【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら

Rohdea

文字の大きさ
20 / 26

第17話

しおりを挟む

  
  (おかしいわ……そして、王女様の美しい顔が……)

  私が噂で聞いていた“王女様と護衛騎士様”の様子と全然違う二人……
  身分差の恋は?  王女様の婚約によって引き裂かれた恋人同士では無かったの?

  (どういう事??)

  旦那様(仮)と王女様の愛の会話……どころでは無い、いがみ合いはますます白熱していく。

「……私が笑う事に何か問題でもありますか?」
「あ、当たり前でしょう!  忘れてしまったの!?  わたくしはあなたにそう命令を……」
「……あぁ、そうでしたね。ですが、私はもうあなたの専属の護衛騎士ではありませんので」
「……っ!」
「“誰にも笑顔を見せるな”は、王女殿下の護衛騎士だった私への個人的な命令だったと記憶しています。ですから、もう私はその命令は聞けません」
「ギ、ギルバート!!」

  何と旦那様(仮)は、恐れ多くも王女様の言葉を遮ってまで強く反論を始める。
  一方の反論された王女様の顔は怒りでますます醜く歪んでいった。

「……」

  何という事!
  旦那様(仮)が全然ワンコでは無くなっていますわ……
  トクンッ
  ワンコ旦那様(仮)との違いすぎるその様子に何故か私の胸が高鳴る。

  (ワンコはワンコで、可愛くて好きですけれど、こういう旦那様(仮)も格好良くて好……)
  
「……」

  そこまで考えて一旦、私の思考が止まる。
 
  (あら?  ……今、私何を考えた……??)

  慌てて自分の頬を抑えると、ほんのり熱を持っている気がする。
  トクンッ
  
  え?  何これ。  
  まさか、私……旦那様(仮)に───



「あぁ、違うのか……それは残念だ。せっかくこんなに綺麗で美しい奥方に熱い視線を送って貰えたと思ったのに……悲しいなぁ」
「……!」

  突然、私の思考を遮るようにして隣からそんな声が聞こえて来た。
  私の思考に無理やり割り込んで来たのは、サティさん……にしか見えないサティアン殿下。
  いつの間にか王女様の側から離れてこちらに来ていたみたい。
  
  (この口調!  そしてこのペラッペラの軽い感じ……髪色は違うけれど、やっぱりサティさんにしか見えない)

  そう思ってサティアン殿下の方に視線を向けると、バチッと目が合う。

「……」
「…………っっ!」

  そして、目が合った瞬間、何故かサティアン殿下のヘラヘラした様子が消えて、頬がポッと赤くなり、ぐるんっと目を逸らされた。

  (……?  な、何なんですの?)

  しかも、サティアン殿下はたった今、思いっきり私から目を逸らしたはずなのに、直ぐにチラチラと私の方へと視線を向けてはますます頬を赤く染めて目を逸らす……という謎の行動に出ましたわ!

  (ええぇ……?)

  何がしたいのかさっぱり分からない。  
  サティアン殿下は完全に挙動不審になっていた。

  (はっ!  そうよ、サティアン殿下=サティさんだから、私の事を覚えていて戸惑っておられるのね!?  それでそんな怪しい動きを……!)
  
  けれど、チラチラされている理由は納得したけれど、頬を赤く染めている理由だけはよく分からない……
  もしかして、今日の私の装いは何処かおかしいのかしら?  そんな疑問が浮かんだ。
  まさかと思い、そっと自分の装いを確認する。

  (ランドゥルフ伯爵家の使用人達が頑張ってくれたのだから大丈夫のはず……)

  だけど、そう言えば、旦那様(仮)も少し様子がおかしかった気がするわ。


────……


   着替えとメイクを終えた後、顔を合わせた旦那様(仮)は少し放心した様子で、私の名前を小さな声で呟いた。

『アリス……』
『えっと、どこかおかしい所はありませんか?  失礼があってはいけませんもの』

  私がぐるっと一周回りながらそう訊ねたら、

『あ、あるものか!  だ、大丈夫だ!  とても、かっ、か……かわ…………よ、よく似合っている!!』

  と、顔を赤くしてワンコ顔で答えてくれましたわ。
  ありがとうございます、と微笑み返したら今度は両手で顔を覆ってしまって……
  ますますワンコみたいでしたわ。


────……

  
  (うーん、男性の心理って難しいですわね……)

  いつもいつも、ヒーローの描写には悩まされますもの。大変ですわ。

  なんて事を考えていたら、サティアン殿下の方から話しかけて来た。

「コホンッ、あー……………ランドゥルフ伯爵……夫人」
「はい」
「?」

  (……えっと?)

