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第一部:第四章 ラーソルバールの休暇(前編)
(一)通り雨のあとで②
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昼を過ぎた頃、雨が降り始めた。
次第に雨足が強くなり、近付く風上の雲が黒く見える。雨が激しくなりそうなのを見越して、馬車を大きな木の下に停めて休憩することにした。
近くには森が見えるが、そこで休めば獣か怪物に襲われる危険もある。それは誰もが経験で知っている。このまま移動しようにも足場が悪くなると、馬も転倒する恐れがある。荷物も濡れては困るものがあり、無理はできない。
「通り雨ですかね」
ラーソルバールは、激しい雨を降らせる天を恨めしげに仰いだ。
「だといいね」
メルーナが微笑みながら同意した。
雨が止むのを待っている間は、する事が無い。ただ、空を眺めて雨雲が通り過ぎるのを待つしかない。
暫くすると、向こうの空が明るくなり、雨足が弱まってきた。
「行きますよ」
御者が声をかけてきた。念のために周囲を確認するが、特に気配もない。
動き出した馬車は先程よりも速度を落とし、泥をはねながら進む。止みかけの雨を見上げながら揺られていると、馬車が急に止まった。
「前方で隊商が襲われているようです」
御者の声に、ラーソルバールは身を乗り出した。こちらも気付かれている可能性も有るが、そうでないとしても見過ごす事は出来ない。
「賊ですか?」
「そのようです」
身を乗り出して目を凝らすと、隊商の護衛は四人、襲撃者は七、八人程だろうか。数の上では明らかに隊商が不利だ。
「援護に行ってきます。お二人は、この馬車を守って居てください」
「ラーソルバールちゃん! 駄目よ!」
メルーナが制止しようとするが、笑顔でそれを振り切った。
「ここで見ないふりをしたら、私は将来の夢を語れません!」
馬車を飛び降りると、遠くに見える馬車まで走る。踏み固められた土の道は、雨にも関わらず、泥濘が少ない。
大丈夫。ラーソルバールは自分自身にそう言い聞かせて剣を抜いた。雨を弾いて剣が淡く青白く揺らめく。
「助力致します!」
護衛の一人は深手を負い、既に下がっている。
二人程が地に倒れているのが見えるが、護衛か賊か判別している余裕はない。
「危ないから来るな!」
ラーソルバールに気付いた護衛の一人が、彼女を子供と見て叫んだ。
そう言い終わる頃、ラーソルバールは向かってきた賊が持っていた剣を弾き飛ばし、柄でみぞおちに強烈な一撃を加えていた。激痛のあまり賊は悶えるように、その場に倒れ込んだ。
仲間が一人倒された事により、賊達から子供という侮りは消えた。
「その小娘を捕まえろ、売れば金になる!」
賊の大男が叫んだ。賊の頭領だろうか。
頭を倒してしまえば賊の戦意は喪失し、逃亡してしまうだろう。しかし、街道の安全を確保するためには、全員捕らえる必要が有り、逃げられてしまっては意味が無い。
賊の二人が襲いかかって来たが、一度に相手をしなくて済むよう、ラーソルバールは片方の男の右脇に回り込んだ。
目の前の相手が振り下ろしてきた剣の軌道を自らの剣で軽く当てて逸らし、横に飛ぶ。そのまま反動をつけると、切りかかってきたもう一人の賊の頬を、剣の平で思い切り叩いた。
脳を揺らされた賊はよろめき、仲間同士で激突して二人とも倒れ込んだ。
ラーソルバールは、すぐに倒れている無傷な方の賊の顎を踵で強く蹴り上げて気を失わせ、護衛の援護に駆け寄る。その一瞬の出来事を目撃していた賊は、今だに数的有利だということを忘れたかのように慌てた。動揺によって出来た隙を突いて、護衛の男が賊を一人切り伏せると、両者の動ける人数は同数となった。
次第に雨足が強くなり、近付く風上の雲が黒く見える。雨が激しくなりそうなのを見越して、馬車を大きな木の下に停めて休憩することにした。
近くには森が見えるが、そこで休めば獣か怪物に襲われる危険もある。それは誰もが経験で知っている。このまま移動しようにも足場が悪くなると、馬も転倒する恐れがある。荷物も濡れては困るものがあり、無理はできない。
「通り雨ですかね」
ラーソルバールは、激しい雨を降らせる天を恨めしげに仰いだ。
「だといいね」
メルーナが微笑みながら同意した。
雨が止むのを待っている間は、する事が無い。ただ、空を眺めて雨雲が通り過ぎるのを待つしかない。
暫くすると、向こうの空が明るくなり、雨足が弱まってきた。
「行きますよ」
御者が声をかけてきた。念のために周囲を確認するが、特に気配もない。
動き出した馬車は先程よりも速度を落とし、泥をはねながら進む。止みかけの雨を見上げながら揺られていると、馬車が急に止まった。
「前方で隊商が襲われているようです」
御者の声に、ラーソルバールは身を乗り出した。こちらも気付かれている可能性も有るが、そうでないとしても見過ごす事は出来ない。
「賊ですか?」
「そのようです」
身を乗り出して目を凝らすと、隊商の護衛は四人、襲撃者は七、八人程だろうか。数の上では明らかに隊商が不利だ。
「援護に行ってきます。お二人は、この馬車を守って居てください」
「ラーソルバールちゃん! 駄目よ!」
メルーナが制止しようとするが、笑顔でそれを振り切った。
「ここで見ないふりをしたら、私は将来の夢を語れません!」
馬車を飛び降りると、遠くに見える馬車まで走る。踏み固められた土の道は、雨にも関わらず、泥濘が少ない。
大丈夫。ラーソルバールは自分自身にそう言い聞かせて剣を抜いた。雨を弾いて剣が淡く青白く揺らめく。
「助力致します!」
護衛の一人は深手を負い、既に下がっている。
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「危ないから来るな!」
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そう言い終わる頃、ラーソルバールは向かってきた賊が持っていた剣を弾き飛ばし、柄でみぞおちに強烈な一撃を加えていた。激痛のあまり賊は悶えるように、その場に倒れ込んだ。
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頭を倒してしまえば賊の戦意は喪失し、逃亡してしまうだろう。しかし、街道の安全を確保するためには、全員捕らえる必要が有り、逃げられてしまっては意味が無い。
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目の前の相手が振り下ろしてきた剣の軌道を自らの剣で軽く当てて逸らし、横に飛ぶ。そのまま反動をつけると、切りかかってきたもう一人の賊の頬を、剣の平で思い切り叩いた。
脳を揺らされた賊はよろめき、仲間同士で激突して二人とも倒れ込んだ。
ラーソルバールは、すぐに倒れている無傷な方の賊の顎を踵で強く蹴り上げて気を失わせ、護衛の援護に駆け寄る。その一瞬の出来事を目撃していた賊は、今だに数的有利だということを忘れたかのように慌てた。動揺によって出来た隙を突いて、護衛の男が賊を一人切り伏せると、両者の動ける人数は同数となった。
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