【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea

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7. モッフモフとの再会



「リディエンヌさん、その籠はあっちに運んで!」
「は、はい!」

  私は洗濯物の入った籠を持って言われた所まで運ぶ。

「そっちが終わったらこっちを手伝って!  はい、箒」
「は、はい!」

  今度は渡された箒で玄関を掃く。
  私は今、修道院に身を寄せながら働いている。

  故郷であるグォンドラ王国を追い出されて、早いもので半月が経っていた。
  あれから、試しに修道院に向かってみたところ、ある日突然、家族を失い仕事も持っていなくて困っている女性として迎えてもらった。

  (嘘をつくのは申し訳ないけれど───)

  あんな形で捨てられるように追い出されて私が家族を失った事は間違いない。  
  もう、あの人達は私の家族ではないのだから。

  そして、ラッシェル国にも女性支援の制度は今もしっかりあって、私は1ヶ月だけこの修道院のお世話になる事が決まった。
  その1ヶ月の間、修道院の手伝いをしながら、空いた時間にこれから生きていく為の準備(主に仕事探し)をしている。


  ───だけど。

「…………また、駄目だったわ」

  本日の手伝いを終えた私は部屋でがっくり肩を落としていた。
  修道院の手伝いをする傍ら、私は街に出て仕事探しに励んでいた。
  しかし、中々決まらない。
  私自身が王女という何でも人にやって貰うのが当たり前!  という世界で生きて来たせいで、何の能力もなく駄目駄目なのはよーく分かっている。けれど……

「住み込みでも可というお仕事が少なすぎるのも問題だわ」

  この国に来た日、馬車の中でも思ったようにラッシェル国はあまり景気のいい国では無いようで、もともと求人も少ない上に住み込みとなると殆ど無いに等しい。

「違う街に行った方がいいのかしら?」
「……どこの街も似たようなものですよ」
「え!  そうなのですか?」

  私より少し前にやはリ身寄りをなくしてしまい修道院にお世話になっているという同室の女性、レイナさんがそう教えてくれた。
  彼女はこれまで街を転々としていたらしい。

「私も全滅でした……もうすぐここを出ないといけないのに」
「……レイナさん」

  (一人で生きて行くってそんなに甘いことではなかったのね)

  でも、父親だった人の思い通りにあっさり野垂れ死にするのだけは嫌だわ。
  絶対に生き延びてやる!
  と、心に誓って毎日を過ごした。


───


「リディエンヌさん、お元気で」
「はい、お世話になりました」

  結局、住む所も仕事も見つけられないまま修道院を出る日が来てしまった。

「リディエンヌさん、この後は?」
「とりあえず、宿を取りながらもう少し仕事を探します」

  修道院での手伝いは無給だけど、その分、食事などは支給なのでお金はかからなかった。
  そのおかげで、持ち出したお金は殆ど手付かずのまま。
  贅沢さえしなければ少しの間なら暮らせるはず。

「ごめんなさいね、1ヶ月以上は面倒を見てあげられなくて……こればっかりはね、規則だから」
「いえ、それでも助かりました!  お世話になりました!」

  少なくとも修道院の手伝いをする事で、今まで知らなかった“働く”という事がどんな事かは分かった気がする。
  思っていたよりも重労働だと知れた。
  それにとりあえず、掃除、洗濯くらいなら出来るようになったわ!
  
  (料理……は包丁を持つ手が怖いから触らない方がいいと止められてしまったけれど)

  王宮の中にいただけでは知る事の出来なかった世界。
  これまで考えた事も無かった使用人達の苦労。
  色々な事を知る事が出来た1ヶ月だった。



  そうして、お世話になった修道院を後にして中心街まで歩く。
  まずは宿の確保、それから仕事探し……難しいなら何処かで見切りをつけてこの街から出て他の街へ行く事も検討しなくては……


「───おい、聞いたか?  ここ1ヶ月、作物の成長がいい感じらしいぞ!  今年は近年稀に見る豊作になる見通しだ」
「へ~、珍しい」
「確かに、最近天候も安定しているもんな」
「こんな事は今まで無かったよな」

  到着後、ウロウロと歩いていたら、商人さん達のそんな会話が耳に入って来た。
  この国に来た時に見た作物は確かに成長が残念そうだったけど、いい方向に向かっているらしい。
  しかし、それよりもこの国の気候って不安定だったの?  ということに驚いた。

  (……そんな不安定な様子は感じなかったけど……?)

