【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea

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9. 異変

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「……オリヴィアも一緒に行くか?」
「え?」
「我が家の領地」

  切なそうに笑っていたヒューズが何か考え込む様子を見せたと思ったら、突然そんな事を言って来た。

「私も?」
「父上と母上と顔を合わせていない事を気にしていたから……と思ったんだが」
「それは……確かに挨拶はしたいと思っているけれど」

  見送る気満々だったので、まさか一緒に行こうと言われるなんて思ってもみなかった。
  驚きを隠せずにいる私に対してヒューズはまだ、どこか切なそうな顔をしている。

「…………それに、今、オリヴィアを一人にするのは……不安だ」
「不安?」

  私が留守番も出来ないお子様だとでも言いたいの?
  そんな気持ちでヒューズを見たら彼は難しい顔をしていた。

  (何でそんな顔を?)

  ヒューズがそんな顔をしていた理由はすぐに分かった。
 
「ヨーゼフ殿下の事だよ。俺がいない間にまたオリヴィアを呼び出すかもしれないだろ?」
「あ……」
「むしろ、俺が傍にいない事を知った殿下は、間違いなくオリヴィアを呼び出すだろうよ。何かあっても領地からはすぐに駆け付けられないし」
「……」

  確かにあの殿下の様子だと有り得そうな事だ。

「……ヨーゼフ殿下は今更、何がしたいのよ……」
「……」

  そんな私のぼやきにヒューズは難しい顔をしたまま答えてはくれなかった。



◇◇◇◇◇



「……えっと、どうしてこうなるの?」
「別におかしな事では無いだろう?」

  私の疑問に対して、明らかに開き直った様子のヒューズがそう答える。

「いえ、おかしいと思うわ!」
「おかしくはない!」
「いいえ!」
「何だと!?」

  こうして、私達のいがみ合いが開始した。



  結局、私はヒューズと一緒に領地へと行く事に決めた。
 
  (ヒューズと一緒に……胸がドキドキするのは何で……?)

  決して、一緒に出かけられる事が楽しみだから。そんな理由では無い!
  と自分に言い聞かせて馬車に乗り込んだら、今回もヒューズは向かい側ではなく私の隣に腰を下ろしていた。

  それをどうして?  と咎めたら言い合いに発展してしまったのだけど。

  (本当に何やってるのかしら……)

  こんな馬鹿みたいな言い合いではなくて、本当に話さなくてはいけない事はたくさんあるはずなのに。

  そんな事を考えていたら、ヒューズが突然声を張り上げた。

「オ……オリヴィアに事は分かったから、少しでも触れていたいんだよ!」
「え?」

  そう顔を赤くして怒鳴ったヒューズは座った姿勢のまま、腕を回して私を抱き寄せる。
  私はヒューズの胸の中に飛び込む形になってしまった。

  (!?)

「触れる事も出来ない……の…………だとずっと思っていた!  でも違った。だから……」
「ヒュ、ヒューズ!?」
「少しでもオリヴィアに……あ……妻に触れていたい」
「??」

  完全に話が見えない。何の話をしているの?

  (あと、所々にある変な間はいったい何……?)

  ヒューズの口にする言葉にたまに妙な間があるのは再会してからも感じていたけれど……
  これはさすがに何だか不自然な感じがする。

「……ヒューズ、あなたやっぱりおかしい」
「そうだな。自分でも分かっている」
「!」

  そんなにあっさり認めるのかとこっちが拍子抜けしてしまう。

「5年前から……」
「え?」

  “5年前”というフレーズに私の胸がドキッとする。

「思うようにいかない事ばかりなんだ」

  ヒューズがそう呟きながら、何故か私をギュッと抱きしめてくる。

「ヒューズ?」
「……ずっと理由が分からなかった。分からなくて苦しくて……合わせる顔がなくて……自暴自棄になっていた俺は、命じられるがまま家を離れた」
「……ねぇ、何の話?」

