【完結】“便利な女”と嘲笑われていた平凡令嬢、婚約解消したら幸せになりました ~後悔? しても遅いです~

Rohdea

文字の大きさ
19 / 53

第19話 王子様からの連絡


◆◇◆


 ちょうどエミール殿下が、まさかのムキムキを目指して、この国の騎士団長に弟子入り志願しているなんて夢にも思っていなかった私は、ダーヴィット様の言葉を聞いて固まっていた。

(ま、まさか……!)

 ダーヴィット様の顔を殴ったのが、まさかのエミール殿下だったことに私は大きな衝撃を受けていた。
 ───子犬みたいだった殿下はどこに行ってしまったの?  実は子犬ではなかった?  本当は狂犬だったの?
 私の頭の中に子犬のような殿下の姿が浮かぶ。

(それに……エミール殿下はただでさえ皆に悪く言われてしまっているのに……どうして?)

 ダーヴィット様の子の様子から言って腫れた頬を浮気相手の令嬢たちに見せびらかしながら“エミール殿下にやられた”と絶対に言いふらす気がする。

(そんなの……嫌だ)

「───おい?  フィオナ?  どうした?  何を考えているんだ?」
「え?  あ……」

 私が犬……ではなく、エミール殿下のことばかり考えていたせいなのか、目の前にいるダーヴィット様が明らかに不機嫌になっていた。
 だって、あんなにも心優しい人が殴るなんて……ダーヴィット様はいったい殿下に何をしたの?

(相当、酷いことをしたに違いないわ!)

 だからこそ、私はどうしても聞かずにはいられなかった。

「あの……ダーヴィット様はなぜ、エミール殿下に殴られてしまったのですか?」

 その質問はあまりされたくなかったのか、ダーヴィット様の眉がピクリと反応した。
 そしてムッとした表情になる。

「なぜ、だと?  ふんっ、俺は婚約の報告をしに行っただけだ!  それで世間話をしていただけなのにあの王子に殴られたんだ!!」
「……」

(世間話ですって?)

 私は呆れた。
 要するにダーヴィット様は殴られてもおかしくないようなことを殿下に言った……ということ。

(……さっき、私とエミール殿下に面識があるかと聞かれたから、もしかして私の話もしたのかしら?)

 そんなことを私が考えていたら、ダーヴィット様は子供のように怒りだす。

「本当になんなんだ!  あの野蛮な王子は!  王子でなかったら訴えているぞ!」
「……」
「ったく、そんなだから、王位継承争いでは第一王子に圧倒的に差をつけられるんだ!」

(……ん?  王位継承争い?)

 何の話かしら、と思って訊ねてみる。

「王位って、どういうことです?」
「どういう……?  あぁ、ほら殿下たちは双子だろう?  だから昔はどちらが将来の王になるのか、貴族はどちらにつくべきなのかと王宮が真っ二つになって揉めていたそうだ」

 これはもう男兄弟……しかも双子の宿命のような気がする。

「……」
「まぁ、結局、第二王子のエミール殿下は性格も考え方も行動も難がありすぎて王の器じゃないってことで、今は第一王子一択となったらしいが!」
「今は第一王子一択……」
「当然だろう?  あんな野蛮な王子に王など務まるものか!」

 かつては周囲の意見が割れて揉めていたという二人の王位継承問題。
 それが今は一択に絞られた……

(それって、まさかエミール殿下は─────)

「あの阿呆っぷりを利用して傀儡の王にしようと企む者もいたそうだが──」
「傀儡!?」
「第一王子が見事に尽く始末しているそうだ」
「……!」
「とにかく、だ。俺は絶対にあの王子を許さない!」




 結局、ダーヴィット様は何がしたいのか分からないまま、「許さない」なんて言葉を残して、腫れた頬を披露するだけして帰って行った。
 全くもって同情の気持ちの生まれない怪我人だった……

(──殿下、私はもっとあなたの作った傷よりもボコボコにして見せます────……)

 そんな決意をしていたら……

「ん?」

(……ダーヴィット様が乗っている馬車の音の向かっている方向が公爵家の方じゃないわね)