  私がラッシェル国に来てからは、少なくとも気候がグォンドラ王国と比べて不安定だと思った記憶は無い。

「不思議ねぇ……」
  
  そんな言葉を呟いた時だった。
  ぐー……きゅるるぅ~……

「……!」

  ちょうど私のお腹の虫が鳴り出した。

「……もう、そんな時間だったのね」

  広場の時計を見上げて時間を確認するとちょうどお昼だった。
  私のお腹は正直者過ぎる。

「ふふん、でも、今は最後に修道女さん達が持たせてくれたパンがあるのよ!  と、いうわけで、いっただきまーーす!」

  広場のベンチに腰掛けて早速食べようと包みからパンを取りだした。

  (そう言えば、1ヶ月前もこの辺りで手づかみで食べる事の出来る食事を知って感動したっけ)

  そうよ、そこにあのモッフモフの泥棒猫が現れて───……くっ!
  そんな苦い経験を思い出していたら、

「にゃーーー!」

  (…………ん?  鳴き声?  しかもものすごく聞き覚えのある……)

  既視感のある聞こえて来た鳴き声に驚いていると、突然私の目の前に何かが飛び出して来た。

「……ひぃっ!?」
「にゃーん」

  (……はっ!  そうよ、猫!  これはまた奪われる!?)

  あの日と違って咄嗟にパンを隠そうとしたものの、飛び出して来た猫は我先にとパンを強奪してしまう。

「あぁっ!  またっ!?」
「にゃー」

  間違いない!  
  そのモッフモフの毛並みにまん丸の瞳。
  こんな状態で無ければ撫でて撫でて撫で倒したくなるくらいの可愛さ!  あの時の猫!

  (またしても……またしても私から奪うなんて!)

「にゃーん」
「だから、にゃーんじゃないのよ!?  それ、私のだから!」
「にゃー!」

  またしても元気よく返事をした猫は私のパンを咥えたまま走り出した。

「こら、モフ猫さん!!   何でまた私のパンを奪うのよーー!」

  あの日の食べ物の恨み忘れてないわよ!
  今度こそ逃がさないんだからと、私は必死に泥棒猫を追いかけた。

「こら!  待ってよ、モフ猫さん、私のパンを返して!」
「にゃーん」
「……にゃーん、じゃないのよ!  私、お腹ぺこぺこなの!」
「にゃー」

  私はとにかく必死に追いかけた。
  一度ならず二度までも私のパンを奪うなんて絶対に許せないわ!
  モッフモフの刑よ!
  しかし、モッフモフの泥棒猫は必死に追いかけて来る私を、遊び相手か何かと勘違いしているかのように翻弄して来た。

「にゃーーん」

  (と、とんでもないモフ猫だわ……!)

「はぁはぁ……」

  完全に息切れを起こしていた私だけど、絶対に負けられない!
  私は最後の力を振り絞って走る。
 
「待ちなさーーい!」
「にゃ!」
「!」

  そしてモッフモフの泥棒猫は突然逃げるのをやめて止まった。

  (よし!)

  ようやく止まってくれた。捕まえるなら今がチャンス!
  この時、モッフモフしか見えていなかった私は、もはや、私は猫に向かって飛び付いた。

「あなたのモッフモフは大変気持ち良さそうですけれど、泥棒は許しません!」
「にゃっ!」
「今度こそ捕まえたわよ、モフ猫さん…………くっ、なんて気持ち良さ……」
「にゃ~」

  と、ようやく私のパンを盗んだ泥棒猫を捕まえたはずなのに、想像以上のモッフモフに気持ちを持っていかれそうになった……時だった。

「誰かいるのか!」
「!?」
「にゃ!」

  ビクッ
  突然、後ろから聞こえた大声に私の身体が大きく跳ねた。

  (誰かって誰、私のこと!?)

  そこでようやく気付く。
  ここはどこなの、と。
 
  (モッフモフ泥棒猫を追い掛けるのに夢中で…………え、庭?)

  ようやく自分が何処かの屋敷の庭に入り込んでいた事に気付く。
  不法侵入という言葉が頭の中に浮かぶ。

「……!」

  サーと自分の顔から血の気が引いていくのが分かった。

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