【完結】このたび殿下の婚約者となった身代わりの身代わり令嬢な私は、愛されない……はずでした

Rohdea

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身代わりが戻って来た! (エリザベス視点)

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  殿下が王宮を留守にすると聞いてから数日、ようやく殿下が帰って来たらしい!
  私は、急いで殿下を出迎えた。

「おかえりなさいませ、殿下!  私、寂しかったで……」
 
  殿下は私を一瞥すると「あぁ……」っていう顔をした。

  (だから、何でそんな顔になるの!?  私の事好きなのよね!?)

  あぁぁ、今すぐ怒鳴り散らしたい!!

「そうだ、エリザベス嬢」
「は、はい!」

  ついに殿下がこっちを見たわ!
  私は嬉しくて笑顔で答えた。

「もうすぐ、王太子妃教育の総復習の日だけど問題はないよね?」
「え」
「日程も前に言ったままで進めるよ。あと、これは父上……いや、陛下からのお達しで万が一合格点に満たなかった場合は婚約者変更も有り得る……そうだ」
「!?」

  な、な、なんですってぇ!?

「まぁ、エリザベス嬢のこれまでの勉強の成果を考えたら不合格はないと思うけどね」
「と、当然ですわ……」

  ホホホと笑いながら自分の顔が引き攣っているのが分かる。

  (どうしよう……時間が無い……)

  お父様からあの身代わりが見つかったという報告は聞いていない。
  お父様には見つかり次第連れて来て!
  とお願いはしているけど間に合うのかしら?

  私はただただ焦るばかりだった。


***



「あぁぁ、もう!  こんなお茶、不味くて飲めないわよっ!」

  殿下が戻って来て数日後。
  相変わらず誘っても誘ってもつれない殿下に苛立ちが募った私は今日も使用人に当り散らす。


  (身代わりが見つからないなら、既成事実を作る! これしかないのに)


「も、申し訳ございません」
「いいからさっさと取り替えて来なさい!!」
「は、はい」

  その使用人は慌てて部屋を出て行く。

「ったく、どいつもこいつも使えないわね」

  相変わらず未来の王妃を敬う姿勢すら見えないし!
  
「……失礼します、新しいお茶をお持ちしました」
「遅いわよ!  何をグズグズしていたのよっ!」
「……申し訳ございません」

  あら?  さっきの使用人と違うわね。
  別の人間に交代したようね。さて、コイツは使えるかしら~?

「さっさと用意しなさいよ」
「承知しました」

  そう言って新しい使用人はお茶の準備を始める。
  
「お待たせ致しました、どうぞ」
「本当よ!  全く!!」

  さて、この女にも当り散らしてやろうー……

「申し訳ございませんでした、エリザベス様」
「?」

  は?  まだ、何もしていないのに何謝ってんの? 
  そんな目で使用人の女を見ると、その女は私を見て言った。

「私です、エリザベス様」
「は?」

  そう言ってその女は頭に手をやると被っていた髪……どうやら鬘だったらしい……を取った。
  黒髪の鬘の下から出てきた髪は私と同じ色ー……

「あ、あなた!!」

  逃げたと聞いた、身代わりの異母妹ではないの!!

「申し訳ございませんでした、再び入れ替わるようにと言われ戻って参りました。どうやら王太子妃教育の総復習があると聞きまして」
「あら、話は聞いたのね?  逃げ出したと聞いたから戻って来ないと思ったわ!」
「本当に申し訳ございません……改めて考え直し、こうして戻りまして、どうにか使用人として紛れ込んでおります。侯爵様からも、今回の再びの入れ替わりを滞りなく行えば不問に処するとのお言葉を頂いております」
「ふーん、そうなの?  へぇ、お父様がねぇ……」

  でも、あれよね。
  今回の総復習の件を乗り越えて今度こそ用済みになったら、多分躊躇なく捨てるでしょうけど!
  まぁ、そんな事はどうでもいいわ。今はコイツと入れ替わる事だけ考える。

  (私の役に立つ為だけに存在しているのだからね!!  役に立って頂戴!)

  それで、無事に合格点を取れれば問題は無い!

「それで?  どうやって入れ替わるつもりなの?」

  前回とは違う。
  今すぐこの場で入れ替わるのは無理がある。
  まさか、この私に使用人のフリをして生きろとは言わないわよね!?

「エリザベス様、王宮内にある離宮をご存知ですか?」
「離宮?」
「あまり使われていない所らしいのですが、あそこは人も滅多に来ないそうですから」
「どういう事?  私にそこへ行けと言うの?」
「はい」

  身代わり妹は、頷いて説明を始めた。

「要するに……私が殿下に離宮に行ってみたいと言ってこれから離宮に赴き、そこで入れ替わろうというわけ?」
「人目にはつきにくくて良いかと」

  まぁ、それならこの場で今無理やり入れ替わるよりはマシかしら?
  使用人の服なんて死んでも着たくないもの。

「あぁ、エリザベス様。どうせならそのまま離宮で寝泊まりしたいと申し出るのはいかがでしょう?」
「は?」
「本物である“エリザベス様”はそのままずっと離宮に滞在していただき、私はエリザベス様をお世話する使用人と“エリザベス様”のフリを使い分けて過ごそうかと思います」

  どういう事?

「エリザベス様の寝泊まりする場所を離宮に移せば、私は日中はエリザベス様として王宮で過ごし、朝晩だけ使用人に変装して過ごせばおかしな事にはなりません」
「えっと?」

  ちょっと待って?  ややこしいわね……

「入れ替わった後、王宮を抜け出して侯爵家に戻るよりは危険が少ないかと思います」
「上手くいくわけ?」
「……日中のエリザベス様が離宮で私が一人で動くので問題ないかと」
「……」
「それに、テストまでの数日間の辛抱ですから」

  ……難しい事はよく分からないけれど、身代わり妹が一人で私のフリと使用人のフリを使い分けて生活するという事よね?
  で、私は黙って離宮に滞在していればいい。そういう事よね??

「もう、何でもいいわ。そのかわり……私の代わりに受けたテスト、絶対に合格しなさいよ!?」
「……勿論です。全力を尽くします。あぁ、エリザベス様。これは。ですから、エリザベス様もくれぐれもなどと思わないで下さいね?」
「分かったわよ!  数日間は大人しくしているわよ!」


  こうして、私は殿下に離宮で寝泊まりしたい事を話し許可を得た。
  そして使用人の格好をした身代わり妹を私のお世話係の1人にも任命して離宮に向かい再び入れ替わった。


   (やっぱり運は私に向いている!)

  離宮で大人しく過ごせとかちょっと腹立つけど、この先にある未来を考えれば些細な事よ!!

  ふふ、このタイミングで身代わりが戻って来るなんて!  
  やっぱり私はついているわ!


  全てが上手くいっている。
  この時の私は、そう信じて疑っていなかった──……

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