143 / 191
第二章 フカフカな日々
ビックリな一日・その一
しおりを挟む
暗雲が立ちこめる深紅の空
暗緑色の葉が茂る木々が鬱蒼と茂る大地
生々しい傷口のような深紅色の大河
ここは魔界。
魔のモノ達が住まう禁断の地。
そんな魔界の一角に峨峨と聳える岩山。その頂には、白亜の城が築かれていた。
その城の中では――
「シマちゃんや、ちょっとそこのおたま取っておくれ」
「分かった! はい、これ」
「ありがとうね、シマちゃん。ヤギさんや、このなますの味はどうかね?」
「ああ、ちょうどよく使っているぞ。これなら、ニンジンも美味しく食べられる」
「それならよかっただぁよ!」
――わりとなごやかな、朝食の準備が繰り広げられていた。
クラシカルなメイド服に身を包み、鍋に味噌を溶き入れる老女の名は、森山はつ江。
ときにはしくじることもあったり、ちょっぴり悲しいときもあったりするが、明るく元気ハツラツなばあさんだ。
「はつ江、ピーマンのじゃこ和えもできたぞ!」
そう言いながらミミと尻尾をピンと立てる、バミューダパンツ姿の仔猫は、シーマ十四世殿下。
歩くとピコピコ音がしそうな、可愛らしいサバトラの仔猫だ。
「それじゃあ、あとは俺が盛り付けて運ぶから、シーマは先に席についててくれ」
そう言いながら、小鉢になますを盛り付ける、角の生えた黒服の青年は、当代魔王。
赤銅色の長髪を靡かせながら、全自動ゆで卵むき魔導機とかを作りかねない、人見知りな魔界を統べる王だ。
「分かった、兄貴。ありがとうな」
「ああ、気にするな」
食卓に向かうシーマに向かってコクリとうなずくと、魔王はコンロの前にいるはつ江に声顔を向けた。
「はつ江も、みそ汁ができたら、席についていてくれ」
「ありがとうね、ヤギさん。なら、よそうのはお願いしようかね」
「ああ、分かりました任せてくれ」
魔王の返事に向かってにこりと微笑み、はつ江も食卓に向かっていった。
ほどなくして、魔王も盛り付けた朝食をワゴンに乗せて、食卓へやってきた。そして、皿を並べ終え、自分も席につこうとした。
「さて、じゃあ食事にしよ……」
まさにそのとき!
ピロリピロリ~ピロピロリピロリ~♪
魔王のポケットにしまった通信機から、メロディが流れ出した。
「こんな朝から、一体誰からだ……」
ぼやきながらも、魔王はポケットから猫型の手鏡の形をした通信機をとりだした。そして、画面を見たとたん、眉をひそめた。
「……二人ともすまない、ちょっと席を外すから先に食べててくれ」
「ああ、分かった、兄貴」
「分かっただぁよ。でも、冷めないうちに、戻っておいで」
魔王は二人に向かってコクリとうなずき、通信機を操作しながら席を離れた。
「待たせたな。こんな朝っぱらから、なんの用だ? ……は? お前はまた、そんなことで……」
いつになくフランクな口調で通信をしながら、魔王は台所から出ていった。はつ江とシーマは、その姿を見送ってから顔を合わせた。
「ヤギさんも、朝から忙しそうだぁね」
はつ江の言葉に、シーマは片耳をパタパタさせながら、コクリとうなずいた。
「ああ、そうだな。携帯通信機が開発されてからは、朝早かったり、夜遅かったりする時間に連絡がくることもふえたみたいだ」
「ほうほう。そういや娘も、そんなこと言ってただぁよ。どこの世界も、おんなじなんだねぇ」
はつ江はしみじみとそう言いながら、コクコクとうなずいた。すると、シーマが尻尾の先をクニャリと曲げた。
「そういえば、はつ江の世界だと、音声を電気に変えた通信をしてるんだっけ?」
「そうだぁね、私にゃ詳しいことは分かんねぇけど、電話っていってるから、きっと電気を使ってるはずだぁよ!」
「へー、電話っていうのか。それで、はつ江の世界でも、今は携帯式のやつが主流なのか?」
シーマがたずねると、はつ江はコクリとうなずいた。
「そうだぁよ。でも娘が若い頃くらいまでは、あってもお家に一台だけだったね」
「ふーん。そうだったのか」
「そうだぁよ……、あ」
不意に、はつ江が何かを思いついた表情を浮かべた。
「はつ江!? どうした!? お腹痛くなっちゃったのか!?」
シーマが慌ててたずねると、はつ江はにこりと笑って首を横にふった。
「心配かけて、ごめんねシマちゃん。ちょっと電話について、思い出したことがあるだけだぁよ」
「思い出したこと?」
「そうだぁよ! 昔は電話はお家の中にしかなかったから、相手のおうちがみんなでお出かけしてると……」
はつ江はそこで言葉を止めて、大きく息を吸い込んだ。
そして――
「電話に誰もでんわ、なんてこともあっただぁよ!」
――渾身のダジャレを、高らかに言い放った。
「……」
「……」
当然、二人の間には重い沈黙が訪れる。
「まったく、アイツには困ったものだ……、ん?」
沈黙を打ち破ったのは、食卓に戻ってきた魔王だった。
「二人とも……、なんか深妙な顔だけど……、一体どうしたんだ?」
「……ワハハハハ! なんでもねぇだぁよ、ヤギさん!」
「ああ、まったくもって、なんでもないかんじだから、気にしないでくれ……」
はつ江はカラカラと笑いながら、シーマはヒゲをだらりと垂らしながら、魔王の問いに答えた。
「そ、そうか……」
台所には、魔王の腑に落ちないかんじの相槌が響いた。
かくして、仔猫殿下とはつ江ばあさんの朝食には、今日もダジャレが添えられたのだった。
