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第42話 ここからどうなるんだよ!?(ジュラール殿下視点)
───最初からこうなることを目的とした上で開催されたパーティーだったとは言っても、想像以上に会場内がとんでもない状態になっていたその頃……
会場の中に入らずに、入口の扉の影で一人悶えている人物がいた。
その人物……本物のジュラール殿下はカオスと化した会場に入るタイミングを見失ってしまい、実は、ずーーっと影からひっそりとこのパーティーの一部始終を見ていた────
(あぁぁ、エミールもマーギュリー侯爵令嬢も……二人揃って、何をやっているんだーーーー!)
弟のエミールが、最愛の女性のためにと計画したパーティー。
エミールの名前だと人が集まらない可能性がある……ということで、一応、僕……ジュラールの名前での開催にはしたけれど、パーティーの計画のメインはエミールだ。
だから、二人で話し合ってエミールが僕の振りをして参加する方がいいだろうと結論づけた。
(本当は“エミール”は不参加にしようと思ったが───)
『ジュラールとして参加することに不満はないけど、ほんの少しの時間だけでもいいからパーティーでも“エミール”としてフィオナと話せたらいいのにな……』
そんな乙女……弟の何気ない呟きを聞いてしまったら、エミール(の振りをした僕)は不参加にしようとは言えなかった。
どこかのタイミングで入れ替わって、愛しのマーギュリー侯爵令嬢と二人の時間を作ってあげよう。あわよくば、そこで告白とかしちゃってくれ!
なんて思っていたのに……
(あの二人……ポンコツにも程があるだろう!?)
お互いに仲良く息ピッタリに「いつか自分のことを好きになって」と言った二人は今、ひたすら首を傾げていた。
今、なんて言った? そんな表情をしてお互いの顔を見つめ合っている。
(なんで、その前のお互いの告白を聞いていないんだよーーーー!)
しかも二人揃って何でそんな長期戦覚悟なんだよ!? いつかっていつだ!
すっかり恋する乙女化していた弟がようやく告白した!
こっそりその瞬間を見守っていた僕はそのことに感動した。
そして、お相手のマーギュリー侯爵令嬢も、ほぼ同時になんとエミールのことを好きだと口にしていた。
両想いだったのか! エミールおめでとう!
───と、喜んだ僕の時間を返せ!
(……でも、まぁ、やっとここまで来たんだ。もう一回仕切り直してお互いの気持ちを伝えれば、あの二人は丸く収まるだろう……たぶん)
「……」
しかし、マーギュリー侯爵令嬢は本当に僕たちを見分けていたんだな。
最初にエミールにその話をしようとした時は、ダーヴィットに邪魔をされ、その後は乙女化したエミールに動揺しすぎて、もうすっかりその話をするのを忘れていた。
(何であっさりバレていたのかと思ったが……多分、目がいいんだろうな。あと、野生の勘?)
───私の目には、しっかりお二人が違って見えます…………そうですね、実はエミール様の方が少し頑固そうな顔付きしていますよね? 猪突猛進型と言いますか……
(そうだよ。エミールは一度こうと決めたら頑固なんだ)
そして、ときどき全力で変な方向に走っていくのだが……
───巷で言われている“エミール殿下”の雰囲気はどちらかと言うと本物のジュラール殿下の方が近いような……
(これもその通りだよ。噂ほどのちゃらんぽらんではないつもりだけど、僕の性格はどちらかと言えばこっちだ)
「本当に何者なんだ……フィオナ・マーギュリー……」
先程も誰かが囁いていたようだが、強面で有名なアクィナス伯爵の孫だったことを知った時はまさかと思ったが……
娘である侯爵夫人はそこまで攻撃的ではないらしいから、すっかり伯爵の血は孫へと遺伝してしまったのだろうなぁ……
とんでもなく逞しくて勇ましい令嬢だ。
きっと、エミールの元に嫁いでも彼女なら大丈夫だろう。
「それに……」
彼女のおかげで、皆に本当のエミールを知って貰えた。
阿呆王子を利用しようと企む愚か者の炙り出しは出来なくなるだろうが、これからのエミールが肩身の狭い思いをせずに、エミールらしく生きていけることが僕は一番嬉しい。
「……ダーヴィットも運のない男だ」
僕はそう呟きながら、ダーヴィットと公爵を見る。
“便利な女”などというそんな(最低な)理由でマーギュリー侯爵令嬢を隠れ蓑用の婚約者に選んだら、まさかこれまでの悪事が白日の下に晒されるとは思ってもみなかっただろう。
先程、ダーヴィットは伯爵の前で泣きながら全てを語らされていたが、出るわ出るわ悪事の数々。
事前に聞かされていた女遊び以外にも違法賭博だの闇商売にまで手を出していただの……とにかく真っ黒だった。
(公爵もその息子のやらかした全ての悪事をありとあらゆる権力と人脈でどうにか隠蔽していたと言うんだからな)
「……エミールから公爵家ごと潰すつもりらしいと聞いた時は耳を疑ったが……それも野生の勘が働いていたんじゃ……いや、さすがにそれは考えすぎか……」
多分、思考が過激なだけだ……
と、僕は自分に言い聞かせた。今後はエミールが止めてくれることを信じたい……
なんであれ、公爵家をボコボコにするという計画は上手くいったようだ。
そんなダーヴィットは、今、弄んでいた令嬢たちにこれまでのことを問い詰められている。
しどろもどろになって受け答えをしているダーヴィットには、もはやかつての華やかさはない。
そんなダーヴィットに憧れていた令嬢たちも、本性を知って白けた目で見ている。
自白した内容に加えて、前にエミールに殴りかかろうとした件に、先程のナイフの件……
罪に問われるのは確実なうえ、今後は女性も寄って来ないだろう。
「───と、考察するのはいいが、僕はいつ会場入りすればいいんだ? それに……」
どの顔で入場すればいいんだ?
エミールの振り?
……いや、もう皆にバレているのだから笑われる気がする……
では、やはり、本物のジュラールとして?
……いや、それだといつから話を聞いていたんだよ! と言われそうだ……
(もう、入場するのはやめて、エミールの恋の行方を見守ろうかな……それが一番平和な気がする)
そう思って弟と破天荒令嬢の方へと視線を戻すと────
「え、えっと、フィオナ? 今、君は……」
「エ、エミール様こそ……」
「……」
「……」
(うぁぁ、もじもじ……二人揃って真っ赤な顔で、もじもじしているよ!)
エミール! 乙女化している場合じゃない! ここはバシッと決めるんだ!
マーギュリー侯爵令嬢! いつものパワーはどうしたんだ! きっと君は考えるより動けってタイプだろう!?
しかも、二人は気付いていないようだが、よく見れば会場の半分くらいの人たちが二人の恋の行方をハラハラ見守っているじゃないか!
(───ここからどうなるんだよ……!)
ジュラールとその他大勢の心がそんな気持ちで、まさに一つになっていたその時。
ようやく、もじもじしていた二人の中で動きがあった。
誰もが気になって仕方がない二人の恋の行方。
先に動いたのは────……
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