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第二部:第二十五章 任務の終わりと成果
(三)フォルテシア奔る②
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一人残ったフォルテシアは父と剣の訓練を行っていた。
「強くなったな。もう立派に騎士が務まる程の腕になってきたようだ」
「まだまだ。あの二人には手も足も出ない」
隙をついたつもりで剣を振り下ろすが、父に軽々と止められる。さすがに熟練した剣の腕を見せる父にまだ及ばない事を自覚する。であれんば、あの二人の強さはどれほどのものか。
「あのふたりとは?」
娘の剣を弾き、間合いを取る。
「さっきの旅の仲間の二人で騎士学校の生徒。特に片方はどう足掻いても勝てる気がしない」
「ほう、それはジャハネート様がご執心だという娘さんかな?」
「多分そう」
以前よりも多くを語るようになった娘の変化が、父親としては嬉しい。良い出会いがあり影響を受けたのだろうか、そうであれば騎士学校に推薦入学させた甲斐があるというものだ。
「好敵手か?」
「ううん、追いつきたいとは思うけど、背中は遠いから好敵手なんて言えない。尊敬する大好きな友」
「そうか、頑張って追いかけろ」
そう語りながら優しい顔をするようになった娘に、父は笑顔で応えた。
フォルテシアと別れたラーソルバール達がブルテイラの街に到着したのは、まだ陽が傾く少し前だった。雨雲はゆっくりと近づいているものの、降り出すまでにはもう少し時間がかかりそうで、濡れずに街に着けたのは幸運だと思えた。
「街に入るなら、身分証明の提示が必須だ」
デンティーク子爵の私兵だろうか、街の門を守る兵に制止された。
ヴァストールの身分証明はシルネラに預け、王都に戻っている。だが、帝国からの入国の際と同様にシルネラの身分証明書を使用すればヴァストール国内であっても、一切問題が無い。そのはずだった。
「シルネラの冒険者だと?」
兵士は眉間にしわを寄せ、ラーソルバール達を睨みつける。そして、他の兵士に目で合図を送り頷く。
「この証明書は偽造品ではないか!」
「は? シルネラ国民であり、これは共和国で発行された本物です。出入国の際にも一切そんな嫌疑をかけられた事はありません!」
「嘘をつくな、では何の目的があってこの街にやってきた!」
憤る兵士に今更発言を翻して、ヴァストールの国民ですと言ったところで信用されるはずもない。
「王都エイルディアに向かう途中です。宿泊場所を求めてこの街に立ち寄っただけです!」
「そのような話を信じられると思うか! 領内に不正に侵入して悪事を働くつもりであろうが、そうはさせん。この者達を捕縛せよ!」
その声に反応するように、詰め所から兵士達が現れ、ラーソルバール達の周囲を取り囲む。実力で切り抜ける事はできるかもしれないが、国内で荒事を起こすわけにもいかない。仲間の顔を見回すが、誰もが首を横に振る。抵抗するよりも、真実が明らかになるのを待つべきだ、という無言の合図だった。
誰も抵抗せず、大人しく拘束されると、武器を取り上げられる。
「これから取調べか?」
「そんなところだ」
「ならばその証明書が本物だと分かるだろう」
エラゼルはそこまで言って、はっとする。自分が所持していた剣には、見えないところにデラネトゥスの家紋が刻まれている。シルネラの冒険者がそのような剣を何故持っているのか、という話になるとややこしい。気付かれない事を願うしかなかった。
「馬車に乗れ」
命じられるままに乗り込むと女四人だけが乗ったところで、荷馬車は動き出し、男二人はその場に残された。
「どういう事だ、何故扱いを変える!」
憤るエラゼルの問いに、御者を勤める兵士も、一緒に乗り込んだ兵士達も何も答えない。
「何かあるね、これ」
エラゼルの耳元で、ラーソルバールはそっと囁く。
「うむ、何かの罠にかけられたようだな」
幌の隙間から覗く街並みは、陽は雲に遮られたか暗さを帯び始めていた。
「強くなったな。もう立派に騎士が務まる程の腕になってきたようだ」
「まだまだ。あの二人には手も足も出ない」
隙をついたつもりで剣を振り下ろすが、父に軽々と止められる。さすがに熟練した剣の腕を見せる父にまだ及ばない事を自覚する。であれんば、あの二人の強さはどれほどのものか。
「あのふたりとは?」
娘の剣を弾き、間合いを取る。
「さっきの旅の仲間の二人で騎士学校の生徒。特に片方はどう足掻いても勝てる気がしない」
「ほう、それはジャハネート様がご執心だという娘さんかな?」
「多分そう」
以前よりも多くを語るようになった娘の変化が、父親としては嬉しい。良い出会いがあり影響を受けたのだろうか、そうであれば騎士学校に推薦入学させた甲斐があるというものだ。
「好敵手か?」
「ううん、追いつきたいとは思うけど、背中は遠いから好敵手なんて言えない。尊敬する大好きな友」
「そうか、頑張って追いかけろ」
そう語りながら優しい顔をするようになった娘に、父は笑顔で応えた。
フォルテシアと別れたラーソルバール達がブルテイラの街に到着したのは、まだ陽が傾く少し前だった。雨雲はゆっくりと近づいているものの、降り出すまでにはもう少し時間がかかりそうで、濡れずに街に着けたのは幸運だと思えた。
「街に入るなら、身分証明の提示が必須だ」
デンティーク子爵の私兵だろうか、街の門を守る兵に制止された。
ヴァストールの身分証明はシルネラに預け、王都に戻っている。だが、帝国からの入国の際と同様にシルネラの身分証明書を使用すればヴァストール国内であっても、一切問題が無い。そのはずだった。
「シルネラの冒険者だと?」
兵士は眉間にしわを寄せ、ラーソルバール達を睨みつける。そして、他の兵士に目で合図を送り頷く。
「この証明書は偽造品ではないか!」
「は? シルネラ国民であり、これは共和国で発行された本物です。出入国の際にも一切そんな嫌疑をかけられた事はありません!」
「嘘をつくな、では何の目的があってこの街にやってきた!」
憤る兵士に今更発言を翻して、ヴァストールの国民ですと言ったところで信用されるはずもない。
「王都エイルディアに向かう途中です。宿泊場所を求めてこの街に立ち寄っただけです!」
「そのような話を信じられると思うか! 領内に不正に侵入して悪事を働くつもりであろうが、そうはさせん。この者達を捕縛せよ!」
その声に反応するように、詰め所から兵士達が現れ、ラーソルバール達の周囲を取り囲む。実力で切り抜ける事はできるかもしれないが、国内で荒事を起こすわけにもいかない。仲間の顔を見回すが、誰もが首を横に振る。抵抗するよりも、真実が明らかになるのを待つべきだ、という無言の合図だった。
誰も抵抗せず、大人しく拘束されると、武器を取り上げられる。
「これから取調べか?」
「そんなところだ」
「ならばその証明書が本物だと分かるだろう」
エラゼルはそこまで言って、はっとする。自分が所持していた剣には、見えないところにデラネトゥスの家紋が刻まれている。シルネラの冒険者がそのような剣を何故持っているのか、という話になるとややこしい。気付かれない事を願うしかなかった。
「馬車に乗れ」
命じられるままに乗り込むと女四人だけが乗ったところで、荷馬車は動き出し、男二人はその場に残された。
「どういう事だ、何故扱いを変える!」
憤るエラゼルの問いに、御者を勤める兵士も、一緒に乗り込んだ兵士達も何も答えない。
「何かあるね、これ」
エラゼルの耳元で、ラーソルバールはそっと囁く。
「うむ、何かの罠にかけられたようだな」
幌の隙間から覗く街並みは、陽は雲に遮られたか暗さを帯び始めていた。
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