  話が見えない上に、ヒューズの声が震えている。
  今、彼はどんな顔をして話をしているのだろう。

「俺が弱くて情けないという話だ。ようやく全てを知った頃には……何もかもが手遅れだった……でも」
「でも?」
「オリヴィアは今、ここにいる……」
「私……?」

  そう言ったヒューズの私を抱きしめる力が更に強くなった。
  苦しいくらい。

「……オリヴィア」
「な、何?」
「…………俺の事は嫌いで構わない。だけど、そばにいて欲しい」
「っ!」

  なんて要求をするのよ。意味が分からない。

「ヒューズ、あなた……無茶苦茶な事を言っている自覚はある?」
「……ある」

  ヒューズは迷うこと無くそう答えた。

「すまない、オリヴィア。俺のあ…………重いんだ」
「??」

  また、不自然な間があった。何が重いのよ!?  私の事じゃないわよね!?

「ヒューズ、あなたの言っている事が時々よく分からないわ」
「すまない」
「私は謝って欲しいわけではなくて!」
「分かっている!  だが、今はこれしか言えないんだ……すまない」
「……」

  そう言われてしまった私は何も言葉を返せない。

「…………じゃあ、話を変えるわ。ねぇ、ヒューズ。さっきあなた、命じられるがまま家を離れたと言っていたけれど」
「あぁ」
「それって、5年前よね?」

  あなたはある日、暴言を吐いた後、居なくなった──

「命じたのは誰なの?」
「……ヨーゼフ殿下」
「!」

  また、ここであの王子かと頭を抱えたくなる。
  でも、そんな事よりも今は聞きたい。ヒューズはずっと……

「……どこに行っていたの?」

  私はおそるおそる訊ねる。

「辺境伯領……国境付近だな」
「え!」

  驚いた私は思わず身体を離してヒューズを見つめる。

「ぶ、無事だったの!?」
「何を言ってるんだよ、無事だったから今、俺はここにこうしているんだろ?」
「……!  そ、それはそうだけど……」

  ヒューズの話が本当なら、当時、国境付近の辺境伯領は隣国との関係が悪化して戦闘や小競り合いを繰り返していた。今は休戦している。

  (そんな所に行くようにと、ヨーゼフ殿下がヒューズに命じたの?  どうして?)

「……休戦して、ようやく帰れるとなった頃に……オリヴィアがヨーゼフ殿下に婚約破棄された事を知った……だから俺は急いで戻った」
「ヒューズ……」

  (む、胸が……ドキドキする)

  それは、まるで“ヒューズが私と結婚したかったから急いで戻って来た”と言われているように聞こえたから。
  ヒューズは私の事を嫌いなはずなのに……

  (困る……そんなの……困るわ)

  私の心はより一層落ち着かなくなった。



◇◇◇◇◇◇



「あ、ヒューズ!  あそこにヒューズの好きな串焼きの屋台があるわよ」
「え?」

  私達は途中で休憩を取る事になり、そこで立ち寄った街の中に屋台があった。
  その中に私はヒューズの好きだった串焼きの屋台があるのを見つけた。

  (平民のフリをして二人でよく街に行った時に食べたのよね)

「あぁ、本当だな」
「ヒューズ食べたい?  買っていく?」

  私が訊ねると、ヒューズは苦笑いをした。

「オリヴィアが食べたいだけだろ?」
「……な、なんで分かったの!?」
「言っただろ?  オリヴィアは分かりやすいんだって」
「……うっ!」

  図星を指された私は赤くなる。

「ははは、さすがオリヴィア。顔が赤くなったな。か───……っ」
「ヒューズ?」
「……っ」

  ヒューズが、口元を押さえたまま黙り込む。
  まただ。また、ヒューズは変な所で言葉を切る。

  (やっぱりどこかおかしい……?)

  モヤモヤしながらも私は話を続ける。

「い、いいのよ!  美味しいもの。ヒューズだって好きでしょう?」
「俺は嫌いだ」
「え?」

  私は思わず自分の耳を疑った。
  ヒューズは今、なんて言った……?

「?  何だその顔は。オリヴィアが言ったんだぞ?  だから、俺は昔からあの串焼きは、き───……あっ」

  ヒューズは明らかに動揺してその場に固まった。

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