気楽に異世界生活

誰が為の皿

「それにしても、よく予約が取れましたね。このカフェは今最も予約が取れない事で社交界でも有名ですのに」

「ふふふっ。お父様にお願いしたのよ。アニスが久しぶりに領地から来るんだから、王都の最新のスィーツを食べさせてあげたいって」

少し引っかかるところもあるが、この従姉妹と話す時はいつもの事なのでスルーする。

「それは、お気遣いありがとうございます。ロレーヌ様」

「あらアニス。ロレーヌお姉様って呼んでくれないの？」

「今はお屋敷の外ですし、私も１２歳になりましたので。今までデュフォー公爵家の皆様の優しさに甘えさせて頂きましたが、そろそろ弁えませんと」

「そう、残念ね。ロイド伯爵家だって高位貴族だし、そもそも私達は血の繋がった従姉妹なのに」

つまらなさそうに紅茶を飲むロレーヌの前に美しいケーキが届くと、嬉しげに口元を綻ばせながらフォークを手に取った。

「アニスのスフレチーズケーキも美味しそうね」

「ロレーヌ様、こちらもいかがですか？」

「まあ！宜しいの？ありがとう」

２つの皿を前に、お決まりの片頬に手をあて小首を傾げるポーズを取る。

うん。どうせ貴女が私の分まで食べるんだから、貴女の好きなスフレチーズケーキを頼んだのよ。

私は微笑むと、紅茶に口をつけたのだった。