11 / 18
幼馴染(悠司×行人)
再会
しおりを挟む
キーンコーン、カーンコーン……。
ああ、もう五時か、とその音を聞くと思う。
平日は会社で数字とにらめっこしているか、退屈な会議の終わりを今か今かと待っているかでいつの間にか通り過ぎていくだけの時刻だけれど、家で土日を過ごす時だけ、この鐘の音で時刻を知る。昔と変わらない雑音混じりのそのチャイム放送を聞くと、いまだに少しセンチメンタルな気分になってしまうのが我ながら情けない。
小学生の時、友達と遊んでいてもこのチャイムが鳴ったら帰ってきなさいと言われていた。もちろん、そんな言いつけは守らずいつも怒られるところまでがセットだ。
二年生の夏休みあけに、一人の転校生がやってきた。
「俺、悠司。お前は?」
「……行人」
「じゃあお前はユキ! ユキ、どっか遊び行こうぜ!」
「お、おう……?」
嵐のようにやってきて、持ち前の屈託ない明るさであっという間にクラスに溶け込んだ悠司は、またたく間に人気者になった。
そんな悠司はクラスの中でも元気が有り余ってる連中と遊ぶのが自然な流れに見えたのに、どちらかといえばおとなしくて、校庭ではしゃぎ回るよりも教室で図鑑を眺めていたい方だった俺を、悠司はなぜかしきりに構った。
「何読んでんの? スゲー、俺本とかすぐ飽きちゃって読めないんだ。今度俺にも教えろよ」
「うん、いいけど……」
「約束な!」
こうして、大勢で遊ぶのが苦手だった俺と悠司はよく二人で放課後を過ごした。俺が自分の好きな図鑑を見せて話をすることもあれば、悠司が俺を引っ張って外で遊ぶこともあった。おかげで、悠司と仲のいいクラスの男子達とも、俺は少しずつ打ち解けていった。
六年に上がる頃には、悠司はぐんぐん背が伸びて、女子達からしょっちゅう告白されるような存在になっていた。校庭の隅っこや廊下の端で行われるその光景を目にするたび、なぜか胸が苦しくなって俺はそそくさとその場を離れた。そうすると、決まって悠司が俺を追いかけてきて、何事もなかったかのようにバカ話をする。そんな、自分でも何を感じているのか、どうしていいのかわからない季節が一つ、二つと過ぎていった。
今なら、俺にもわかる。あれはきっと、初恋だった。俺は悠司のことが、好きだった。
もちろん、当時の俺にその自覚ができたとして、あの女の子たちみたいに悠司に気持ちを打ち明けるなんてできっこなかったんだから、分からなくてよかったんだとは思う。
自分の気持ちが分かってきた頃、悠司は俺の隣にはいなかった。
「え、引っ越すの」
「ああ、また親が転勤なったってさ。……これ、俺のアカウントだから。スマホ、買ってもらったら連絡しろよ」
ノートを破いたであろう紙切れに殴り書きされたメモともいえないものを、俺は大切に机にしまった。
中学に上がって最初のテストの合格を条件にねだったスマホで、震える手で引っ張り出してきたメモの文字列を画面に入力し、ものすごい時間をかけて「行人です。そっちは元気か」の一言だけを絞り出して送信したメッセージは、しかしいつまでも既読にならなかった。
中学、高校と順調に図鑑の虫は植物オタクへと成長し、俺は今、それなりに大手の化粧品メーカーの研究員をやっている。その後、多少友人と呼べる存在はできたし、そこそこ会社の中でも上手くやれている方だとは思う。でも、あの時みたいに、胸が苦しくなるほど誰かに惹かれることはただの一度もない。
「ね、聞いた? 今度出る新商品のCM、ユウジ起用するって!」
「聞いた聞いた! やばいよね、よくあんなトップモデル引っ張ってきたなあうちのプロモチーム。いつも無茶苦茶な要求してくるけど、今回だけは許しちゃう」
「打ち合わせとかで来社しないかなー、部署関係ないけどお茶出ししたい!」
「見るだけでなんかいいホルモン出そうだよね~」
職場の女性たちが今日もおしゃべりに花を咲かせている。あんなふうに、誰かにときめいていられるのが少しだけ羨ましい。リアルな恋愛なんて贅沢は言わないから、俺だって誰かに夢を見たい。
「……同窓会?」
帰宅した俺は、自分の私用スマホに届いていた一通のメッセージに目を見開いた。
『ご無沙汰してます。〇〇小六年一組で一緒だった鈴木です。一斉送信にて失礼します。……』
登録だけしていてろくに見てもいなかったSNSに登録していた小学校の名前から辿ってきたらしい幹事からのメッセージに、俺は迷う間もなく出席の返事を送っていた。
悠司が来るのかどうかは分からない。それでも何か、これがどこかにつながるかもしれない、という淡い期待を抑えることができなかった。
指定された日時に、案内にあった会場について受付を済ませる。心臓が今朝からずっと異常な頻脈で、そろそろ倒れるんじゃないかとさえ思う。
中に入って飲み物を渡され、きょろきょろと辺りを見回す。面影がなんとなくありそうな奴もいれば、女の子たちはほとんどが髪色も変わってメイクもしているせいか誰が誰だか分からない。
「行人じゃん! 来るって知らなかったわ。元気してたか?」
声に振り向けば、悠司を介して少し遊ぶようになった男子グループの一人だった。だいぶ横に成長して、丸々とした顔は同い年と思えない貫禄がつき始めている。
「そういえば悠司も来るって言ってたぜ。もう少しで着くんじゃないかな」
「えっ」
俺はいよいよ心臓が口から出そうになるのを必死で抑えた。
悠司に会える……!
