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第二部:第二十二章 暗き森への誘い
(三)闇の産物②
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「さあ、早くここから離れよう。血の臭いに引き寄せられて、獣達がやって来る」
ゴブリンの死体を見下ろしながら、静かにそして落ち着いた声でモルアールが促す。
この場で感傷に浸っている暇は無い。果ての無い闇を作り出す森の更に奥へと行かねばならない。しかし、一歩また一歩と進むと、言い知れぬ不安がよぎる。このまま闇に呑まれるのではないか。また光の下に戻ることが出来るのかと。
しばらく歩いたが、戦闘になるような事は無かった。意外だったのが、時折木の枝の上を動く小動物を見かけるという事と、鳥の声が良く聞こえるという事。
それらは、ともすれば鬱々としそうな心を和らげてくれる有難い存在だった。
このまま順調に、何事もなく遺跡にたどり着くのではないか。そんな甘い考えを持ち始めた頃だった。
モルアールが違和感を感じ、足を止める。
「鳥の声が聞こえなくなったな」
「そう言われれば、少し前から小さな生き物も見かけなくなった気もするね」
ディナレスが木の枝を見回すように、上を向く。
「……そうであろうな、嫌な気配が有る」
エラゼルが声を落とし、警戒の色を強める。緊張を馬に伝えぬよう、ガイザは僅かに手綱を持つ手を緩めた。
「避けるか?」
「ランタンの明かりに気付いているやもしれぬ。気配は前方だし、迂回するならかなり遠回りになるが」
エラゼルの指差す方向から、何かを引きずるような音がした。
「今、北西に向かっているんだよね」
「あ、ああ」
ラーソルバールの不意の言葉に、モルアールは方向計に目をやる。
「危険な相手かもしれないから、真北に向かおうか。今向かっている遺跡は遺跡群の端だから、当たりの可能性は低いと思う。捨てるか後回しにしよう」
ラーソルバールに目で促され、シェラはランタンのシャッターを閉じ、光を前方に絞る。
「行こう……」
進む方向を変え、気配を消しつつ北へと向かう。
遠くに有る気配は追っては来ず、静かに闇へと溶けていった。
しばらく歩いたが景色は変わらず、どれだけ歩いたのか、どれ程の時間が経過したのか分からない。
「今は昼か、夕方か?」
時折僅かに射し込む光を見つけては空を見上げる。一点有るだけの穴から細い糸のように伸びる光だけで、日の位置は見えない。光の角度から位置を把握し、時刻を導きだすだけだ。
夕方前には遺跡に着きたいね。と、シェラが言ったが、皆が同じ思いで居る。どの辺りなのか、意識せずに歩けばすぐに迷うという危機感を抱えながらの移動だけに、精神的にもきつい。
木々の間から漏れる光が弱くなる頃、足元に岩が散見されるようになった。
「この辺りが遺跡か?」
ランタンに照らされたその場所は、木の根に侵食され、かつては建造物であったと思われる物は無惨に崩れ去っていた。柱は倒れ、床石も根に持ち上げられて傾いたり割れたりしており、原形をとどめていない。
それ故に、遺跡としての価値が無いと判断されたのか、遺跡周辺に人が何か手をつけたような痕跡は無く、手掛かりが有るとも思えなかった。
「ここを西に少し行ったところに、大きな遺跡があるみたい」
ともすれば気落ちしそうな一行に向かい、ラーソルバールは率先して動いた。
いや、動くことで心の中の葛藤を消そうとしているのかもしれない。エラゼルは何も言わずに見守ることしか出来ない自分が歯痒かった。
ゴブリンの死体を見下ろしながら、静かにそして落ち着いた声でモルアールが促す。
この場で感傷に浸っている暇は無い。果ての無い闇を作り出す森の更に奥へと行かねばならない。しかし、一歩また一歩と進むと、言い知れぬ不安がよぎる。このまま闇に呑まれるのではないか。また光の下に戻ることが出来るのかと。
しばらく歩いたが、戦闘になるような事は無かった。意外だったのが、時折木の枝の上を動く小動物を見かけるという事と、鳥の声が良く聞こえるという事。
それらは、ともすれば鬱々としそうな心を和らげてくれる有難い存在だった。
このまま順調に、何事もなく遺跡にたどり着くのではないか。そんな甘い考えを持ち始めた頃だった。
モルアールが違和感を感じ、足を止める。
「鳥の声が聞こえなくなったな」
「そう言われれば、少し前から小さな生き物も見かけなくなった気もするね」
ディナレスが木の枝を見回すように、上を向く。
「……そうであろうな、嫌な気配が有る」
エラゼルが声を落とし、警戒の色を強める。緊張を馬に伝えぬよう、ガイザは僅かに手綱を持つ手を緩めた。
「避けるか?」
「ランタンの明かりに気付いているやもしれぬ。気配は前方だし、迂回するならかなり遠回りになるが」
エラゼルの指差す方向から、何かを引きずるような音がした。
「今、北西に向かっているんだよね」
「あ、ああ」
ラーソルバールの不意の言葉に、モルアールは方向計に目をやる。
「危険な相手かもしれないから、真北に向かおうか。今向かっている遺跡は遺跡群の端だから、当たりの可能性は低いと思う。捨てるか後回しにしよう」
ラーソルバールに目で促され、シェラはランタンのシャッターを閉じ、光を前方に絞る。
「行こう……」
進む方向を変え、気配を消しつつ北へと向かう。
遠くに有る気配は追っては来ず、静かに闇へと溶けていった。
しばらく歩いたが景色は変わらず、どれだけ歩いたのか、どれ程の時間が経過したのか分からない。
「今は昼か、夕方か?」
時折僅かに射し込む光を見つけては空を見上げる。一点有るだけの穴から細い糸のように伸びる光だけで、日の位置は見えない。光の角度から位置を把握し、時刻を導きだすだけだ。
夕方前には遺跡に着きたいね。と、シェラが言ったが、皆が同じ思いで居る。どの辺りなのか、意識せずに歩けばすぐに迷うという危機感を抱えながらの移動だけに、精神的にもきつい。
木々の間から漏れる光が弱くなる頃、足元に岩が散見されるようになった。
「この辺りが遺跡か?」
ランタンに照らされたその場所は、木の根に侵食され、かつては建造物であったと思われる物は無惨に崩れ去っていた。柱は倒れ、床石も根に持ち上げられて傾いたり割れたりしており、原形をとどめていない。
それ故に、遺跡としての価値が無いと判断されたのか、遺跡周辺に人が何か手をつけたような痕跡は無く、手掛かりが有るとも思えなかった。
「ここを西に少し行ったところに、大きな遺跡があるみたい」
ともすれば気落ちしそうな一行に向かい、ラーソルバールは率先して動いた。
いや、動くことで心の中の葛藤を消そうとしているのかもしれない。エラゼルは何も言わずに見守ることしか出来ない自分が歯痒かった。
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