【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea

文字の大きさ
11 / 27

10. 考えても考えても分からない

しおりを挟む


「……」
「……」

  私達は互いに言葉を発せずに黙り込む。

  (今のはどういう事?)

  私の知ってるヒューズはあの串焼きは好き。
  今だって変わらず好きそうな素振りをみせていたのに“嫌い”だと口にした。
  何で?

「オリヴィア」
「……」

  私がおそるおそる顔を上げるとヒューズは、優しく私の頭を軽く撫でて「買ってくるよ」とだけ言って屋台に向かう。
  そんな彼の背を見ながら私は思う。

  (ヒューズ……絶対に何かがおかしい)

  ──5年前から思うようにいかない事ばかり。
  さっきそう言っていた。

  何か特定の言葉だけ言えない?  それとも意思に反しておかしな言動になる?
  だとしたら、いったいヒューズの身に何が起きているの───?
  それなら、ヒューズの本当に言いたかった事は───?

「……手紙」

  そこで私はハッと気付く。

  もしかして、私が読まないまま失くしてしまった手紙にはこの様子がおかしい理由が書かれていたんじゃ?
  口で説明出来ないから文字で伝えようとしたのかも──……

「だとしたら、私……最低だわ」

  (何で放置してしまったの)

「……いえ、待って。でもそれなら、?」

  言葉にするのは無理でも文字で伝えられるのなら、あんなに苦しそうな顔をして「すまない」と言うばかりではなく説明してくれればいい事なのに……

「まさか、それすらも……出来ない?  なら、手紙は関係無い?」

  それでも、ヒューズは私が手紙を読んでいなかった事にショックを受けていた。
  手紙にはいったい何が……

  考えれば考えるほど分からなくなる。   
  分かるのは、ただただヒューズの様子がおかしいという事だけ。

「オリヴィア」
「は、はいぃっ!」

  ぐるぐる考え過ぎていて、後ろから声を掛けられて思いっきり驚いてしまった。

「……すごい元気いっぱいな返事だな」
「ちょ、ちょっとね……」

  とりあえず誤魔化す。
  
「まぁ、元気なのはいい事だが。ほら、オリヴィアの分だ」

  そう言ってヒューズは、私に串焼きを渡してくれる。
  私はそっとそれを受け取る。

「あ、ありがとう……」
「……懐かしいな」
  
  ヒューズが眩しいものでも見るかのように目を細める。

「オリヴィアとこっそり出かけて二人で食べてさ。母上にバレた時は、かなり怒られたけど美味しかったな」
「貴族として褒められた行動ではないものね」
「そういう事だ。でも、楽しかった」
「ふふ」

  ヒューズがあまりにも懐かしそうに笑うから、私もつられて笑う。

  (私との思い出をそんな顔で語ってくれている……)

  私の事を本当に嫌いだったなら、そんな顔をするものかしら?

  (しないわ、きっとしない……)
  
「どうした?  食べないと冷めるぞ?」
「そ、そうね……」

  私は、えいっとかぶりついた。
  心の中のモヤモヤは完全には晴れないけれど、 久しぶりに食べた串焼きは、あの頃と同じ味のような気がした───



◇◇◇◇◇



  モヤモヤした気持ちを抱えたまま、私達は領地へと着いた。


「久しぶりね、オリヴィアちゃん 」
「ご、ご無沙汰しております」

  ヒューズの両親、侯爵夫妻に会うのも5年ぶり。当時は良く顔を合わせていた。

  (よ、嫁として再び顔を合わせるのは変な感じ……)

  私は少し緊張した面持ちで挨拶をした。
  挨拶を終えた後はヒューズは父親の侯爵様に話があると言って二人で部屋から出て行ったので、私はお義母様となった侯爵夫人とお茶を飲みながら話をする事になった。



「ヒューズが、辺境から戻って来たと思ったら突然オリヴィアちゃんと結婚するなんて言い出した時は本当に驚いたわ。え? あのオリヴィアちゃんが相手なの?  って」
「あ……」
「オリヴィアちゃんも色々あったものね……あ、ごめんなさい。無神経だったわ」
「いえ、気にしないで下さい」

  ヒューズとの事に比べれば、ヨーゼフ殿下からの婚約破棄なんて些細な事に思えてしまう。

「ところで、オリヴィアちゃん。ヒューズは……」 
「ヒューズが何か?」

  夫人……お義母様が心配そうな顔をする。
  何かあったのかと私も顔を顰める。

「いえ、5年前からあの子、少し様子が変わった気がして」
「!」

  ──また、5年前!