「あいつも今じゃ売れっ子だもんな、よく都合ついたなあ。いやー、なんか不思議な気分だわ」
その言葉の意味を聞き返そうとした時、入り口の辺りで歓声が上がって、俺は振り向いた。
「悠司くんじゃん! 久しぶり! ってか、モデルになったって!」
女の子に群がられるように囲まれた、長身の男。
「悠、司……」
あれが。俺が昔遊んでいた……。
固まったまま身動きができなくなった俺と目が合った悠司が、それまで愛想笑いを振りまいていた女子たちをかき分けて、いきなり大股でこちらへ歩いてくる。
「ユキ!」
顔は精悍になり見上げるほど背も高く逞しくなって、一見しただけではあの悠司だと分からないほどの色男。でも、その声は、紛れもなくあの悠司だった。
「ゆう……」
名前を呼ぶ暇も与えられず、がっしりとした腕に抱き込まれて、俺は目を白黒させる。
「会いたかった」
その声に滲むのは、俺と同じ熱だって思っていいのか。
「ずっと、会いたかった」
「お前の働いてるメーカーの、広告のモデル。俺、すごい頑張ってもぎ取ったから。お前に会いに行けるように」
信じられなくて、見開いた俺の目から、雫がこぼれ落ちた。
ーーー
第74回 お題「夕方5時のチャイム」「センチメンタル」
ああ、もう五時か、とその音を聞くと思う。
平日は会社で数字とにらめっこしているか、退屈な会議の終わりを今か今かと待っているかでいつの間にか通り過ぎていくだけの時刻だけれど、家で土日を過ごす時だけ、この鐘の音で時刻を知る。昔と変わらない雑音混じりのそのチャイム放送を聞くと、いまだに少しセンチメンタルな気分になってしまうのが我ながら情けない。
小学生の時、友達と遊んでいてもこのチャイムが鳴ったら帰ってきなさいと言われていた。もちろん、そんな言いつけは守らずいつも怒られるところまでがセットだ。
二年生の夏休みあけに、一人の転校生がやってきた。
「俺、悠司。お前は?」
「……行人」
「じゃあお前はユキ! ユキ、どっか遊び行こうぜ!」
「お、おう……?」
嵐のようにやってきて、持ち前の屈託ない明るさであっという間にクラスに溶け込んだ悠司は、またたく間に人気者になった。
そんな悠司はクラスの中でも元気が有り余ってる連中と遊ぶのが自然な流れに見えたのに、どちらかといえばおとなしくて、校庭ではしゃぎ回るよりも教室で図鑑を眺めていたい方だった俺を、悠司はなぜかしきりに構った。
「何読んでんの? スゲー、俺本とかすぐ飽きちゃって読めないんだ。今度俺にも教えろよ」
「うん、いいけど……」
「約束な!」
こうして、大勢で遊ぶのが苦手だった俺と悠司はよく二人で放課後を過ごした。俺が自分の好きな図鑑を見せて話をすることもあれば、悠司が俺を引っ張って外で遊ぶこともあった。おかげで、悠司と仲のいいクラスの男子達とも、俺は少しずつ打ち解けていった。
六年に上がる頃には、悠司はぐんぐん背が伸びて、女子達からしょっちゅう告白されるような存在になっていた。校庭の隅っこや廊下の端で行われるその光景を目にするたび、なぜか胸が苦しくなって俺はそそくさとその場を離れた。そうすると、決まって悠司が俺を追いかけてきて、何事もなかったかのようにバカ話をする。そんな、自分でも何を感じているのか、どうしていいのかわからない季節が一つ、二つと過ぎていった。
今なら、俺にもわかる。あれはきっと、初恋だった。俺は悠司のことが、好きだった。
もちろん、当時の俺にその自覚ができたとして、あの女の子たちみたいに悠司に気持ちを打ち明けるなんてできっこなかったんだから、分からなくてよかったんだとは思う。
自分の気持ちが分かってきた頃、悠司は俺の隣にはいなかった。
「え、引っ越すの」
「ああ、また親が転勤なったってさ。……これ、俺のアカウントだから。スマホ、買ってもらったら連絡しろよ」
ノートを破いたであろう紙切れに殴り書きされたメモともいえないものを、俺は大切に机にしまった。
