【完結】自称“ヒロイン”の妹によると、私の婚約者は呪われているらしい ~婚約破棄される“悪役令嬢”だと言われました!~

Rohdea

文字の大きさ
3 / 26

3. 妹が言うには恋に落ちる出会いがあるらしい

しおりを挟む


  ──そもそも、呪いとは何なのかしら?
  私が知らないだけでよくある話だったりする?

  そう思った私は、屋敷にある本の中に何か呪いに関する事が書かれた本が無いかと調べてみる事にした。

  (そもそも、リオーナの言っている事がよく分からないのよね……)

  ヒロイン……つまり、それが物語などでの主人公の事を指すのは分かる。
  だけど、リオーナはどうして、あんなに自信満々で自分が主人公だと語れるのかがよく分からなかった。
  しかも、堂々と色々な事を語っていたわ。

  極めつけは……

「“悪役令嬢”だと言われたわ……」
 
  うまい言葉をくっつけたものね。ちょっと感心する。
  邪魔者の事を指すらしい悪役令嬢の私は、すなわち悪女……リオーナからすれば悪姉といったところ?
  何だか悲しい……

「リオーナに詳しく聞いても……きっと無駄よね」

  あの調子だもの。もっとおかしな事を言い出すかもしれない。
  そう思いながら、屋敷にある蔵書を手当り次第調べてみたものの、呪いに関して特に記述されている物は無く特に分かる事は無かった。

  むしろ……

「恋愛小説の方にあるわね……呪われた婚約者とか恋人とかの呪いを愛の力で解いて幸せになる話」


  ──アシュヴィン様の呪いはね、ヒロインの愛の力で解けるの


  リオーナは確かにそう言っていた。
  パラパラと試し読みをした恋愛小説の展開も、だいたいそんな感じだった。

「まさに物語……そして、愛の力」

  どうやらアシュヴィン様に嫌われてしまっているらしい私では難しそう。
  それとも、まだこれから頑張れば彼に愛される事もあるのかしら。

  (だけど、リオーナにはアシュヴィン様を譲りたくない……)

  うまく言葉に出来ないけれどあんな調子のリオーナとアシュヴィン様が結ばれるのは嫌だ。モヤモヤする。
  だけど、私とアシュヴィン様の婚約は家同士のものだから、本当にアシュヴィン様がリオーナを望めば……

「本当に婚約破棄されてしまう……?」

  私はプルプルと頭を横に振り、今考えた事を必死に打ち消す。

  (ジメジメ考えるのは性に合わないわ)

  素っ気無くされていても、今はまだ彼の婚約者は私なのだから。



◇◇◇



「さぁ、お姉様!  いよいよこの日が来たわ!」
「……そう、ね」

  翌朝のリオーナは朝から大興奮していた。
  その勢いは留まることを知らず、学園に向かう馬車の中でもずっとこうしてはしゃいでいる。

「今日は、とっても大事な日なの!  だからお姉様は邪魔しないでね?」
「は?」

  邪魔をする、とは?
  意味が分からなくて私が首を傾げると、
  リオーナは「もう!  なんで分かってくれないの!?」と怒り出した。

「あのね?  お姉様、今日私とアシュヴィン様はを果たすのよ」
「出会いってあなた達は一応、既に顔見知り……」
「そうではなくて。をするのよ!」

  恋に落ちる出会いってどんな?
  聞き返そうと思ったけれど、リオーナは勝手にどんどん喋り出す。

「……今日の放課後にね?  裏庭に迷い込んだ私はハンカチが風に飛ばされて木に引っかかってしまうの」
「え!」

  いったいこの子は何の未来を見ているの……

  それと、どこから突っ込みを入れればいいのかしら。
  何をしていたら裏庭に迷い込む?


「それで、私はその木に登ってハンカチを取ろうとするのだけど、降りられなくなって困ってしまうのよ」
「ちょっと待ってリオーナ?  さすがに木に登るのはダメでしょう?」

  危険だわ!  なんて事をしようとしているの!

「もちろん、分かっているわ!  でも木に登らないと恋が始まらないのよ!  アシュヴィン様はそんな私を見かけて助けてくれるのだから」
「……」

  木に登らないと始まらない恋って何なのだろう。
  恋ってそういうものだった?