  返事を返したら何故か、サティアン殿下の表情がぱあっと華やいだ。
  そんな反応される理由が分からなくて困惑する。

  (……と、とりあえず、ここは知らないフリをするべきなのよね?)

  今、思い返せば、出会ったのは街だし殿下は偽名を使っていた。
  あんなに奇抜な色にしていたのは変装の一つだったのかもしれない。
  逆に目立ちすぎでしてよ! 
  と、言いたいけれど、殿下には殿下なりのお考えがあったのかもしれないので、私が口を出す事ではないものね。

  そう思った私は、再びじっとサティアン殿下を見つめる。

「……ぐぅ!」

  (……あっ!)

  殿下が変な声を出された時にようやく、まだ自分が挨拶をしていなかった事に気付いた。
  それに腹を立てているのかも!
  慌てて礼をとる。

「サティアン殿下。ランドゥルフ伯爵の妻、アリスと申します」
「あ、あぁ……」
「本日は夫と共に精一杯おもてなしをさせていただきます。とうぞ、ごゆっくりお過ごし下さいませ」
「あ、あぁ……」
「……?」

  挨拶は終えたものの何故か、サティアン殿下は話しかけて来た時のペラッペラの軽い口調がまるで嘘のように口数が少なくなってしまっていた。
  
  (お疲れなのかしら?)

  私は心配になって、更にじっとサティアン殿下の事を見つめる。

「……うぅっ!  ぐっ!  くぅっ……何で……」
「??」

  サティアン殿下は、ますます変な奇声をあげ始めた。

  (何で……は私のセリフでしてよ。本当にいったい、どうされたのかしら?)



「……っっ!  ギルバート!  あなた、いったいどうしてしまったと言うの?  今まではわたくしに逆らう真似なんてしなかったでしょう!?   常にわたくしの事を大事にして……」
「王女殿下に仕える身として当然の行動をしていただけですが」

  謎のサティアン殿下の行動に困惑させられていると、そこに、王女様と旦那様(仮)の揉めている声が再び聞こえて来た。
  あちらはあちらで、一触即発という状態。
  
  (おもてなしとは……)

「だ、だけ?  な、何ですってぇ!?  待ちなさい、ギルバート!  あなたのわたくしへの特別な愛はどこにあると言うの!?」
「……愛、ですか?  特別な?」
「そう、愛ですわ!  だって、あなたはわたくしの事をずっと愛……」
「失礼ながら!  王女殿下」

  王女様の言葉をなんと旦那様(仮)はまたしても遮った。
  大丈夫なのかしら、と心配になる。

「な、何ですの!」

  王女様の眉が不快そうにひそめられた。
  けれど、そんな王女様に向かって旦那様(仮)は怯む様子もなく堂々と言った。
  
「王女殿下、私はこれまでもあなたを一人の女性として愛した事は一度もありません!」
「は?」
「私は最近、ようやく“愛”というものを知りました」

  (───ん?  あれ?)

  すでに壊れかけていたような気もするけれど、噂を聞いてからずっと現実にもあるのね!  と思って憧れていた恋物語が音を立ててガラガラと崩れていく音が聞こえた気がした。

しおりを挟む
感想 150

あなたにおすすめの小説

何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました

海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」 「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。 姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。 しかし、実際は違う。 私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。 つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。 その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。 今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。 「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」 「ティアナ、いつまでも愛しているよ」 「君は私の秘密など知らなくていい」 何故、急に私を愛するのですか? 【登場人物】 ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。 ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。 リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。 ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

【完結】憧れの人の元へ望まれて嫁いだはずなのに「君じゃない」と言われました

Rohdea
恋愛
特別、目立つ存在でもないうえに、結婚適齢期が少し過ぎてしまっていた、 伯爵令嬢のマーゴット。 そんな彼女の元に、憧れの公爵令息ナイジェルの家から求婚の手紙が…… 戸惑いはあったものの、ナイジェルが強く自分を望んでくれている様子だった為、 その話を受けて嫁ぐ決意をしたマーゴット。 しかし、いざ彼の元に嫁いでみると…… 「君じゃない」 とある勘違いと誤解により、 彼が本当に望んでいたのは自分ではなかったことを知った────……

【完結】呪言《ことほぎ》あなたがそうおっしゃったから。

友坂 悠
恋愛
「君はまだ幼い、私は君を大事にしたいのだ」  あなたがそうおっしゃったから。  わたくしは今までお飾りの妻でがまんしてきたのに。  あなたがそうおっしゃったから。  好きでもない商会のお仕事を頑張ってこなしてきたのに。  全部全部、嘘だったというの?  そしたらわたくしはこれからどうすればいいっていうの?  子供の頃から将来の伴侶として約束された二人。  貴族らしく、外あたりが良く温厚に見えるように育ったラインハルト。  貞淑な令嬢、夫を支えるべき存在になるようにと育てられたアリーシア。  二人は両家に祝福され結婚したはず、だった。  しかし。  結婚したのはラインハルトが18になった歳、アリーシアはまだ14歳だった。  だから、彼のその言葉を疑いもせず信じたアリーシア。  それがまさか、三年後にこんなことになるなんて。  三年間白い結婚を継続した夫婦は子を残す意思が無いものと認められ、政略的な両家のしがらみや契約を破棄し離縁できる。  それがこの国の貴族の婚姻の決まりだった。  元は親同士の契約に逆らって離縁しやり直すための決まり事。  もちろん、そんな肉体的繋がりなど無くても婚姻を継続する夫婦は存在する。  いや、貴族であれば政略結婚が当たり前、愛はなくても結婚生活は続いていく。  貴族の結婚なんて所詮そんなもの。  家同士のつながりさえあれば問題ないのであれば、そこに愛なんてものがなくってもしょうがないのかも、知れない。  けれど。  まさかそんなラインハルトから離婚を言い出されるとは思ってもいなかったアリーシア。  自分は傾いた家を立て直すまでのかりそめの妻だったのか。  家業が上手くいくようになったらもう用無しなのか。  だまされていたのかと傷心のまま実家に戻る彼女を待っていたのは、まさかのラインハルトと妹マリアーナの婚約披露。  悲しみのまま心が虚になったまま領地に逃げ引き篭もるアリーシアだったが……  夫と妹に、いや、家族全てから裏切られたお飾り妻のアリーシア。  彼女が心の平穏を取り戻し幸せになるまでの物語。

【完結】転生悪役っぽい令嬢、家族巻き込みざまぁ回避~ヒドインは酷いんです~

鏑木 うりこ
恋愛
 転生前あまりにもたくさんのざまぁ小説を読みすぎて、自分がどのざまぁ小説に転生したか分からないエイミアは一人で何とかすることを速攻諦め、母親に泣きついた。 「おかあさまあ~わたし、ざまぁされたくないのですー!」 「ざまぁとはよくわからないけれど、語感が既に良くない感じね」  すぐに味方を見つけ、将来自分をざまぁしてきそうな妹を懐柔し……エイミアは学園へ入学する。  そして敵が現れたのでした。  中編くらいになるかなと思っております! 長い沈黙を破り!忘れていたとは内緒だぞ!? ヒドインが完結しました!わーわー!  (*´-`)……ホメテ……

完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。 調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。 裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」 なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。 後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。

【完結】初恋の彼が忘れられないまま王太子妃の最有力候補になっていた私は、今日もその彼に憎まれ嫌われています

Rohdea
恋愛
───私はかつてとっても大切で一生分とも思える恋をした。 その恋は、あの日……私のせいでボロボロに砕け壊れてしまったけれど。 だけど、あなたが私を憎みどんなに嫌っていても、それでも私はあなたの事が忘れられなかった── 公爵令嬢のエリーシャは、 この国の王太子、アラン殿下の婚約者となる未来の王太子妃の最有力候補と呼ばれていた。 エリーシャが婚約者候補の1人に選ばれてから、3年。 ようやく、ようやく殿下の婚約者……つまり未来の王太子妃が決定する時がやって来た。 (やっと、この日が……!) 待ちに待った発表の時! あの日から長かった。でも、これで私は……やっと解放される。 憎まれ嫌われてしまったけれど、 これからは“彼”への想いを胸に秘めてひっそりと生きて行こう。 …………そう思っていたのに。 とある“冤罪”を着せられたせいで、 ひっそりどころか再び“彼”との関わりが増えていく事に──

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

処理中です...