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対決②
手を伸ばしたミリアンヌさんは、そうして私を階段から突き落とそうとしたけれど──……
「っ!」
「は? え? ちょっと何で?」
ミリアンヌさんは驚いて言葉を失っている。
(危なっ……)
どうして驚くのかしら?
あんな分かりやすく示唆されていたのだから、ミリアンヌさんがこの後私に何をしようとしているかなんて考えなくても分かるのに。
私だってあっさり突き落とされるつもりなんてあるはずが無い。
だから私はミリアンヌさんに対して怒鳴りながら、じりじりと壁際に移動してさり気なくずっと手すりを掴んでいた。
ミリアンヌさんは興奮して全く気付いていなかったようだけれど。
おかげで無事に突き落とされる事もなく、どうにかその場に踏み止まっていられた。
(と言っても、もう少し力を込められていたら落ちていたかも……)
「もーーう! 何してるのよ!! 悪役令嬢はここで落ちて物語から退場するのが筋でしょう? 本当に滅茶苦茶よ! 何してくれてるの!? どこまでもどこまでも私の邪魔ばっかりしてぇーー!」
逆上したミリアンヌさんが、もう一度、私を突き落とそうとさっきよりも力を込めて腕を振り上げた時だった。
「いい加減にしろ! そこまでだ」
「きゃっ……何?」
そう言って現れたその人…………フォレックス様はミリアンヌさんの腕を掴んで止めた。
「ミリアンヌ嬢……いや、ミリアンヌ! 全部、聞かせてもらった」
「え? や、何でフォレックス様が、ここに……?」
腕を掴まれたミリアンヌさんは暴れるけれどフォレックス様は離さない。
(……フォレックス様が……来てくれた?)
これだけ騒げば誰かしらは来るかもとは思ったけれど、まさかフォレックス様が来てくれるなんて。
偶然でも何でも今この場に駆け付けてくれて助けてくれた。
そう思うと何だか凄くホッとした。
「お前はこのまま事情聴取の続きだ。だが、取り調べの内容は変わるぞ……リーツェ・ミゼット公爵令嬢に対する殺人未遂容疑となる!」
「さ、殺人未遂!? やめてよ、嘘! 冗談でしょ!?」
ミリアンヌさんがギョッと大きく目を見開き暴れる。
「大人しくしろ! それから何を驚く必要がある? さっき、お前が自分で言っただろう? 階段から突き落とした実行犯でなくても殺人未遂で死刑に出来るとな。まぁ、お前は正に実行犯だが」
「……っ!」
フォレックス様のその言葉にミリアンヌさんの顔が青くなった。
自分で口にした事が返ってきた形だ。
「さて、ミリアンヌ。俺も含めて目撃者が多数いるこの状態で言い逃れ出来ると思うなよ? お前のした事は明らかにリーツェへの殺人未遂だった! 連れて行け!」
「え、やだ……ちょっと、違っ……離しなさいよ……何でよー!? こうなるのは悪役令嬢の役目よーー私じゃないぃぃ」
フォレックス様のその言葉で王宮の警備の者達が叫ぶミリアンヌさんを連行して行く。
“やっと見つけたぞ”“よくも逃げやがって”
彼らの口からそんな言葉が聞こえたので、ミリアンヌさんはあの香りを使って監視の目を潜り抜けて姿を晦ましていたのかもしれない。
「……」
未だに何かを喚きつつ連行されて行くミリアンヌさんを見ながら力が抜けた私はヘナヘナとその場に座り込む。
「リーツェ、大丈夫か? 遅くなってすまない」
「フォレックス様……あ、ありがとうございます……」
完全に腰が抜けて立てそうにない。
「……」
それにしても、フォレックス様にはどこから話が聞こえていたのかしら?
殺人未遂の話もしていたから……あぁ、私のフォレックス様への気持ちを叫んでいた所も聞かれていたのかもしれない。
(なんて事! ちゃんと告白したかったのに!)
いえ! でも、これから……しっかり伝えれば!
そんな事を考えながら、フォレックス様の差し伸べてくれた手に自分の手を重ねようと手を伸ばした時、
────ズキンッ!
「ゔっ……」
「リーツェ!?」
突然、今までに無いくらいに酷く頭が痛んだ。
私はフォレックス様の手を掴めず自分の頭を抱える。
ズキン、ズキン、ズキン……
そして、その痛みはどんどん酷くなっていく。
とにかく頭が割れそうに痛い。
いつもの頭痛なんて比じゃない!
ズキン、ズキン、ズキン……
(あ……これ、無理……意識が……)
「リーツェ!!」
私の名を叫ぶフォレックス様の声を聞きながら私の意識はどんどん遠のいていく。
そして、遠のいていく意識の中で、プツンと何かが切れる音がしたような気がした。
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