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しおりを挟む『ソフィアも知ってるとは思うけど毒には色んな種類があるだろ? 命を奪う物から身体に不調をもたらすだけの物。そして、効き目の早さ。これも種類によって違う』
フニフニフニ……
ロディオ様はそう言って毒の説明を始めた。
『今回、ソフィアが飲んだのは即効性の毒だった。この毒は量を飲みすぎると危険だけど、少量なら重症にはならない。どうやら、ソフィアはすぐ吐き出してたみたいだね。だから大事には至らなかった』
フニフニフニフニ……
それはあの時、味がおかしい。いえ、この味を知っている……そう思ったから……
『一方のマッフィーの飲んだ毒は遅効性の毒だった。少量摂取だと少し体調が悪くなる程度。ただし、この毒は長く摂取し続けると、どんどん中から体内を蝕んでいく。そういう特徴を持った毒だ』
フニフニフニフニフニ……
『ソフィア。マッフィーは本当はこっちの毒を君に飲ませるつもりだったんだと俺は思っている』
フニフニフニフニフニフニフニ……
『ソフィアに毒を飲ませている間に、婚約者の座を手に入れて、結婚した頃にソフィアが力尽きる。そうすれば……』
私の遺産はマッフィー様の物になる、という事ね。
フニフニフニフニフニフニフニフニフニ……
『ソフィアの体が毒に蝕まれてどんどん病んでいってもマッフィーは夫という立場からうまい事を言って医者に見せるのを拒否させればバレることは無い。そうしてソフィアが弱っていくのをひたすら待つ。そんな計画だったと俺は思っている』
私が死んだ後に、私が毒を飲まされていた事を知り、悲劇の夫になるつもりだったと。
もちろん、毒を仕込んだ犯人は今回のようにメイドに押し付けるつもりで。
フニフニフニフニフニフニフニフニフニフニ……
『即効性の毒入りのお茶まで用意していたのは、カモフラージュ目的と、最悪、確実に最後のとどめを刺すのに使うつもりだったんじゃないだろうか』
フニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニ……
要するにマッフィー様は、この遅効性の毒を私に飲ませ続けている間に私との婚約、そして結婚の話を進める。
婚約中にさっさと私に手を出すなりすれば結婚の予定も早まる。
(内気で大人しく出しゃばらない私なら簡単に丸め込んで純潔を奪える。そう思っていたのでは?)
フニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニ……
もし、そうなれば今から半年後くらいには夫婦となっていてもおかしくはない。
でも、ずっと何も知らずにマッフィー様から毒を飲まされ続けていたであろう私の体内は、その時点で既にかなり毒に蝕まれていて、そのまま弱っていった私が自然と死ねば……もしくは、もう一つの毒でとどめを刺すなりすれば……
(この世界……この国の法律では既に夫となっていれば、私の遺産は全てマッフィー様の手に渡る)
そんな時間をかけた私の殺害計画の始まりが、あの日のお茶会だったということ……
でも、メイドの仕業なのかマッフィー様のミスなのかは分からないけれど、私が飲んだ毒は即効性の毒だった。
私に遅効性の毒の摂取を開始させるはずが、失敗し更には私との婚約も断られている。
つまり、今、マッフィー様の計画は完全に頓挫している状態──
フニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニフニ……
────……
「……」
今思い出しても、とても大事で真剣な話をしていたのに、間に余計なふにふにが入って全く集中出来なかったわー……
なぜあの大真面目な話の最中にふにふにを止めようとしなかったのよ、ロディオ様……
そして、今一度頭の中でロディオ様の話をまとめようとしても、やっぱりふにふにが邪魔をする。
これはどう考えても完全に私の頭の中がふにふにに毒されている証拠よ。
(どうしてくれるのよ、ロディオ様!!)
「それにしても、遅効性の毒ねぇ……さすがにそれは飲まされてても気付けないわ。でも、即効性の毒は味が……」
───……“前世の私”が飲まされたから知っている。かつての“私”はそれで命を落としている。
「何の因果かしらね。かつて毒殺されて命を落とした人間が、再び毒殺される運命の人間に転生するって……」
今回、マッフィー様に毒を飲まされる前のソフィアは、まだ前世の記憶を思い出してはいなかったけれど、一口飲んだ時、知っている味だと本能で身体が拒否をしてすぐに吐き出した。
……目覚めた時、私の記憶は混乱していたけれど、時間が経った今なら分かる。
私はあの毒を飲んだ瞬間、前世を思い出していた。
そしてあの時、自分の目の前にいたマッフィー様を見て思ったのよ。
──私はこの人に殺されるって。
だけど、倒れる時も思ったけれど一つだけ分からない。
小説の中のソフィアが飲んだ毒は即効性の毒。こんなジワジワと真綿で首を絞めるような殺され方では無かったはずだ。
(何故、変わってしまったの?)
「……」
考えても答えは出なかった。
「それにしても……これは前世の私が毒殺されてて、良かったと思うべきかしら? なんてね」
前世とはいえ、飲んだ事が無ければ毒だなんて気付かなかったかもしれない。
でも、私は二度と毒殺されるなんてごめんだ。
マッフィー様……いいえ、マッフィーの野郎の思い通りになんてさせない!!
そして同時に思う。
「……見返りのふにふにはちょっとアレだけど……やっぱりロディオ様と婚約してると言うのは心強いわ……」
少なくとも遅効性の毒を仕込まれて身体を蝕まれていく危険性は無くなった。
「ロディオ様の婚約者でいられるうちにマッフィーの野郎を捕まえれば……私は死なない! ヒロインさん! 申し訳ないけどそれまではロディオ様を貸してね?」
ちょっと困った性癖は持ってるけど、ロディオ様は頼りになる人だから。
だから、半年間だけ……物語が本当に開始するその日までロディオ様を私に貸してほしい。
──ズキッ
ヒロインの事を思うとまた胸の奥が痛んだ気がしたけれど、深く考えたら負けだと思って気にしない事にした。
*****
それから数日後。
フニフニフニ……
「メイドが口を割らないらしい」
「意外と強情だったか」
「何を聞いても「私は知らない」の一点張りだそうだ」
フニフニフニフニ……
お父様とロディオ様が、毒殺未遂事件の件を話し合っている。
そして、何故か私はロディオ様の腕の中に囲まれてふにふにされながらその話を聞いていた。
(何で……当たり前のようにこの体勢になってしまうの?)
部屋に入ってすぐ、流れ作業のように抱き込まれた。
「マッフィー殿は?」
「マッフィーは知らぬ存ぜぬを貫いている」
フニフニフニフニフニ……
「はぁ……これは、ソフィアの頬をフニフニでもしないとやってられない」
「ロディオ様!?」
ロディオ様の弱音なんて珍しい。私は心配になる。
「そうですか。どうぞ、至らない所も多い娘ですが存分にフニフニしてやって下さい」
「お父様!?」
「男爵……!」
それは、私がお父様に売られた瞬間だった……
フニフニフニフニフニフニ……
「……そうだ、ソフィア」
「な、何ですか……」
お願いだからお父様の前では唇でふにふにはしないで欲しい。
そんな思いで返事をするとロディオ様は意外な事を言った。
「ちょっと気分転換にー……」
「気分転換?」
「デートをしよう!」
「はい?」
フニフニフニフニフニフニフニフニ……
後に、街ゆく人が三度見はしたと言う“ふにふにデート”のお誘いだった。
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