暗緑色の葉が茂る木々が鬱蒼と茂る大地
生々しい傷口のような深紅色の大河
ここは魔界。
魔のモノ達が住まう禁断の地。
そんな魔界の一角に峨峨と聳える岩山。その頂には、白亜の城が築かれていた。
その城の中では――
「シマちゃんや、ちょっとそこのおたま取っておくれ」
「分かった! はい、これ」
「ありがとうね、シマちゃん。ヤギさんや、このなますの味はどうかね?」
「ああ、ちょうどよく使っているぞ。これなら、ニンジンも美味しく食べられる」
「それならよかっただぁよ!」
――わりとなごやかな、朝食の準備が繰り広げられていた。
クラシカルなメイド服に身を包み、鍋に味噌を溶き入れる老女の名は、森山はつ江。
ときにはしくじることもあったり、ちょっぴり悲しいときもあったりするが、明るく元気ハツラツなばあさんだ。
「はつ江、ピーマンのじゃこ和えもできたぞ!」
そう言いながらミミと尻尾をピンと立てる、バミューダパンツ姿の仔猫は、シーマ十四世殿下。
歩くとピコピコ音がしそうな、可愛らしいサバトラの仔猫だ。
「それじゃあ、あとは俺が盛り付けて運ぶから、シーマは先に席についててくれ」
そう言いながら、小鉢になますを盛り付ける、角の生えた黒服の青年は、当代魔王。
赤銅色の長髪を靡かせながら、全自動ゆで卵むき魔導機とかを作りかねない、人見知りな魔界を統べる王だ。
「分かった、兄貴。ありがとうな」
「ああ、気にするな」
食卓に向かうシーマに向かってコクリとうなずくと、魔王はコンロの前にいるはつ江に声顔を向けた。
「はつ江も、みそ汁ができたら、席についていてくれ」
「ありがとうね、ヤギさん。なら、よそうのはお願いしようかね」
「ああ、分かりました任せてくれ」
魔王の返事に向かってにこりと微笑み、はつ江も食卓に向かっていった。
ほどなくして、魔王も盛り付けた朝食をワゴンに乗せて、食卓へやってきた。そして、皿を並べ終え、自分も席につこうとした。
「さて、じゃあ食事にしよ……」
まさにそのとき!
ピロリピロリ~ピロピロリピロリ~♪
魔王のポケットにしまった通信機から、メロディが流れ出した。
「こんな朝から、一体誰からだ……」
ぼやきながらも、魔王はポケットから猫型の手鏡の形をした通信機をとりだした。そして、画面を見たとたん、眉をひそめた。
「……二人ともすまない、ちょっと席を外すから先に食べててくれ」
「ああ、分かった、兄貴」
「分かっただぁよ。でも、冷めないうちに、戻っておいで」
魔王は二人に向かってコクリとうなずき、通信機を操作しながら席を離れた。
「待たせたな。こんな朝っぱらから、なんの用だ? ……は? お前はまた、そんなことで……」
いつになくフランクな口調で通信をしながら、魔王は台所から出ていった。はつ江とシーマは、その姿を見送ってから顔を合わせた。
「ヤギさんも、朝から忙しそうだぁね」
はつ江の言葉に、シーマは片耳をパタパタさせながら、コクリとうなずいた。
「ああ、そうだな。携帯通信機が開発されてからは、朝早かったり、夜遅かったりする時間に連絡がくることもふえたみたいだ」
「ほうほう。そういや娘も、そんなこと言ってただぁよ。どこの世界も、おんなじなんだねぇ」
はつ江はしみじみとそう言いながら、コクコクとうなずいた。すると、シーマが尻尾の先をクニャリと曲げた。
「そういえば、はつ江の世界だと、音声を電気に変えた通信をしてるんだっけ?」
「そうだぁね、私にゃ詳しいことは分かんねぇけど、電話っていってるから、きっと電気を使ってるはずだぁよ!」
「へー、電話っていうのか。それで、はつ江の世界でも、今は携帯式のやつが主流なのか?」
シーマがたずねると、はつ江はコクリとうなずいた。
「そうだぁよ。でも娘が若い頃くらいまでは、あってもお家に一台だけだったね」
「ふーん。そうだったのか」
「そうだぁよ……、あ」
不意に、はつ江が何かを思いついた表情を浮かべた。
「はつ江!? どうした!? お腹痛くなっちゃったのか!?」
シーマが慌ててたずねると、はつ江はにこりと笑って首を横にふった。
「心配かけて、ごめんねシマちゃん。ちょっと電話について、思い出したことがあるだけだぁよ」
「思い出したこと?」
「そうだぁよ! 昔は電話はお家の中にしかなかったから、相手のおうちがみんなでお出かけしてると……」
はつ江はそこで言葉を止めて、大きく息を吸い込んだ。
そして――
「電話に誰もでんわ、なんてこともあっただぁよ!」
――渾身のダジャレを、高らかに言い放った。
「……」
「……」
当然、二人の間には重い沈黙が訪れる。
「まったく、アイツには困ったものだ……、ん?」
沈黙を打ち破ったのは、食卓に戻ってきた魔王だった。
「二人とも……、なんか深妙な顔だけど……、一体どうしたんだ?」
「……ワハハハハ! なんでもねぇだぁよ、ヤギさん!」
「ああ、まったくもって、なんでもないかんじだから、気にしないでくれ……」
はつ江はカラカラと笑いながら、シーマはヒゲをだらりと垂らしながら、魔王の問いに答えた。
「そ、そうか……」
台所には、魔王の腑に落ちないかんじの相槌が響いた。
かくして、仔猫殿下とはつ江ばあさんの朝食には、今日もダジャレが添えられたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる