幼馴染監禁日記

星井もこ

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本編

day 35

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 「目、覚めたか」
 「……こんなに早くが幻覚が見えるなんて、案外人間の身体って脆いんだね」
 「誰が幻覚だよ。……ラットは一旦おさまったみたいだな」

 ラット。その言葉を聞いてサッと血が引いた。 なんで今圭ちゃんが前にいるかよくわからないけど、もしあんな波が来たら今度こそ……あれ?

 その時初めて、拘束されていることに気がついた。監禁用アイテム——様々な事態を想定して用意していた——なかの手錠とロープで手足の自由が奪われているのだ。
 とりあえず、これで圭ちゃんは安全だ。ほっと息をついた。

 手錠のはめられた手首と、ロープでぐるぐるにされている足に目をやる。
 俺が失意の中眠りに落ちた後、拘束されたのだろうか。流石に目を覚さない訳がないので、これまた監禁用アイテムの鎮静剤あたりの使用が疑われる。

 日記と同じ場所に保管していたこれらが圭ちゃんに見つかったということは。

 「……読んだ?」
 「あ? ああ、あれか。所々黒塗りにされてたけど目は通したよ。ほんっっとうに危ない奴だな、お前」
 「ハァ......まだそのタイミングじゃなかったのに」

 コンクから出る時の検閲時、場所の特定や特に機密度が高い所を塗りつぶされてしまったのだ。本当は全て廃棄しろと言われたがごねにごねて持ち出した。話を通してくれたロブには感謝しないと。
 
 さて、そんな虫食い日記でもそれを読まれた以上、俺がαとなったこともバレている。だったら、何故?

 「......圭ちゃんはなんでここにいるの?」

 訪れる静寂。 待っている間がまるで永遠に続くかと思われた。答えを聞くのが恐ろしかった。 

 「……運命が何かわからなくなったから。それを確かめたいだけだ」

 そう口火を切った圭ちゃんに渡された抑制剤を服用する。 真意は未だ、わからない。

 

 

 
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