ちょっと! どこ見てんのよ!? と電車の中で声を掛けてきた女の子は、超恥ずかしがり屋のツンデレ女子だった。

うさみち

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ちょっと! どこ見てんのよ!? と電車の中で声を掛けてきた女の子は、超恥ずかしがり屋のツンデレ女子だった。

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 満員電車にほぼ近い、朝の通勤・通学ラッシュ。
 それが嫌で始発に乗る僕は、比較的座りながら電車に乗ることができ、電車に揺られながら、スマホでライトノベルを読んで通学する日々を

 ――そう。
 昨日までは。

「ちょっと! どこ見てんのよ⁉︎」

 当然、無関係な僕は無視を決め込む。
 あらかた、どこかのおっさんが可愛い女の子でもじーっと見つめていたんだろう。欲求不満なおっさんも、見られていた女の子も大変だなぁ、なぁんて思いながらスマホをいじる。

「ちょっと、アンタのことなんですけどッ」

 やたらと声が近く感じ、スマホから視線を上へ向けてみると、そこには可愛らしい高校生がいた。
 150cmくらいの身長に、茶髪のポニーテール。
後毛を左右に垂らし、顔はめちゃくちゃ小顔で目鼻立ちもいい。スタイルもいいし、芸能人って言われても不思議じゃない。

 ――でもなにやら、ご立腹で……?

「あの、僕に何か用事?」
「だーかーらっ! どこ見てんのよ?」
「え? スマホだけど?」
「あーやだやだ。わかってるのよ? スマホ越しに私の胸見てたのわかってるんだから!」

 ――はい?

 そう言われてしまうと、見てしまうのが男のサガ。

 よく見てみると、確かに大きな胸があるが、見てくださいと言わんばかりに第二ボタンまで閉めずに開けて、胸を強調するかのように光るネックレスをつけている。

「ほら、見てるでしょ」
「あのー、僕はスマホ見てただけで、君のことなんか知らなかったし、なんなら今見てる僕のスマホを見せたっていい。ホラ」

 そう言って僕は、今ハマってるラブコメ系ミステリー小説を見せた。

「なっ何よ! 本当はどうだかわかったもんじゃないわ。今日のところは、許してあげる。じゃっ、。私、ここの駅だから!」

 と言って女の子は降りて行った。
 聞き間違えだろうか?

 ――

 どういうことだかさっぱりわからない。
 ――まぁ、いいか。続きを読もう。

 ◇

「ねえ、ちょっと! 目の前にいるんですけどっ!」

 次の日の朝。
 昨日の女の子はまた僕の目の前にいる。
 (言われたからには見てしまう僕も悪いのだが、)今日も第二ボタンまで全開だ。

「あのさ、僕、君に何かしたっけ?」
「な、なによ。覚えてないわけ?」

 ――と言われましても。俺の記憶に女の子はいない。

「うん、悪いけど……。」
「もうっ! 信じらんないっ! それじゃ、私ここの駅だから。!」
「――?」

 必死に記憶を辿るも、全く身に覚えのない僕。
 覚えてないものは、仕方ない。
 けれど……。つぎの日も、その次の日も。
 女の子に絡まれるようになった。

 ◇

「はいっ、これ! わ、わ、わ、忘れ物!」

 女の子は急に紙袋に入った何かを渡してきた。

「それじゃっ! !」

 紙袋の中を見てみると、手作りっぽいクッキーが入っていた。
 ――忘れ物? コレを、僕が?
 僕は全く理解できない……と思っていたら。
 手紙が一枚入っていた。
 可愛いピンク色の封筒は、ハートのシールで封緘ふうかんされて。中を開けてみれば、可愛いうさぎの便箋が出てきた。

『私の名前は、中山 さくら。このクッキー、一生懸命作ったの。食べてみてくれたら嬉しいな。
さくらより』

「ふはっ!」

 僕は、中山さんの突拍子もない行動とギャップについつい笑ってしまう。
 鈍い僕でも、さすがにわかった。
 コレは多分、超ツンデレな彼女なりの、僕へのアピールだと。

 ◇

 僕は、その日からスマホを見るのをやめた。
 僕が始発で乗った電車の、二駅後から彼女は乗ってやってくる。

「ちょ、ちょっと! 昨日のわ、わ、わ……忘れ物……じゃなくてクッキー、食べたの? どうなの?」

 僕はなんとなくわかった。
 この子は、面と向かって話すとツン、だけど中身はデレデレのデレだ。

「おいしかったよ? 中山さん?」
「中山だけど……さくらだからッ。じゃ、じゃあ私、もう降りるから」

 ――僕は試しに言ってみた。

。さくらちゃん」

 さくらちゃんは顔を真っ赤にして走って行った。
 隠したつもりだろうけど、残念。電車が駅を通過する過程で、君が恥ずかしそうに両手でほっぺたを押さえているのが丸見えだよ。
 その頃から、僕はさくらちゃんに興味を持ち始めた。

