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第二部:第十八章 旅立ちは報せとともに
(三)旅支度②
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ラーソルバールは老店員の好意に甘え、案内されるまま工房までやってきた。他の者も、自分の買い物を終えていたため興味本位で付いてきたが、老店員はそれを咎める様子も無い。
「工房長、ちょっとよろしいですか?」
老店員は、作業中だった壮年の男性達に向かって声をかける。
呼ばれてやってきたのは、ひと際体の大きい、筋肉のしっかりとついた存在感のある男性だった。
「なんですか、社長?」
この老店員は社長だったのか。ラーソルバールは少々驚いた。
「自信作か、試作品か。とにかく、通常の品では無い良い剣を一振、このお嬢さんに持ってきてください」
「え……? この嬢ちゃんに、ですかい?」
驚いた様子の工房長。やや不満げにも見える。
「不満ですか? ですが恐らくこの方に剣を持たせれば、そこいらの人間が束になってかかっても敵わない程の、実力の持ち主だと思いますよ」
「ほう、鋭い眼力だな……」
老社長の言葉を聞いて、エラゼルが驚いたように呟く。何を見てそう思ったのか。いや、感じたのか、と。
「あ、いや、社長がそう仰るのでしたら、間違いないでしょう」
工房長は素直に引き下がった。老社長の言というのは、それほどまでに信じるに足るものなのか。いや、他人を納得させる程、人の本質を見抜く力というのはすごいのだろうか。ラーソルバールは気になった。
少しして、工房長は二振の剣を持って戻ってきた。
ひとつは装飾の美しい、洗練された見事な剣。もうひとつは、質素だが一切の妥協の無い刃を持つ剣だった。
「両方とも見事ですが、こちらと同じような造りの物で、魔法が付加されたものはありますか?」
ここはラーソルバールとしても妥協できない。質素な剣を手に、工房長の目を見つめた。
「見た目じゃなくて、剣の本質を選ぶか」
少々疑い気味だった工房長の目が変わる。
「出来たばかりの本当の試作品ならある。今はまだ無名だが、将来性のある魔術師に手伝ってもらった物だ。使えるものになっているかどうかは分からねぇから、買うんなら試用してからにしてくれ」
「試用、ですか?」
「内庭に試し切り様の木材がある。ああ、ちょっと待っててくれ、剣を持ってくる」
工房長はのしのしと歩いて奥に消える。その間に、ラーソルバール達は老社長に案内され、内庭に通された。
少しして、工房長は鞘に入っていない一振りの剣を手に内庭にやってきた。
「これを使ってみてくれ」
差し出されたのは、質素だが、美しい剣。
「…はい、お借りします」
ラーソルバールは一瞬躊躇しつつも、それを受け取る。
「良い剣ですね……」
「まだ、誰も試していない剣だ。試しにその木材を切ってみてくれ」
指差されたのは、やや太目の角材。
剣は見た目と同様、手にした感触も悪くない。綺麗に木材を切断できるだろうが、気を抜けば食い込んで終わる可能性もある。
ラーソルバールは集中し、木材を見つめる。そして息を吐き、気合を入れた。
「……ヤッ!」
銀色の筋が右上から左下へと抜ける。カツッという軽い音で木材は切断された。
「おお!」
工房長が感嘆の声を上げる。そのまま急いで木材に駆け寄り、断面を見たあと、剣に刃こぼれが無いか確認する。
「すげえな、嬢ちゃん。社長の仰る通り、いい腕だ。いくら剣が良くても、普通はここまで綺麗に切れないぜ。剣に負荷がかかった様子も無い」
工房長は驚きつつ、賞賛したが、友人らは特に驚くでもなく、当たり前のように見つめている。
老社長も工房長に続いて木材の様子を見ると、拍手で賞賛する。
「お見事です。が、本来貴女に最も馴染んでいるのは、直剣ではありませんね」
「え……」
老社長の一言に、その場に居た誰もが驚いた。
「工房長、ちょっとよろしいですか?」
老店員は、作業中だった壮年の男性達に向かって声をかける。
呼ばれてやってきたのは、ひと際体の大きい、筋肉のしっかりとついた存在感のある男性だった。
「なんですか、社長?」
この老店員は社長だったのか。ラーソルバールは少々驚いた。
「自信作か、試作品か。とにかく、通常の品では無い良い剣を一振、このお嬢さんに持ってきてください」
「え……? この嬢ちゃんに、ですかい?」
驚いた様子の工房長。やや不満げにも見える。
「不満ですか? ですが恐らくこの方に剣を持たせれば、そこいらの人間が束になってかかっても敵わない程の、実力の持ち主だと思いますよ」
「ほう、鋭い眼力だな……」
老社長の言葉を聞いて、エラゼルが驚いたように呟く。何を見てそう思ったのか。いや、感じたのか、と。
「あ、いや、社長がそう仰るのでしたら、間違いないでしょう」
工房長は素直に引き下がった。老社長の言というのは、それほどまでに信じるに足るものなのか。いや、他人を納得させる程、人の本質を見抜く力というのはすごいのだろうか。ラーソルバールは気になった。
少しして、工房長は二振の剣を持って戻ってきた。
ひとつは装飾の美しい、洗練された見事な剣。もうひとつは、質素だが一切の妥協の無い刃を持つ剣だった。
「両方とも見事ですが、こちらと同じような造りの物で、魔法が付加されたものはありますか?」
ここはラーソルバールとしても妥協できない。質素な剣を手に、工房長の目を見つめた。
「見た目じゃなくて、剣の本質を選ぶか」
少々疑い気味だった工房長の目が変わる。
「出来たばかりの本当の試作品ならある。今はまだ無名だが、将来性のある魔術師に手伝ってもらった物だ。使えるものになっているかどうかは分からねぇから、買うんなら試用してからにしてくれ」
「試用、ですか?」
「内庭に試し切り様の木材がある。ああ、ちょっと待っててくれ、剣を持ってくる」
工房長はのしのしと歩いて奥に消える。その間に、ラーソルバール達は老社長に案内され、内庭に通された。
少しして、工房長は鞘に入っていない一振りの剣を手に内庭にやってきた。
「これを使ってみてくれ」
差し出されたのは、質素だが、美しい剣。
「…はい、お借りします」
ラーソルバールは一瞬躊躇しつつも、それを受け取る。
「良い剣ですね……」
「まだ、誰も試していない剣だ。試しにその木材を切ってみてくれ」
指差されたのは、やや太目の角材。
剣は見た目と同様、手にした感触も悪くない。綺麗に木材を切断できるだろうが、気を抜けば食い込んで終わる可能性もある。
ラーソルバールは集中し、木材を見つめる。そして息を吐き、気合を入れた。
「……ヤッ!」
銀色の筋が右上から左下へと抜ける。カツッという軽い音で木材は切断された。
「おお!」
工房長が感嘆の声を上げる。そのまま急いで木材に駆け寄り、断面を見たあと、剣に刃こぼれが無いか確認する。
「すげえな、嬢ちゃん。社長の仰る通り、いい腕だ。いくら剣が良くても、普通はここまで綺麗に切れないぜ。剣に負荷がかかった様子も無い」
工房長は驚きつつ、賞賛したが、友人らは特に驚くでもなく、当たり前のように見つめている。
老社長も工房長に続いて木材の様子を見ると、拍手で賞賛する。
「お見事です。が、本来貴女に最も馴染んでいるのは、直剣ではありませんね」
「え……」
老社長の一言に、その場に居た誰もが驚いた。
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