  (違うわ……私がアシュヴィン様に惹かれた出会いはもっと……)

「私はアシュヴィン様に、貴族令嬢なのに木に登る“変わった女性”という印象を植え付けて興味を持ってもらわなくちゃいけないの!  そこから私に対して“婚約者の妹”以外の感情を持つようになるのよ!」
「……」
「だからお姉様!  くれぐれも今日の放課後、私の邪魔をしないでね?」
「邪魔するなって言われても……」

  そう口にするリオーナの目は本気だった……

  もう既に、私の中ではリオーナは充分“変わった女性”よ。
  そう思ったけれど面倒な事になりそうな気がしたので口には出さなかった。



◇◇◇




  放課後の私はいつも図書室に寄ってから帰る事を日課としている。
  リオーナの言う、アシュヴィン様との“恋に落ちる出会い”が気にならないわけではないけれど、私は裏庭に行くよりいつもの日課を選んだ。

  (邪魔しないでと言われてしまったし……余計な事を考えない様にまずは今日の課題を終わらせてしまおう!)

  そうして、いくつかの参考書となる本を手に取りいつもの定位置の席に座り、課題に取り組んだ。
  家だといつリオーナが突撃してくるか分からなくて集中出来ないし。



  一通りの課題を解いたあと、んー……と腕を伸ばし、何気なく窓の外を見て私は驚く。

「……え!  ここって!」

  (図書室の窓の下がリオーナの言う裏庭だったの!?)

  私のいる所の窓の外から見えるちょうど真下に何とリオーナが立っていた。

  (えぇぇ!  ……何をする事もなくただボーッと立っているのだけど!)

  その手に何かを抱えている様に見えるのは、まさか風に飛ばされると言うハンカチ?

  (ちょっと!  そんなにキツく握り締めていたら飛ばされないと思うわ!)

  伝わる事は無いと分かっていてもつい脳内で突っ込んでしまう。

  それにしても、何とも言えない光景だわ。
  リオーナはただボーッと突っ立っている。
 
  (辛うじて待ち合わせ……に見えなくもないかしら?)
 
  この後、ハンカチが風に飛ばされリオーナは木に登る事になるみたいだけれども……
  何だかハラハラしてしまって私はリオーナから目が離せなくなっていた。
  そんなリオーナの周りを見てみるも特に人気は無い。

  (とりあえず今のところはリオーナが木に登る様子も無いし、アシュヴィン様も来ていないわね)





  そうして、しばらく窓の外に視線を向けていると突然、後ろから声をかけられた。

「ルフォナ嬢」
「!」

  その声にドキッと胸が跳ねる。

  (う、嘘でしょう?  こ、この声は……まさか!)

  私がそうっと振り返ると、やっぱり思った通りの人物がいた。

「ア、アシュヴィン……様……?」
「……」

  そこには、(リオーナの話によると)この後、木に登るらしいリオーナの事をを助ける事になっているはずのアシュヴィン様が立っていた。

「!?」


  ──ちょっとリオーナ!  どういう事!?

  私の脳内はパニックに陥った。


しおりを挟む
感想 242

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

【完結】婚約破棄を3時間で撤回された足枷令嬢は、恋とお菓子を味わいます。

青波鳩子
恋愛
ヴェルーデ王国の第一王子アルフレッドと婚約していている公爵令嬢のアリシアは、お妃教育の最中にアルフレッドから婚約破棄を告げられた。 その僅か三時間後に失意のアリシアの元を訪れたアルフレッドから、婚約破棄は冗談だったと謝罪を受ける。 あの時のアルフレッドの目は冗談などではなかったと思いながら、アリシアは婚約破棄を撤回したいアルフレッドにとりあえず流されておくことにした。 一方のアルフレッドは、誰にも何にも特に興味がなく王に決められた婚約者という存在を自分の足枷と思っていた。 婚約破棄をして自由を得たと思った直後に父である王からの命を受け、婚約破棄を撤回する必要に迫られる。 婚約破棄の撤回からの公爵令嬢アリシアと第一王子アルフレッドの不器用な恋。 アリシアとアルフレッドのハッピーエンドです。 「小説家になろう」でも連載中です。 修正が入っている箇所もあります。 タグはこの先ふえる場合があります。

処理中です...