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第二部:第十九章 シルネラ共和国へ
(一)旅空③
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馬を労わるため、ゆっくりとした休憩を挟みつつの移動となる。昼食では特に長い時間の休憩となった。
道中では時折、乗合馬車や行商人の一行とすれ違う。その度に声を掛けて、盗賊や怪物との遭遇が無かったか確認する。
その答えは「何事も無い」というものばかりだった。
カレルロッサ動乱以降、盗賊に身を落とした貴族の元兵士達が治安を悪化させている、との噂があったが、一行を乗せた馬車もそういった影響は無く、夕方には何事も無く予定通り初日の宿泊地である街、ラモサに到着した。
ラーソルバールにしてみれば、厄介事が増えるものの、治安維持の為には襲ってきてくれても良かったと思っていた。そこで撃退して捕獲できれば、危険をひとつ排除する事ができるのだから。実際、危険な芽を摘むためにも、自分達が襲撃されても構わない、むしろ囮になるという心構えをしておこう、と出発前に五人で話し合っていた。
だが、ただの乗合馬車では商人達のような金目のものを積んでいると思われず、襲ったところで利になるような相手ではないと判断されたのかもしれない。
いやいや、何も無いのは良い事では無いか。きっと言われているほど危険では無いのかもしれない。ラーソルバールは後ろ向きになる考えに頭を振った。
乗合馬車の降車所で、一行を乗せた馬車は止まる。
「明日もよろしくお願いします!」
御者に声をかけると、降りる支度をする。暗くなってきているが、街の明かりで足元や、荷物の確認はできる。
「こう言っては何だが、あまりに順調で少々拍子抜けしたな」
言葉とは裏腹に腰を押さえつつ、最所にエラゼルが馬車から降りてきた。その様子を後ろから見て苦笑しながら、ラーソルバールが続く。
「ふふ……。良かったね、ここは温泉が沸いてるんだってさ」
見渡すと夕空に、街の明かりに照らされて湯気の上がっている場所がいくつか見える。そして時折、風に運ばれてやってくる硫黄の香りが、少し鼻につく。不快ではないが、嗅ぎなれない臭いに眉をしかめた。
すぐにラーソルバールに続いてシェラが降りてきた。
「ゆっくりさせて欲しいわ」
魔法で何度か癒してもらったものの、やはり揺れる馬車にやられて、ふらふらした足取りになっている。最後の方はどうにもならないと諦めて、クッションの上に寝転がっていた。温泉に浸かって疲れを取りたいというのが本音だろう。
「お疲れ様」
フォルテシアは対照的に、何事も無かったかのように降りてくる。その手にはシェラの荷物もあった。
ここラモサは、ティアレル伯爵の領地である。
ティアレル伯爵は動乱の際に怪しい動きが有ったものの、結果的には静観を決め込んでおり、処分は保留となっている。
その領地に宿泊させるというのは、裏の意図を感じなくも無い。だが、明確に何かを指示された訳でもないので、ラーソルバールとしては具体的な行動を起こすつもりは一切無い。
まずは今宵の宿泊場所の確保が大事だ。宿泊場所については指定されていないので、御者に良い宿を聞いていた。
教えられた宿は『フェランドル』という名で、この地方の言葉で『四季の花』という意味を持っている。降車所からさほど歩かない場所にあったので、馬車に揺られてへとへとになったエラゼルとシェラには有り難い事だった。
宿の前に立つと、建物の裏手から湯気が上がっているのが見える。源泉が近くに有るのだろう。
一行は疲れた体のまま、宿の受付を済ませると、各自割り当てられた部屋に転がり込んだ。
道中では時折、乗合馬車や行商人の一行とすれ違う。その度に声を掛けて、盗賊や怪物との遭遇が無かったか確認する。
その答えは「何事も無い」というものばかりだった。
カレルロッサ動乱以降、盗賊に身を落とした貴族の元兵士達が治安を悪化させている、との噂があったが、一行を乗せた馬車もそういった影響は無く、夕方には何事も無く予定通り初日の宿泊地である街、ラモサに到着した。
ラーソルバールにしてみれば、厄介事が増えるものの、治安維持の為には襲ってきてくれても良かったと思っていた。そこで撃退して捕獲できれば、危険をひとつ排除する事ができるのだから。実際、危険な芽を摘むためにも、自分達が襲撃されても構わない、むしろ囮になるという心構えをしておこう、と出発前に五人で話し合っていた。
だが、ただの乗合馬車では商人達のような金目のものを積んでいると思われず、襲ったところで利になるような相手ではないと判断されたのかもしれない。
いやいや、何も無いのは良い事では無いか。きっと言われているほど危険では無いのかもしれない。ラーソルバールは後ろ向きになる考えに頭を振った。
乗合馬車の降車所で、一行を乗せた馬車は止まる。
「明日もよろしくお願いします!」
御者に声をかけると、降りる支度をする。暗くなってきているが、街の明かりで足元や、荷物の確認はできる。
「こう言っては何だが、あまりに順調で少々拍子抜けしたな」
言葉とは裏腹に腰を押さえつつ、最所にエラゼルが馬車から降りてきた。その様子を後ろから見て苦笑しながら、ラーソルバールが続く。
「ふふ……。良かったね、ここは温泉が沸いてるんだってさ」
見渡すと夕空に、街の明かりに照らされて湯気の上がっている場所がいくつか見える。そして時折、風に運ばれてやってくる硫黄の香りが、少し鼻につく。不快ではないが、嗅ぎなれない臭いに眉をしかめた。
すぐにラーソルバールに続いてシェラが降りてきた。
「ゆっくりさせて欲しいわ」
魔法で何度か癒してもらったものの、やはり揺れる馬車にやられて、ふらふらした足取りになっている。最後の方はどうにもならないと諦めて、クッションの上に寝転がっていた。温泉に浸かって疲れを取りたいというのが本音だろう。
「お疲れ様」
フォルテシアは対照的に、何事も無かったかのように降りてくる。その手にはシェラの荷物もあった。
ここラモサは、ティアレル伯爵の領地である。
ティアレル伯爵は動乱の際に怪しい動きが有ったものの、結果的には静観を決め込んでおり、処分は保留となっている。
その領地に宿泊させるというのは、裏の意図を感じなくも無い。だが、明確に何かを指示された訳でもないので、ラーソルバールとしては具体的な行動を起こすつもりは一切無い。
まずは今宵の宿泊場所の確保が大事だ。宿泊場所については指定されていないので、御者に良い宿を聞いていた。
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宿の前に立つと、建物の裏手から湯気が上がっているのが見える。源泉が近くに有るのだろう。
一行は疲れた体のまま、宿の受付を済ませると、各自割り当てられた部屋に転がり込んだ。
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