ったが、逃げられる時に逃げた方がいいだろうと思いなおした。次はいつ逃げ出せるかわからないのだ。私はセイラさんにも言わなかった。セイラさんは、私を恩知らずと思うだろうか?
ごめんなさい、セイラさん……。
セイラさんのご恩は忘れないわ。
七つ森まで逃げて、後の事はそれから考えよう。
私は空き地を抜け、林の中へ走った。林の中でヴォルが待っていた。
「さ、僕の背中に乗って!」
私はヴォルの大きな背中によじ登った。首にしがみつく。
「く、苦しい。首をしめないで! 僕のたてがみを掴んで!」
私は頬が熱くなるのがわかった。腕をゆるめて首の周りのたてがみを掴む。
「両足で僕の体をはさんで!」
私は言われた通りにした。ヴォルが走り始める。徐々にスピードを上げる。林の中、急な斜面を物ともせず、ヴォルは走って行く。私は振り落とされないよう必死にしがみついた。やがてセイラさんの言っていた大きな割れ目に来た。下を覗き込む。凄い深さだ。腕に鳥肌が立つ。
「ヴォル、ここを飛び越えるの?」
「もう少し先。このまま、割れ目に沿って行けば、幅が狭くなっている」
ヴォルは、割れ目に沿って走った。たしかに、狭くなっている場所がある。ヴォルは割れ目から離れ助走の為の距離を取った。
「下を見ないで。目を閉じてしっかり掴まって!」
「ちょっと待って、首に手を回してもいい? たてがみを掴んでいるだけでは心許ないの」
「いいでしょう。首を締めないよう注意して下さい」
私はヴォルの背に腹這いになり両手を首に回した。首を締め付けないよう注意する。両足でヴォルの体をもう一度、はさみ直す。
「準備はいい?」
「いいわ」
ヴォルはさらに距離を取ると走り始めた。助走のスピードを上げる。蹴った。空中に浮いた! 怖い!
どん!
着いた。と思ったら、ずるずると後ろに滑る。
「く!」
ガクンとヴォルの体が落ちる。後ろ足が崖にちゃんとかかったのだろうか? 怖い!
「ぐぅ!」
体の下でヴォルの筋肉がいっそう強張る。目を薄く開けて見た。ヴォルが精一杯爪をたてている。
ぐぐ!
ヴォルが一歩踏み出した。二歩、三歩。
やっと割れ目を越えた。私はほっとした。
ヴォルが再び走り始めた。凄く早い。一体、どこをどう走っているのか。私はヴォルの背の上で目を閉じていた。風の音だけがびゅうびゅうと聞こえる。私とヴォルは一晩中、走り続けた。
気が付くと、朝だった。私はどこかの草むらに寝かされている。ヴォルが私を覗き込んでいた。顔が濡れている。ヴォルが舐めていたようだ。
「気が付いた?」
「ええ……」
「そこに小川がある」
私は、小川で顔を洗って水を飲んだ。肩から腕にかけての筋肉が痛い。強張っている。必死になってヴォルに掴まっていたせいだろう。
「ここはどこ?」
「ブルムランドの端。この川は竜の湖から流れてきている。一休みしたら出掛けよう。七つ森まで、後半日の距離だ」
「夜まで待った方がよくない?」
「いや、早い方がいい。七つ森までいけば、僕の仲間もいる。さ、行こう」
ヴォルは私を背中に乗せると再び走り出した。川沿いの林の中をひた走る。朝とはいえ、夏の盛りだ。山とは違う。すぐに気温が上がった。暑い。ヴォルのはっはっと言う息づかいが聞こえる。
急に日が陰った。羽音がする。私は後ろを振り返った。
「竜よ! 竜が追って来た!」
ヴォルは、走る速度を上げた。私ははっとした。頭から被っていたショールが無い。どこかで落としたのだ。
「ヴォル、隠れて! 早く! 私、金髪がむき出しなの。すぐ見つかる」
どこでショールを落としたのかしら。そしたら、見つからなかったのに。いいえ、金髪を隠してもあの竜はすぐに私を見つけただろう。セイラさんが言っていた。一度、捕まえた獲物は決して逃さないって。あの竜に一度掴まったら、逃げられないんだわ。
私は、真っ暗な気持ちになった。ヴォルは走る速度をあげた。
ギャー、ギャッ
竜の羽ばたきをすぐ間近に感じた。
ギャーーーーー!
竜が襲って来た!
ヴォルがさっとよける。私達は林の中に一旦、避難した。木立が邪魔になって竜から私達の姿は見えない筈だ。
ヴォルは走り続けた。
だけど、竜の羽音は消えない。ヴォルは、ジグザグに進んだ。それでも、竜を撒ききれない。私たちは茂みに逃げ込んだ。
「しばらく隠れていましょう、竜が行ってしまうまで……」
私は側にあったツタを折り取ると頭に巻き付けた。少しは金髪が隠れるだろう。
ギャー、ギャー
竜の声が身近に聞こえる。どうやら、この辺を旋回しているようだ。
ゴォーーーーー!
