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第一部:第八章 心機一転
(三)困った招待状①
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(三)
暦では一年、つまり恒星を周回するのにかかる日数は三百六十日となっている。
空に浮かぶ『月』は二つ。大きい月と小さい月が、互いに軌道を重ねることなく、周回している。大きい月の周期である三十六日を一ヶ月と定め、十ヶ月で一年としている。
その暦で八月も終わり、四月から始まった学校生活も半年を過ぎた。学校の授業内容も変わり、ついていけない者は退学した。成績もの良し悪しも、ある程度固まってきている。
気持ちを入れ換えてもう一度、頑張ろうと思っていた。そんな中、成績以外でラーソルバールを悩ませる出来事が起きた。
デラネトゥス家から、郵便物が届いたのだ。
最初に、寮の部屋に届けられた郵便物の差出人を確認して驚いた。元々、デラネトゥス家からの郵便物など受け取る覚えも無かったので、間違いではないかとも思ったのだが、確かに宛名には自分の名前が記されている。
恐る恐る開封し、その中身を読んだ瞬間ラーソルバールは絶句した。
入っていたのは、三女エラゼルの誕生祝いの招待状だったのだ。
「どうしろと……」
エラゼルにとって、学友というものの存在がどういうものか分からないし、ましてや彼女にとっての自分の位置付けが分からない。はて、お愛想だろうか、嫌がらせだろうか、本気だろうかと悩むところだが、彼女の性格からして恐らく嫌がらせではない。
これは顔を出すだけで良いのだろうか。いや、そもそもこのような場に顔を出しただけで済むのだろうか。
ミルエルシ家のような下級貴族とは違い、公爵家からのお誘いである。失礼が有ってはならない。そう考えると冷や汗が止まらない。
「ん、父上に相談してどうにかなる問題じゃないし……あ、でも話はしておかないと」
動揺しすぎて考えがまとまらない。
「フェスバルハ伯爵に……相談をしてみようか……」
そう思ったが、これ以上フェスバルハ伯爵家には迷惑をかけられない。
「そうだ! ガイザの所、ドーンウィル伯爵家には招待状が来てるかも」
思い付いたら男子寮へ急ぐ。藁にもすがる気持ちだった。
男子寮は足を踏み入れた事の無い場所であり、下手な噂も立ちかねないため若干の躊躇はある。だが今は迷っている暇はない。
「確か一号棟の一階、六号室だっけ」
独り言で確認しながら一号棟の前へ。寮母に面会の申請をしてから中へ入る。
女子寮と建物の作りに大した違いはないが、やはり初の男子寮だけに緊張し、変な汗が出る。
時折すれ違う男子生徒に振り向かれる。ラーソルバール自身、外見はかなりの美しい方なので、年頃の少年にはさぞ魅力的な存在に見える事だろう。
実際に誰とはと知らずに、その姿に見とれる者も居た。制服を着て剣を持っていれば、佇まいで気付く者もいたかもしれないが。
「ガイザ居る?」
周囲に聞こえないように、小声で呼び掛けながら六号室の扉を叩く。
「え?」
扉を開けたガイザは驚いた。
女子生徒が居るはずの無い寮内に、ラーソルバールが居たのである。
「ガイザ、相談……というか教えて欲しい事があるんだけど」
普段見せることの無い、しおらしげな姿にガイザは戸惑った。
「何?」
ガイザは廊下に顔を出して周囲に誰も居ないことを確認すると、部屋に入るよう促す。それに応じるようにひとつ頷くと、ため息をつきながらラーソルバールは部屋に入った。
「実は……」
椅子に腰かけたところで、デラネトゥス家からの招待状を見せ、隠さず正直に話すことにした。
暦では一年、つまり恒星を周回するのにかかる日数は三百六十日となっている。
空に浮かぶ『月』は二つ。大きい月と小さい月が、互いに軌道を重ねることなく、周回している。大きい月の周期である三十六日を一ヶ月と定め、十ヶ月で一年としている。
その暦で八月も終わり、四月から始まった学校生活も半年を過ぎた。学校の授業内容も変わり、ついていけない者は退学した。成績もの良し悪しも、ある程度固まってきている。
気持ちを入れ換えてもう一度、頑張ろうと思っていた。そんな中、成績以外でラーソルバールを悩ませる出来事が起きた。
デラネトゥス家から、郵便物が届いたのだ。
最初に、寮の部屋に届けられた郵便物の差出人を確認して驚いた。元々、デラネトゥス家からの郵便物など受け取る覚えも無かったので、間違いではないかとも思ったのだが、確かに宛名には自分の名前が記されている。
恐る恐る開封し、その中身を読んだ瞬間ラーソルバールは絶句した。
入っていたのは、三女エラゼルの誕生祝いの招待状だったのだ。
「どうしろと……」
エラゼルにとって、学友というものの存在がどういうものか分からないし、ましてや彼女にとっての自分の位置付けが分からない。はて、お愛想だろうか、嫌がらせだろうか、本気だろうかと悩むところだが、彼女の性格からして恐らく嫌がらせではない。
これは顔を出すだけで良いのだろうか。いや、そもそもこのような場に顔を出しただけで済むのだろうか。
ミルエルシ家のような下級貴族とは違い、公爵家からのお誘いである。失礼が有ってはならない。そう考えると冷や汗が止まらない。
「ん、父上に相談してどうにかなる問題じゃないし……あ、でも話はしておかないと」
動揺しすぎて考えがまとまらない。
「フェスバルハ伯爵に……相談をしてみようか……」
そう思ったが、これ以上フェスバルハ伯爵家には迷惑をかけられない。
「そうだ! ガイザの所、ドーンウィル伯爵家には招待状が来てるかも」
思い付いたら男子寮へ急ぐ。藁にもすがる気持ちだった。
男子寮は足を踏み入れた事の無い場所であり、下手な噂も立ちかねないため若干の躊躇はある。だが今は迷っている暇はない。
「確か一号棟の一階、六号室だっけ」
独り言で確認しながら一号棟の前へ。寮母に面会の申請をしてから中へ入る。
女子寮と建物の作りに大した違いはないが、やはり初の男子寮だけに緊張し、変な汗が出る。
時折すれ違う男子生徒に振り向かれる。ラーソルバール自身、外見はかなりの美しい方なので、年頃の少年にはさぞ魅力的な存在に見える事だろう。
実際に誰とはと知らずに、その姿に見とれる者も居た。制服を着て剣を持っていれば、佇まいで気付く者もいたかもしれないが。
「ガイザ居る?」
周囲に聞こえないように、小声で呼び掛けながら六号室の扉を叩く。
「え?」
扉を開けたガイザは驚いた。
女子生徒が居るはずの無い寮内に、ラーソルバールが居たのである。
「ガイザ、相談……というか教えて欲しい事があるんだけど」
普段見せることの無い、しおらしげな姿にガイザは戸惑った。
「何?」
ガイザは廊下に顔を出して周囲に誰も居ないことを確認すると、部屋に入るよう促す。それに応じるようにひとつ頷くと、ため息をつきながらラーソルバールは部屋に入った。
「実は……」
椅子に腰かけたところで、デラネトゥス家からの招待状を見せ、隠さず正直に話すことにした。
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