 ◇

「おはよ、さくらちゃん」
「お、お、おはよ……。ねえ、アンタ、名前は?」
「僕は横溝スバルだよ」
「横溝……スバル……」
「そ。ねぇ、立ち話もなんだから、隣に座ったら? せっかく始発なんだし」

 そう。今までも。
 始発で人がいないっていうのに、ワザと僕の前の吊り革に掴まってたんだ。
 でも僕は、スマホに夢中だったから、気がついてあげられなかった。

「ねぇ、さくらちゃんはどうして僕にクッキーくれたの?」

 僕はちょっとイジワルして聞いてみた。
 ツンデレの彼女は、なんで答えるだろうか。

「だっ、だから、わ、わ、わ、忘れ物……」
「僕は忘れ物してないよ?」
「スバルのイジワル!」

 と言って、彼女は電車を降りて行った。



 ◇

 イジワルした日から、なぜかさくらちゃんのツンデレは減速し始めた。
 僕が考えるに、この子はツンデレで、恥ずかしがり屋なんだ、きっと。

「ねぇ、さくらちゃんはなんで始発に乗ってるの?」
「――! やっぱり覚えてないんじゃん、スバル」

 さくらちゃんは、ぷくっと顔を膨らませた。

 ――でも僕は、悪いけど理由をさっぱり思い出せない。

「じゃあ、スバルはなんで始発に乗ってるの?」
「僕は前まで満員電車に乗ってたけど、そこで運悪く痴漢を捕まえてね。胸糞悪かったから、始発に切り替えたんだよね。静かでいいしさ。
 ――! まさか……。」
「そのまさかだよ、バカスバル」

 その瞬間、僕の脳裏にあの日の出来事が蘇る。

 背が低くて可愛い女の子が、泣きそうになってるのに違和感を感じて周りを見渡してみたら、ハァハァしているクソヤローが女の子のお尻を撫で回していたんだ。
 僕は咄嗟にクソヤローの腕を捕まえて、

「コイツ痴漢です!」

 って言って、次の駅で駅員室まで引っ張って行ってやった。そうだ、証言者として女の子の手を引かせてもらったんだった。

「思い出したよ。……ゴメン。あのクソヤローで頭がいっぱいだったんだよね」
「もう、全く! スバルを探すのに、2ヶ月もかかったんだよ? 時間変えて電車乗ったり、車両変えてみたり。やっと見つけた! と思ったらスマホばっかり見てるから。……仕方なく、第二ボタンまで開けたのに……」

 と、僕の右膝に両手をついて、必死に抗議するさくらちゃん。顔を蒸気させて、頬をぷくっと膨らませて。
 ――僕は改めて思った。可愛いって。

「ごめんごめん。もう、思い出したから。あの時は大変だったね、本当に」
「もう! スバルの鈍感っ! わ、わ、忘れ物の意味もわかったでしょ?」
「美味しかったよ、クッキー」
「そうじゃなくて、!」
「忘れ物の意味?」

 すると若菜ちゃんは、目を逸らしてポソリと答える。

「助けてくれてありがとうの、お礼のお菓子だから……。わかった? 激ニブスバル!」
「わかったよ。ごめん」

「ねぇ、忘れ物のお返しは、何がいい?」
「わかってるくせに……イジワルスバル……」

 僕の勘違いじゃなければ……忘れ物のお返しは、きっとコレ。

「ありがとう。さくらちゃん」

 頭を撫で撫で、いいこいいこする。

「~~! そ、そ、それだけじゃ足りないもんっ! 激ニブスバル! ……もっと、もっと、もーっと、すごいので、いいんだから……ッ! !」
「うん。

 その次の日から僕らの――ツンデレで恥ずかしがり屋な、甘い日々が始まった――。
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