【完結】どう考えても黒歴史なんですけど!? ~自分で書いた小説(未完)のヒロインに転生した私~

Rohdea

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第13話 王子様が貢いできます

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「バドゥルフ公爵家のお茶会?」
「リュミエリーナ様から招待状が届きました」

  私のその言葉に殿下はとても驚いている。
  翌日の朝、いつもの殿下からの餌付けという名の朝のお弁当の時間に私は、リュミエリーナ様からお茶会への誘いを受けた件の話をした。

  (話すべきなのかは悩んだけれど……)

  物語のアメリアは殿下に黙ってお茶会に向かってしまい、結果としてそれは完全に失敗だった。
  それならば、私は殿下にちゃんと話すべきだ、そう思った。

「それは、断……」
「断れません」

  (断るという発想が出るのはあなたが王子様だからよ!  マクレガー殿下!)

「そうか…………なら分かった」
「分かった?」
「おい、ルベンス!」
「──承知しました」

  殿下は突然、何かを決めたようでルベンス様に指示を出した。
  ルベンス様も心得たように返事を返す。

「?」

  意味が分からず呆けていると、殿下は優しく私の頭を撫でながらにっこり笑った。

「要するにバドゥルフ公爵令嬢は、お茶会や貴族のマナーにまだ不慣れな私の可愛いアメリアを大勢の前で恥をかかせようと考えているわけだろう?」
「……っ」

  その通りなのだけど“私の可愛いアメリア”は恥ずかしい。
  美味しいご飯の味が全部、甘くなった気がしてよく分からなくなった。

「だから、向こうがその気ならこちらはこちらで迎え撃てばいい」
「殿下……?」

  にっこりと笑った殿下の後ろから黒いオーラとスパルタ飼い主……いえ、教師の顔が見えた気がした。

 


*****




  そうして、お茶会に向けてマクレガー殿下を始めとしたスパルタな飼い主……じゃない……教師達からの特訓が始まった。
  もちろん、私が不慣れな貴族のマナーや作法を身につけさせるためだ。
  完璧とまでは行かなくても、私の事を舐め切っていて攻撃しようとニヤニヤ笑って待ち構えている性根の腐った奴らには大きな打撃だろう?  と殿下は言った。

  (その通りよ……)

  私の書いた物語のアメリアは、貴族のマナーをしっかり学ばないままお茶会へと向かってしまったからその場で大恥をかく。
  待ってましたとばかりに貶され、罵られ、嘲笑され……最後には頭からお茶をかけられて……

『あらあら~?  身の程知らずさんにはぴったりの装いですわね?  とっても素敵ですわよ』

  リュミエリーナ様のその言葉に周りの令嬢も同調してアメリアをバカにし始めて……

『本当に素敵ですわ~』
『さすが、マクレガー殿下の目に止まるだけあるわね』

「……」
  
  (自分で書いた展開だけど、その通りになんてさせないわ!)

  物語の中では、アメリアが奮起するために必要な展開だったかもしれないけれど、今の私には必要無い!





  お茶会までに基本的なマナーは、スパルタ(以下略)……からの教育でどうにかなっても一つだけ問題があった。
  それは、お茶会に着ていくドレス。
  男爵家で私に与えられたドレスは、お愛想程度のほんの数着だった。それもリデラの着古したお下がりで流行から大きくかけ離れたもの。

  (どんなにマナーを身につけてもこればっかりは私の力ではどうする事も出来ないわ)

  父親は帰って来ないし、義母とリデラが私がドレスを買う事を許すはずが無い。
  私が無様なドレスで訪問して笑われるという事は、男爵家そのものが軽く見られてバカにされるという事なのに、あの二人にはそういう考えが無いらしい。

  (おそらく、私への憎悪が勝っているせいでしょうね)

  これはもう持っているドレスの中で一番マシなのを着ていくしかない……


  ──そう思っていたのだけれど。

  お茶会の数日前の事だった。

「殿下?  こ、これは……」
「ドレスだが?」

  殿下が、見て分からないのか?  みたいな目で私を見て来る。酷い!

