【完結】私の初めての恋人は、とても最低な人でした。

Rohdea

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第1話

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  伯爵令嬢の私、エマーソン・トランドの小さな頃の夢は、素敵な人と恋をする事。
  子供の私から見ても仲が良くてお互いを大切に想い合っているお父様とお母様は、いつだって私の憧れで。

  だから、いつか私も!  ……そんな風に夢を見ていたの。

  お父様とお母様が出会った学校!
  あの学校に入れば素敵な人と出会って恋が出来る!!

  子供だった私はあの学校に入りさえすれば絶対にそんな人に巡り会える……そう信じていたわ。
  だから、小さな頃から必死に勉強を頑張ったの。
  エリート養成校と呼ばれる、シュテルン王立学校に絶対に入学したかったから。

  そうして、私は長年の夢を叶えて無事にシュテルン王立学校に入学して学校生活を送っていたわ。
  なかなか、素敵な恋には巡り会えなかったけれど。

  けれど、私ではなく、私の一つ上のお兄様がこの学校に入学してから恋をした。
  それは当時、勉強ばかりで他の事に無関心になってしまい、家族ともろくに口を聞かなくなってしまっていたお兄様を変えてしまうほどの恋だった。

  貴族と平民。
  本来なら結ばれる事が許されない身分差だったお兄様達。
  そんな大きな壁を乗り越えて結ばれたお兄様達も両親と同じで私の憧れとなったわ。



  ──いつか私もそんな恋を……

  彼、ウォレスはそんな夢を見る私の前に現れた人だった。



────────────

────…………


「エマーソンはまた1番か。やっぱり凄いな」
「ありがとう!」
「ウォレスだってこの間より順位が上がってるわよ?」
「うん、エマーソンのおかげだろうな。ありがとう」

  一緒に勉強して、たまに放課後も一緒に出掛けたわ。

「エマーソン!  今日はカフェに行こう!」
「カフェ?」
「君は勉強ばかりだからな!  たまには息抜きも必要だろう?」
「え?  ちょっと待っ……」

  そう言って強引に街に連れ出されたっけ。



────…………

────────────


  楽しかったわ。
  私は誰かを好きになったのも初めてで。
  あなたからちょっと強引に迫られて始まった交際だったけど、受け入れてよかったなって思えるくらいには毎日が幸せで。


  お父様もお母様もお兄様も皆、こんな気持ちを経験してきたんだわ。
  そう思うと私も仲間入りしたみたいで本当に嬉しかった。


  伯爵家の三男である彼は跡を継ぐ家があるわけではないから……もしかしたら卒業した後、彼は我が家に婿入りしてくれるんじゃないかしら?


  そんな夢まで見ていたわ。

  ずっとこんな日々が続くと思っていた。






   …………今、この瞬間までは。







  人気の少ない中庭にその2人はいた。



  何故、私が今、そんな場所に来たのかを説明すると……
  友人のケイトが、

「最近、エマの恋人が怪しいと思うのよ」

  そんな不安を煽るような事を言い出したから。

「やだわ、ケイトったら。気のせいよ。彼は友達が多いもの」
「それはそうだけど……でも、あれはちょっと」
「大丈夫よ!  心配してくれてありがとう」


   ──まさか、彼に限って。


  そう笑ってとりあえず、ウォレスと昼食を一緒に食べようと思って彼を探しに中庭までやって来た。

  そして、2人を見つけた。
  彼、ウォレスと一緒にいるのは彼と昔馴染みだという、平民の女性レーナさん。
  数いる友達の中でも彼女とが一番仲が良い事は知っている。

  (また、一緒にいるのね?  確かに2人は仲がいいなって思った事はあるけれど……)

  そんな事を考えながら、そっと茂みの影から2人の様子を窺った。

  そうして、聞こえてきたのは───




「俺は、本当はレーナの事が好きなんだ」
「……ウォレス……!  本当に?  私も。私もあなたの事が好きだったの」


  (……な、んですって!?)


  思わず耳を疑ってしまったわ。
  私が目撃している事も知らず、互いの想いを告白し合う男女ふたり
  この光景だけを見ていれば、場所はともかく想いの通じ合った恋人の単なる逢瀬にしか見えない。

「……でも、いけないわ。ウォレス……あなたには……エマーソンさんがいるじゃない」

  レーナさんが悲しそうに目を伏せた。

「レーナ……それなんだけど彼女、エマーソンは……違うんだ」
「違う?」
「俺はエマーソンの事が好きで、交際を申し込んだわけでは無いんだ。それには目的があったんだ」
「目的?」

  レーナさんは意味が分からないって顔をして首を傾げている。

「そう。君と俺が結ばれる為にはこの方法しかなかった。言うならば彼女はその為のちょうど良い人材だったのさ」
「どういう事?」

  不思議そうな顔をしてコテンと首を傾げるレーナさんに向けてウォレスは言った。

「ゆくゆくはこのまま彼女と結婚して、彼女にはお飾りの妻になってもらうつもりだ」
「えっ!?」

  レーナさんは驚きの声を上げた。

「エマーソンは、昨年、兄が彼女に次期当主の座を譲った事で伯爵家を継ぐ事が正式に決まっただろ?  だが、いくら秀才と持て囃されたアイツでも所詮女。女にはやれる事に限度があるはずだ。なぜなら、この国の女性の爵位継承例は殆ど無いからな!  だから、俺は彼女と結婚した後、彼女を助けるフリをして伯爵家の権限は俺の物にしようと画策してる」
「まぁ!」

  (……は!?  ウォレスは何を言っているの? )

  私はウォレスの言葉に耳を疑った。

「エマーソンだって兄の身勝手な願いに、次期当主なんて地位を無理やり押し付けられた口だろうからな!  だから名ばかりの当主エマーソンにしておいて俺が伯爵家を牛耳ってやるさ。そうしたら君を愛人として囲う事も出来るだろう?」
「ウォレス……」
「レーナには申し訳ないが、実家では三男坊の力の無い俺では平民である君と一緒にいるにはその方法しかない。だから耐えてくれ!」

  ウォレスは、そんなゲスい発言をケロッとした顔で口にした。
  その顔には罪悪感の欠片も感じない。

  (本気……本気でそんな事を思っているの……?)

「エマーソンはその計画の為に利用してるにすぎない。俺が愛してるのは昔からレーナだけだよ」
「ウォレス……私もよ!  私も昔からあなただけ!」


  そんな会話を繰り広げている2人はきつく抱き合いキスまで交わしていた。


  ──もちろん、彼らは知らない。
 

  たった今、そのウォレスが“利用していた” という、私、エマーソンがその現場を目撃している事も。
  一部始終、全ての話を聞いてしまった事も。


「……」


  ……そっか。
  私、最初から騙されてたんだ……浮気されてたんだ……
  あんな男の言う事を真に受けて信じちゃって…………バカみたい。


  彼に、仲の良い平民の女の子がいても、昔からの知り合いだからって友達だからって。
  その言葉をバカみたいに信じてた。


  ポタッ


  自分の目から涙が溢れてくる。


「私はみんなと違って人を見る目が無かったんだわ……」


  私はその場でポロポロと涙を流しながらそう呟いた。





  こうして私はこの日、初めての恋人に騙され利用されていた事を知った。

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