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小話『前日談』
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定宿の食堂兼酒場で、私とグレンはいつものように晩ごはんをいただいていた。
「明日のクエストはディモルプトルかー。結構大物だね」
「だからちゃんと戦略を立てて臨んだ方がいいと言ったのに、なんでフィルはいないんだ?」
「ちょっと呼ばれちゃったからゴメンって言ってたよ。まあいつもの事だね」
「仕様のない奴だな……ラナも飲みすぎじゃないか?」
「明日に向けて景気づけだよ」
「二日酔いになっても知らないからな」
「もうこれで終わりにしておくから大丈夫」
「……じゃあ、そろそろ始めるか」
「え?……何を?」
真面目な顔で私を見つめるグレンにドキッとしてしまう。何が始まると言うんだろう。
「何って、決まってるだろ」
そう言うとグレンは私の手を取り自分の方へ引き寄せた。
「え?グレン?」
グレンは撫でるように私の手を広げさせると、甲を上に向けて持ち上げた。
「あの、その……」
突然の事にどぎまぎしていると、グレンは胸ポケットに挿していたペンを取り、私の手に文字を書き込んだ。
『私は魔法使い。後衛です』
「……何?これ」
「いつも言っても聞かないから書いておく事にした。明日はちゃんと守れよ」
「……」
手に書かれた字をじっと見つめる。
書かれた内容は酷いものだけど、グレンらしいなとも思うし、グレンの字が私の手にあるのはなんだかちょっと嬉しかった。
「ちゃんと守れよ」
「えへへ」
繰り返されるグレンの言葉は聞き流し、私は書かれた字を大切に握りしめる。
「あっ、お前消すなよ。フィルと一緒になって突っ込んでいったら彫り込むからな。だいたいこの間だって……」
いつものように始まった小言を適当にやり過ごしながら、この関係も嫌いじゃないけど、もっと違う関係になりたいなと思っていた事は、グレンには内緒の話。
「明日のクエストはディモルプトルかー。結構大物だね」
「だからちゃんと戦略を立てて臨んだ方がいいと言ったのに、なんでフィルはいないんだ?」
「ちょっと呼ばれちゃったからゴメンって言ってたよ。まあいつもの事だね」
「仕様のない奴だな……ラナも飲みすぎじゃないか?」
「明日に向けて景気づけだよ」
「二日酔いになっても知らないからな」
「もうこれで終わりにしておくから大丈夫」
「……じゃあ、そろそろ始めるか」
「え?……何を?」
真面目な顔で私を見つめるグレンにドキッとしてしまう。何が始まると言うんだろう。
「何って、決まってるだろ」
そう言うとグレンは私の手を取り自分の方へ引き寄せた。
「え?グレン?」
グレンは撫でるように私の手を広げさせると、甲を上に向けて持ち上げた。
「あの、その……」
突然の事にどぎまぎしていると、グレンは胸ポケットに挿していたペンを取り、私の手に文字を書き込んだ。
『私は魔法使い。後衛です』
「……何?これ」
「いつも言っても聞かないから書いておく事にした。明日はちゃんと守れよ」
「……」
手に書かれた字をじっと見つめる。
書かれた内容は酷いものだけど、グレンらしいなとも思うし、グレンの字が私の手にあるのはなんだかちょっと嬉しかった。
「ちゃんと守れよ」
「えへへ」
繰り返されるグレンの言葉は聞き流し、私は書かれた字を大切に握りしめる。
「あっ、お前消すなよ。フィルと一緒になって突っ込んでいったら彫り込むからな。だいたいこの間だって……」
いつものように始まった小言を適当にやり過ごしながら、この関係も嫌いじゃないけど、もっと違う関係になりたいなと思っていた事は、グレンには内緒の話。
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