火だ!竜が火を吐いた。焼けた木切れが落ちて来る。
私達は茂みから飛び出した。このままでは焼き殺されてしまう。ヴォルが再び走り始めた。とうとう、木立が途切れた。ここからは平原だ。隠れる場所がない。林の中にいたら、焼き殺される。平原に出たら、見つかってしまう。
「どうしたらいいの?」
「この原を抜ければ、七つ森だ。あそこまでいけば、逃げ切れる! 行くぞ!」
「ヴォル!」
ヴォルが平原に躍り出た。平原をまっしぐらに走って行く。夏の若草が青々と生えている以外、何も無い。
ギャアー!
竜の雄叫びが聞こえる。私は振り返った。
「振り返るな。しっかり掴まってろ!」
すぐ後ろに竜がいる!
「きゃあーーーーーーーー!」
私は竜のかぎ爪にもう一度、掴まれていた。竜は私を掴んだまま、ヴォルを襲う!
「いや! やめてーーー!!!」
ヴォルが平原を右へ左へ逃げて行く。竜がヴォルに向って火を吐いた。
「ヴォル! ヴォルーーー!」
焼けこげた草原。だが、ヴォルは間一髪、逃げおおせていた。しかし、竜はしつこくヴォルを追いかける。ヴォルに噛みつこうと首を伸ばす竜。
「やめて! お願い、私、洞窟に帰るから! ヴォルを殺さないでぇー!」
だが、竜はヴォルを追いかけるのを止めない。竜がもう一度、火を吐いた。黒こげになった草原。ヴォルの姿が見えない。
「いやあーーーーー!」
私は悲鳴を上げていた。竜は平然と私を掴んだまま、飛んで行く。私は泣きながら、下を見た。ヴォルの姿を必死で探した。だが、動く物は何もなかった。
私は精も根も尽き果てていた。
眼下に広がる草原も、草原からやがて変わった岩山も、虹のかかる滝も、碧から青へとかわる透明な水をたたえた大きな湖も、私の目には入らない。虚ろに流れていくだけだ。遠く正面に忌々しい洞窟が見えてきた。やっと逃げ出したと思ったのに!
私は竜の洞窟につれ戻されていた。
「あなた、夕べ誰かと話してなかった?」
「さ、さあ……」
私はとぼけた。洞窟では声がよく響くようだ。
「きっと、寝言ね。大きな寝言だこと! ほほほ」
あたりから小馬鹿にしたような笑いが上がる。
私は黙って下を向いた。
その夜、私は竜が眠りにつくのを待って支度を始めた。祖末な野良着に着替える。金髪を隠すヴェールが無いので、髪を小さくまとめショールを頭からかぶった。部屋をこっそり抜け出し、上の空き地に向う。私は自分一人逃げ出していいのだろうかと最後まで迷ったが、逃げられる時に逃げた方がいいだろうと思いなおした。次はいつ逃げ出せるかわからないのだ。私はセイラさんにも言わなかった。セイラさんは、私を恩知らずと思うだろうか?
ごめんなさい、セイラさん……。
セイラさんのご恩は忘れないわ。
七つ森まで逃げて、後の事はそれから考えよう。
私は空き地を抜け、林の中へ走った。林の中でヴォルが待っていた。
「さ、僕の背中に乗って!」
私はヴォルの大きな背中によじ登った。首にしがみつく。
「く、苦しい。首をしめないで! 僕のたてがみを掴んで!」
私は頬が熱くなるのがわかった。腕をゆるめて首の周りのたてがみを掴む。
「両足で僕の体をはさんで!」
私は言われた通りにした。ヴォルが走り始める。徐々にスピードを上げる。林の中、急な斜面を物ともせず、ヴォルは走って行く。私は振り落とされないよう必死にしがみついた。やがてセイラさんの言っていた大きな割れ目に来た。下を覗き込む。凄い深さだ。腕に鳥肌が立つ。
「ヴォル、ここを飛び越えるの?」
「もう少し先。このまま、割れ目に沿って行けば、幅が狭くなっている」
ヴォルは、割れ目に沿って走った。たしかに、狭くなっている場所がある。ヴォルは割れ目から離れ助走の為の距離を取った。
「下を見ないで。目を閉じてしっかり掴まって!」
「ちょっと待って、首に手を回してもいい? たてがみを掴んでいるだけでは心許ないの」
「いいでしょう。首を締めないよう注意して下さい」
私はヴォルの背に腹這いになり両手を首に回した。首を締め付けないよう注意する。両足でヴォルの体をもう一度、はさみ直す。
「準備はいい?」
「いいわ」
ヴォルはさらに距離を取ると走り始めた。助走のスピードを上げる。蹴った。空中に浮いた! 怖い!
どん!
着いた。と思ったら、ずるずると後ろに滑る。
「く!」
ガクンとヴォルの体が落ちる。後ろ足が崖にちゃんとかかったのだろうか? 怖い!