 おそらく、別の令嬢の元を訪ねてよしよしと慰めてもらうつもりに違いない。
 ついでにエミール殿下にやられた、と被害者ぶるに違いない。

「……やっぱり彼女たちの前でダーヴィット様の本性を暴露させることも必要かしら……」

(女性はね、怒らせると怖いのよ?  ダーヴィット様……)

 そう呟きながら、私は着々と“その時”に向けて準備を進めることにした。



 そしてその日の夜───

「え?  エミール殿下が騎士団に混ざって訓練を始めた、ですか?」

 その日、王宮に行っていたお父様がそんな驚きの話を持ち帰ってきた。

「本当なんだ。昔から鍛錬とかそういうことは苦手で稽古の時間になると逃げ回っているような王子だったから驚いたよ」
「……ど、どうしてしまったのでしょう……?」

 私が訊ねるとお父様がうーんと考え込んだ。

「なんでも短期間でどうしても可能な限りで鍛えたい!  そう言って頼み込んだらしい」
「ふふ、鍛えたいだなんて……お父様が聞いたら飛び跳ねて喜びそうな話ねぇ……」

 お母様がクスクス笑いながらそう言った。
 確かにお祖父様なら大喜びする気がする……

(エミール殿下……どうしてしまったの……?)

 殴ったり、鍛えようとしたり……

「そんな第二王子から、フィオナ宛に手紙を預かったんだけど」
「……え!?」

 お父様のその言葉に私の心臓がドクンッと大きく跳ねた。

「わ、わ、私、に?」
「ああ。ほら」

 そう言ってお父様が預かっていたという手紙を懐から出すと私に渡してくれた。

(手、手が震える……)

 どうにか手紙を手にした私にお父様は言った。

「ところで、フィオナは殿下たちに彼をボコボコにする為の協力を求めたのかい?」
「協力?」
「うん。実はその手紙を預かると共に、一緒に渡された物があってね」
「?」

 そう言ってお父様が私に見せたのは……

「こ、これは公爵家の……機密情報!?」
「そう。ダーヴィット殿のやらかしを揉み消すのに加担した貴族のリストってところだね」
「なぜ……」

 私が殿下に頼むとしたら、せいぜいあのパーティーで聞いた話を証言してもらう時くらいのつもりだったのに。

(どうして……?) 

「……と、いうわけで僕はこのリストを元に下っ端を先に潰しておくことにする」
「お、お父様……」 

 お父様はとっても爽やかな笑顔なのにとっても物騒なことを口にした。
 そして、私にそのリストを渡して来た。

「え?  お父様持っていなくていいのですか?  これから潰しにかかるのでしょう?」
「うん?  あぁ、大丈夫だよ。リーファに見せておいたから」

 そう言われてお母様の顔を見たら、ニコニコと微笑んでいた。

(あ!  そうだったお母様は記憶力が……)  

「ただ、下っ端を潰しておくのはいいけど、ちょっとあちこち地方を回らないといけないのがなぁ……」
「フィオナを一人にするのはちょっと心配なのよね……」
「“両親不在”って嫌な予感がするからね」
「ええ……」

(……なんでそんな深刻そうな顔を?)

 お父様とお母様は顔を見合せながら、どこか心配そうにそんなことを口にしていた。


────……


「……エミール殿下から手紙だなんて……」

 話を終え、部屋に戻った私の手にはお父様から渡された“エミール殿下”からだという手紙。
 先程から開封しようとしているのに、手が震えてうまく開封出来ずにいる。

「し、しっかりしなくちゃ!」

 私は何度も深呼吸を繰り返して、ようやくその手紙を開封した。
感想 231

あなたにおすすめの小説

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ
恋愛
 公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。  公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。  アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。  腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。  本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。  学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。    そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。  実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。  アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。  神に去られた国は徐々に荒廃していき……。  一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。  「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」 ・人外×人間、竜×人間。 ・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。 ・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。 「Copyright(C)2025-まほりろ」 ※タイトル変更しました(2025/05/06) ✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 ✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」 ◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」 ・2025年5月16日HOTランキング2位!  ありがとうございます! ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位