【完結】“元”旦那様、今世は白い結婚を所望します ~結婚式で前世を思い出したら~

Rohdea

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19. 最期の記憶 ②

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 離婚してからの玲音おれは、新菜とは連絡も取っていなかったし直接会うことはなかった。
 彼女のこれからの幸せを願うだけで二度と会うことはないだろうと思っていた。
 しかし……

『嘘をついていたあの女が身ごもっている子どもの父親は───新菜の幼なじみ?』 

 いったい何故、自分がはめられたのか探偵を使って調べていた俺はその調査結果を聞いて愕然とした。

『あの女が新菜に嘘をつく時に見せていたという寝ている俺の画像とやらは、俺の友人から横流しされた写真だったし……』

 その画像を勝手に広めた俺の友人は少し前に新菜の幼なじみの男と知り合って酒飲み仲間になっていたという裏も取れていた。

『なんなんだ?  何を調べてもコイツが出て来るんだが……!?』

 あまりにもこの“十斗”という新菜の幼なじみの男が気になって調べさせてみた。
 そいつはある頃を境に自分の周囲の人間に接触していたことが分かった。

 ちなみに、俺をはめることに協力したあの女───亜芽莉はもともと会社の後輩だった女だ。
 新菜と結婚する前に告白されたことがあったが恋人(新菜)がいるからと断っていた。
 その後、彼女は仕事を辞めていたためその後は会ってもいなかったし、どうしているのかも知らなかったが。
 新菜との離婚後にこんなことをした理由を聞いたら、
 “こうすれば俺と結婚出来る”と唆されたという話をしていた。

『目的は俺たちを離婚させるため……?』

 新菜への幼なじみ以上の執着を感じ取った俺は青ざめた。

『こんなのストーカーじゃないか!』

 新菜がその幼なじみの男をストーカーだと認識している様子は見受けられない。

(────新菜!)

 そうして新菜の身が心配になった俺は何度かこっそり様子を覗きに行ったことがある。
 その点では俺もストーカーの部類に入るだろう。

(離婚するんじゃなかった……)

 俺の不貞の証拠は捏造だったことを証明して抗うべきだった……
 “夫”という立場があれば新菜を守れたかもしれないのに。

 ────そんな俺の警戒はよそに新菜は新しい生活を穏やかに過ごしている日々が続いた。

 幼なじみの男が新菜に接触している様子はない。
 俺たちを離婚させられれば満足だったのか……?
 なんて思った俺は甘かった。

 アイツは新菜の前に姿を現さないだけでしっかり執着していた。
 出産を終えたあの女にも会っていた……

 そして─────


✤✤✤✤



 過去の……前世の記憶みたいなものが頭の中で映像のように流れている。

(────ああ、そうだ)

 思い……出した。
 それは本当に一瞬の出来事だった。
 いつものように家を出て会社に向かって仕事して。
 その帰りの電車のホーム。
 今日は新刊の発売日だったから最寄りの駅に着いたら本屋に寄って……なんて考えていた時だった。

『────新菜さん』
『!!』

 聞き覚えのある声にドキッとして振り返った。
 そこに居たのは玲音の相手の亜芽莉さん。

(え?  なんで彼女がここに!?)

 わざわざ玲音との再婚報告にでも来たわけ?
 そう身構えた。
 だけど、すぐに彼女の様子がおかしいことに気付いた。
 雰囲気は暗くて、ブツブツと何かを呟いていた。
 それは“好きな人の子どもを産んで幸せな女性”には到底見えず、むしろ────

 電車がホームに入ってくる音と、“お前のせいだ”という怨念のこもったような彼女の声と突き飛ばされた感覚、
 そして……

 ────……な、新菜ーーーー!!

