君と詠う歌

鯨井イルカ

文字の大きさ
上 下
3 / 6

叱られる日々

しおりを挟む
気がつくと
背中を向けて
傍に居る
耳を反らして
尻尾振る君



「これじゃない」
不満な顔の
テレパシー
猫缶の味
間違えました



母と寝る
君を覗いて
からかえば
耳を反らして
ムスッと拗ねて



お向かいの
猫をかまって
帰った日
三つ指ついて
君が出迎え



窓越しに
雀を狙う
君の背に
声をかければ
尻尾で抗議



パソコンで
猫の動画を
楽しめば
音も立てずに
忍び寄る影



猫動画
止めて気配に
振り返る
いつから君は
そこにいたのか






暗闇で
声を殺して
泣いた夜
「ここを開けて」と
ドアを掻く音



「うるさい」と
言うかのように
ニャアと鳴き
涙の傍に
寄ってくる君






写真には
不機嫌そうな
君の顔
心当たりは
もう多すぎて
しおりを挟む

処理中です...