「あんなに、毎日オリヴィアがオリヴィアがと煩いくらい口にしていたのに、パッタリと口にしなくなったし……」
「ま、毎日、ですか?」
「そうよ、オリヴィアちゃんの話を聞かない日は無かったわ」
「……」

  何だか一気に恥ずかしくなった。煩いくらい毎日ってどれだけ……
  私の顔が赤くなる。

  (だって、そんなのって……まるで……ヒューズが私を……)

「っ!」

  ダメダメ……そんな勘違いしてはダメ。と必死に自分に言い聞かした。

「あ、あの……ヒューズは5年間、辺境伯領に行っていたと聞きました」
「ヒューズから聞いたのかしら?  そうなのよ。驚いたわ……」

  お義母様は、はぁ……とため息を吐いた。

「ある日、突然ヨーゼフ殿下から命じられて行く事になっていたわ……」
「……」
「その前から少しヒューズの様子がおかしいから気にはなっていたのだけど、ヒューズも断る事をしないで、そのまま行ってしまったのよ」
「……」

  (ヨーゼフ殿下……侯爵家の跡取りを危険な場所に行かせるなんて!)

  普通では考えられない。
  殿下はいったい何を考えていたの?
  私の中でどんどん殿下への怒りが溜まっていく。

  と、そこまで話をした時、

「ヒューズ、頼むからそんなに落ち込まないでくれ」
「……」

  二人で席を外していた侯爵様とヒューズが戻って来た。
  侯爵様はどこか申し訳無さそうな様子。一方のヒューズは明らかに落ち込み、肩を落としていた。

「どうしてお前があれを必要としているのかはよく分からないが、今は切らしていて無いんだ」
「……」
「少し時間はかかるが、手配が出来たら送ってやるからそれまで待て」
「……お願いします、父上」

  どうやら、ヒューズが領地に戻った理由の“個人的なお願い”は上手くいかなかった様子。
  そう言って侯爵様にお願いするヒューズの顔はかなり落胆していた。

 
しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。 ※本作品は別サイトにて掲載中です

殿下、私以外の誰かを愛してください。

八雲
恋愛
公爵令嬢ラブリーは、第一王子クロードを誰よりも愛していました。しかし、自分の愛が重すぎて殿下の負担になっている(と勘違いした)彼女は、愛する殿下を自由にするため、あえて「悪役令嬢」として振る舞い、円満に婚約破棄されるという前代未聞の計画を立てる。協力者として男爵令嬢ミリーを「ヒロイン役」に任命し、準備は整った。

お飾りの私と怖そうな隣国の王子様

mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。 だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。 その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。 「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」 そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。 いつかこの日が来るとは思っていた。 思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。 思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。

愛しい人を手に入れるまでの、とある伯爵令息の話

ひとみん
恋愛
ペルソン伯爵令息レナードは、評判の悪い公爵令嬢メーガン・ティラーと婚約せざるおえなくなる。 だがその一年後、彼女の方から声高に婚約破棄を言い渡された。 理由は彼が「ドケチだから」と。 ようやく本当に愛する人を迎えに行けると、喜びを隠し切れないレナードと彼らを取り巻く人たちのお話。 流行りの婚約破棄ものを書きたくて挑戦。広いお心で読んでいただけたらと思います。 16話完結です。 ゆるゆるご都合主義ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。 なろう様、カクヨム様にも投稿してます。

処理中です...