「ど、ど、どういう事でしょう?」
「どうもこうも。今度のお茶会にアメリアが着ていくドレスにどうかと思ってな。これでは不満か?」
「不満!?  まさか!  とんでもないです!」

  不満ではなく驚いてます!
  シンプルながらにも品があって一目で良いものと分かる。
  そして、何故??  という疑問ばかりが浮かぶ。ドレスの話は誰にもしていないのに。

「作法やマナーに関しては合格点を貰ってるのに、お茶会の日が近付くにつれて日に日にアメリアの可愛い顔がどんどん曇っていった」

  そう言いながら、私に近付いた殿下の手がそっと私の頬に触れる。

「え?」

  ドキッ!
  その仕草に胸が大きく跳ねた。

「こんなに可愛い顔を曇らせるんだ。何か憂い事が残っているに違いないと思った。そうして考えたらドレスこれの事しか思い浮かばなかったんだ」
「殿下……」

  ま、また可愛いと口にされているし、ふ、触れられている所も何だか熱いわ!
  それに……なぜ、こんなに至近距離で見つめてくるの……

  (恥ずかしい、めちゃくちゃ恥ずかしい!)

  そんな真っ赤な顔をした私にマクレガー殿下は照れくさそうにしながら言った。

「さすがに一から作らせる時間は無かったから既製品にはなってしまう。だが、これから手直しすれば間に合うはずだ。だから……その、受け取ってくれるか?  ──わ、私の気持ちだ」
「……!」

  この王子様!  なんて所に気持ちを入れてくるの!?

「で、ですが……」
「躊躇わないでくれ。だが、そんなに気になるなら……そうだな。ご褒美とでも思ってくれ」
「……ご褒美、ですか?」

  殿下は優しく微笑みながら続ける。
  手は私の頬に添えたまま。

「毎日、放課後、私と勉強を頑張って来た事やここ最近のマナー作法の勉強に対するご褒美だ。それならいいだろう?  受け取ってくれ!」
「ですが……」

  これでは私は殿下から貰ってばかり。
  餌付け……朝のお弁当だって、躾……学院の勉強もマナーの勉強も全部全部私の為。
  私は何も返せないのに。

「返しなど気にしなくていい」
「気になりますよ!」
「アメリア!」

  殿下が真剣な瞳で私を見つめる。
  綺麗な紫色の瞳が真っ直ぐ私を見てくる……

「好きな子に何かしたいと思う男の気持ちを奪わないでくれ」
「!」
「美味しそうにご飯を食べるいつもの可愛い笑顔のように、今も“ありがとう、嬉しい”と笑って欲しいんだ。私はそれだけで幸せな気持ちになれる」
「幸せな気持ち……」

  殿下はにっこり笑うと続けて言った。

「そうだ、アメリア!  もし、見返りに私に何かしたいと思ってくれているなら一つお願いがある!」
「お願いですか?」

  何かしら?  凄く真剣なお顔なのでこれはかなり大事なお願いかもしれない!
  私はゴクッと唾を飲み込む。

「──アメリア。君のその柔らかな身体を堪能させてくれ!」
「……え?」

  (身体を……堪能ですって!?)

  ボンッと私の顔がますます赤くなる。

「そうだ!  私はもう一度、アメリアを抱きしめモフモフしたい!」

  
  わぅーーーん!


  殿下は一言も“モフモフ”とは言っていないのに、何故か私の脳内が勝手にモフモフに変換してしまう恐ろしさ。
  しかも、言い方が!

  (びっくりしたぁ……でも、抱きしめるくらいなら……)

  私は両手をおそるおそる前に差し出しながら言った。

「え、えっと、どうぞ?」
「アメリア!」
「ひゃぁ!?」

 


  ───こうして、私は盛大にモフり倒され(?)、なんだかんだでドレスを手に入れ、悪役令嬢、リュミエリーナ様の用意した地獄のお茶会の日を迎える事になった。

  
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