「ぐぅ!」
体の下でヴォルの筋肉がいっそう強張る。目を薄く開けて見た。ヴォルが精一杯爪をたてている。
ぐぐ!
ヴォルが一歩踏み出した。二歩、三歩。
やっと割れ目を越えた。私はほっとした。
ヴォルが再び走り始めた。凄く早い。一体、どこをどう走っているのか。私はヴォルの背の上で目を閉じていた。風の音だけがびゅうびゅうと聞こえる。私とヴォルは一晩中、走り続けた。
気が付くと、朝だった。私はどこかの草むらに寝かされている。ヴォルが私を覗き込んでいた。顔が濡れている。ヴォルが舐めていたようだ。
「気が付いた?」
「ええ……」
「そこに小川がある」
私は、小川で顔を洗って水を飲んだ。肩から腕にかけての筋肉が痛い。強張っている。必死になってヴォルに掴まっていたせいだろう。
「ここはどこ?」
「ブルムランドの端。この川は竜の湖から流れてきている。一休みしたら出掛けよう。七つ森まで、後半日の距離だ」
「夜まで待った方がよくない?」
「いや、早い方がいい。七つ森までいけば、僕の仲間もいる。さ、行こう」
ヴォルは私を背中に乗せると再び走り出した。川沿いの林の中をひた走る。朝とはいえ、夏の盛りだ。山とは違う。すぐに気温が上がった。暑い。ヴォルのはっはっと言う息づかいが聞こえる。
急に日が陰った。羽音がする。私は後ろを振り返った。
「竜よ! 竜が追って来た!」
ヴォルは、走る速度を上げた。私ははっとした。頭から被っていたショールが無い。どこかで落としたのだ。
「ヴォル、隠れて! 早く! 私、金髪がむき出しなの。すぐ見つかる」
どこでショールを落としたのかしら。そしたら、見つからなかったのに。いいえ、金髪を隠してもあの竜はすぐに私を見つけただろう。セイラさんが言っていた。一度、捕まえた獲物は決して逃さないって。あの竜に一度掴まったら、逃げられないんだわ。
私は、真っ暗な気持ちになった。ヴォルは走る速度をあげた。
ギャー、ギャッ
竜の羽ばたきをすぐ間近に感じた。
ギャーーーーー!
竜が襲って来た!
ヴォルがさっとよける。私達は林の中に一旦、避難した。木立が邪魔になって竜から私達の姿は見えない筈だ。
ヴォルは走り続けた。
だけど、竜の羽音は消えない。ヴォルは、ジグザグに進んだ。それでも、竜を撒ききれない。私たちは茂みに逃げ込んだ。
「しばらく隠れていましょう、竜が行ってしまうまで……」
私は側にあったツタを折り取ると頭に巻き付けた。少しは金髪が隠れるだろう。
ギャー、ギャー
竜の声が身近に聞こえる。どうやら、この辺を旋回しているようだ。
ゴォーーーーー!
火だ!竜が火を吐いた。焼けた木切れが落ちて来る。
私達は茂みから飛び出した。このままでは焼き殺されてしまう。ヴォルが再び走り始めた。とうとう、木立が途切れた。ここからは平原だ。隠れる場所がない。林の中にいたら、焼き殺される。平原に出たら、見つかってしまう。
「どうしたらいいの?」
「この原を抜ければ、七つ森だ。あそこまでいけば、逃げ切れる! 行くぞ!」
「ヴォル!」
ヴォルが平原に躍り出た。平原をまっしぐらに走って行く。夏の若草が青々と生えている以外、何も無い。
ギャアー!
竜の雄叫びが聞こえる。私は振り返った。
「振り返るな。しっかり掴まってろ!」
すぐ後ろに竜がいる!
「きゃあーーーーーーーー!」
私は竜のかぎ爪にもう一度、掴まれていた。竜は私を掴んだまま、ヴォルを襲う!
「いや! やめてーーー!!!」
ヴォルが平原を右へ左へ逃げて行く。竜がヴォルに向って火を吐いた。
「ヴォル! ヴォルーーー!」
焼けこげた草原。だが、ヴォルは間一髪、逃げおおせていた。しかし、竜はしつこくヴォルを追いかける。ヴォルに噛みつこうと首を伸ばす竜。
「やめて! お願い、私、洞窟に帰るから! ヴォルを殺さないでぇー!」
だが、竜はヴォルを追いかけるのを止めない。竜がもう一度、火を吐いた。黒こげになった草原。ヴォルの姿が見えない。
「いやあーーーーー!」
私は悲鳴を上げていた。竜は平然と私を掴んだまま、飛んで行く。私は泣きながら、下を見た。ヴォルの姿を必死で探した。だが、動く物は何もなかった。
私は精も根も尽き果てていた。
眼下に広がる草原も、草原からやがて変わった岩山も、虹のかかる滝も、碧から青へとかわる透明な水をたたえた大きな湖も、私の目には入らない。虚ろに流れていくだけだ。遠く正面に忌々しい洞窟が見えてきた。やっと逃げ出したと思ったのに!
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