 必死に私の名前を叫んでいた大好きだった人の声──────……


 パチッと目が覚めた。
 見慣れない天井に内心で首を傾げる。

「……あ、そっか」

 また酷い頭痛がして倒れたんだっけ……と思い出す。
 でも、もう頭は痛くない。

(曖昧だった部分の記憶を思い出したからかな……)

 はぁ……と夢の内容を思い出してはため息を吐く。
 最期のあの時、必死に私の名前を呼んだのは……間違いない、玲音。

 ──どうしてあそこの駅にいたの?

(もしかして、私のことを心配してくれて────……)

「あ!」

 そこで自分の手に感じる温もりに気付いた。
 この覚えのある感じ……
 チラッとベッド脇に視線を向ける。

「やっぱり!  既視感!」

 前の時と一緒。
 レオン様は私と繋いだ手はそのままの状態でベッドの端に顔を突っ伏して眠っていた。

「そして、今回も寝づらそうな体勢だし……そして」

 私はじっとレオン様のつむじを見つめる。

「本当に手を離そうとしないのね?」
「……」

 スースーと今回も寝息が聞こえる。

「…………あなた、私を助けようとして一緒に飛び込んだでしょ?」
「……」
「それであなたも…………っ」

 涙で滲んでしまってレオン様のつむじがぼやけてしまう。
 バカ……!  
 あなたは大バカよ……!
 でも……

「好き……」

 自然と口からその言葉がこぼれる。 
 私はギュッとレオン様と繋がっている手を握り返す。

「レオン様も玲音も……全部引っくるめてあなたが……好き、大好き」
「……」
「私を守ろうとして、追いかけて来てくれて───ありがとう。レオン」

 と、ここまで口にしたところで、この大事な言葉は眠っている時ではなく起きている時にしっかり伝えるべき言葉だと気付く。

「早く起きてよ……」
「……」
「前世は悲しい形で終えてしまったけど今度こそ───」

 そこまで言いかけたところで、“あの二人”はどうしたのだろう?  と思った。
 倒れる寸前までだとアメリアに記憶が戻った様子は無かったけれど……

「何が悔しいって前世の罪がここでは問えないことよね」

 今世での二人が私にしたことは浮気と嘲笑と……
 そう考えたところで苦笑してしまう。

「でも、浮気してくれたおかげでレオンと結婚出来たわ。皮肉なものね……前世は浮気を偽装されてめちゃくちゃになって、今世は浮気のおかげで巡り会えた」
「……ん」
「レオン……レオン様!?」

 ブツブツ独り言を呟いていたらピクッとレオン様の身体が動いた。

「…………二ー……ナ?」

 顔を半分くらい上げたレオン様は焦点があってないぼんやり顔で私の名を呼ぶ。

「ええ、ニーナよ」
「……ニーナ」
「!」

 レオン様がとびっきり嬉しそうに笑うものだから胸がドキッとした。

(夢現の今、ちょっと襲っちゃおうかしら?)

 そんな悪戯心がムクムクと私の中に湧き上がってくる。

「…………レオン様」
「二ー……」

 チュッ!
 起き上がった私はレオン様の顔に自分の顔を近づけて頬にキスをする。

「ーナァァァ!?」

 目をパチッと大きく開いたレオン様が叫ぶ。
 そして私たちの目が合う。

「あら?  もう覚醒?  おはよう、レオン様」
「おはよう───じゃない!  ニーナ!  今、君は何を……」

 レオン様が思いっきり動揺している。
 イケメンがアタフタしているその姿がとても可愛くてクスッと笑ってしまう。

「何って頬へのキス……」
「キッ……!!?」
「───レオン様」

 私は笑みを消して真剣な顔をレオン様に向ける。

「ニーナ?」
「……色々とあなたに聞きたいことは沢山あるの。前世でのことの答え合わせもしたいし、あの二人はどうなったの?  とかね」
「ああ」

 レオン様がしっかり頷く。

「でもね?  まずは一番初めににあなたに言わなくちゃいけないことがあるの」
「……一番に?」
「ええ」

 怪訝そうな様子のレオン様に向かってふふっと微笑むと彼の手を取ってギュッと握りしめた。

「────私は、あなたのことが大好きです、旦那様」
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