中学に上がって最初のテストの合格を条件にねだったスマホで、震える手で引っ張り出してきたメモの文字列を画面に入力し、ものすごい時間をかけて「行人です。そっちは元気か」の一言だけを絞り出して送信したメッセージは、しかしいつまでも既読にならなかった。
中学、高校と順調に図鑑の虫は植物オタクへと成長し、俺は今、それなりに大手の化粧品メーカーの研究員をやっている。その後、多少友人と呼べる存在はできたし、そこそこ会社の中でも上手くやれている方だとは思う。でも、あの時みたいに、胸が苦しくなるほど誰かに惹かれることはただの一度もない。
「ね、聞いた? 今度出る新商品のCM、ユウジ起用するって!」
「聞いた聞いた! やばいよね、よくあんなトップモデル引っ張ってきたなあうちのプロモチーム。いつも無茶苦茶な要求してくるけど、今回だけは許しちゃう」
「打ち合わせとかで来社しないかなー、部署関係ないけどお茶出ししたい!」
「見るだけでなんかいいホルモン出そうだよね~」
職場の女性たちが今日もおしゃべりに花を咲かせている。あんなふうに、誰かにときめいていられるのが少しだけ羨ましい。リアルな恋愛なんて贅沢は言わないから、俺だって誰かに夢を見たい。
「……同窓会?」
帰宅した俺は、自分の私用スマホに届いていた一通のメッセージに目を見開いた。
『ご無沙汰してます。〇〇小六年一組で一緒だった鈴木です。一斉送信にて失礼します。……』
登録だけしていてろくに見てもいなかったSNSに登録していた小学校の名前から辿ってきたらしい幹事からのメッセージに、俺は迷う間もなく出席の返事を送っていた。
悠司が来るのかどうかは分からない。それでも何か、これがどこかにつながるかもしれない、という淡い期待を抑えることができなかった。
指定された日時に、案内にあった会場について受付を済ませる。心臓が今朝からずっと異常な頻脈で、そろそろ倒れるんじゃないかとさえ思う。
中に入って飲み物を渡され、きょろきょろと辺りを見回す。面影がなんとなくありそうな奴もいれば、女の子たちはほとんどが髪色も変わってメイクもしているせいか誰が誰だか分からない。
「行人じゃん! 来るって知らなかったわ。元気してたか?」
声に振り向けば、悠司を介して少し遊ぶようになった男子グループの一人だった。だいぶ横に成長して、丸々とした顔は同い年と思えない貫禄がつき始めている。
「そういえば悠司も来るって言ってたぜ。もう少しで着くんじゃないかな」
「えっ」
俺はいよいよ心臓が口から出そうになるのを必死で抑えた。
悠司に会える……!
「あいつも今じゃ売れっ子だもんな、よく都合ついたなあ。いやー、なんか不思議な気分だわ」
その言葉の意味を聞き返そうとした時、入り口の辺りで歓声が上がって、俺は振り向いた。
「悠司くんじゃん! 久しぶり! ってか、モデルになったって!」
女の子に群がられるように囲まれた、長身の男。
「悠、司……」
あれが。俺が昔遊んでいた……。
固まったまま身動きができなくなった俺と目が合った悠司が、それまで愛想笑いを振りまいていた女子たちをかき分けて、いきなり大股でこちらへ歩いてくる。
「ユキ!」
顔は精悍になり見上げるほど背も高く逞しくなって、一見しただけではあの悠司だと分からないほどの色男。でも、その声は、紛れもなくあの悠司だった。
「ゆう……」
名前を呼ぶ暇も与えられず、がっしりとした腕に抱き込まれて、俺は目を白黒させる。
「会いたかった」
その声に滲むのは、俺と同じ熱だって思っていいのか。
「ずっと、会いたかった」
「お前の働いてるメーカーの、広告のモデル。俺、すごい頑張ってもぎ取ったから。お前に会いに行けるように」
信じられなくて、見開いた俺の目から、雫がこぼれ落ちた。
ーーー
第74回 お題「夕方5時のチャイム」「センチメンタル」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる