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部下と傷心上司(古谷×安江)
「特別な日にも、そうでない日にも」
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課の部下たちがそわそわとしている様子で、安江は季節を知る。
「バレンタイン……かぁ」
昨今では女性から男性にというより、女性たちがこぞってお目当てのチョコレートブランドの新作やら限定品やらを勝ち取りに行く戦争じみたイベントとなっていると、部下の一人から聞いた。安江の学生時代とはだいぶ様相が違うようである。
まだ夢見がちだった学生の頃は、密かに思う相手に憚らずチョコと手紙を贈れる女の子たちが恨めしいイベントでしかなかった。晴れて同性の恋人ができてからは普段より少しだけ積極的になっても許される年に数回の機会として張り切った記憶があるような気がするが、それも今となっては色々複雑な思いになるので普段はあまり思い出さないようにしている。
穏やかに、若者たちを微笑ましく見守る菩薩か何かのように。昨年の夏の終わりに長く付き合った恋人から唐突な別れを告げられ、それ以来久しぶりの独り身に耐えている安江は、そんな気持ちで過ごすことを固く決意していた。
その決意を呆気なく瓦解させにくる人物がすぐそばにいることに、安江はこの時まだ気づいていなかった。
「それじゃぁお先に失礼しま~す」
「おーお疲れさんー」
「私もお先です~」
「おーみんな今日は早いねえ、優秀優秀」
バレンタインデーを来週半ばに控えた金曜日、営業部第三課の女性たちが定時を回った途端ばたばたとPCを閉じて立ち上がった。
「今日が狙い目なんですっ!」
一人が鼻息も荒く訴えると、残りの三人も一斉に頷く。なんでも今年のバレンタインは平日なので、その前の週末にあらかためぼしいものは売り切れてしまうのだという。
「じゃあ来週戦果の報告を待ってるよ」
はーい、と朗らかな声をあげた部下たちを見送り、安江はPCに向き直った。そういえば男性陣の四人のうち三人はいつものように外回りだが、全員直帰すると言っていた。詳しく聞いてはいないがこっちもおそらくデートの予定か何か入れているのだろう、と今更のように見当がつく。自分は今年はそんなイベントごととは一切縁遠い生活になるのだし、せめて部下たちが仕事をしやすいようにバックアップに努めよう、と安江は出そうになったため息を飲み込んで、ぬるくなったコーヒーの入ったマグカップを口に運んだ。
しばらく集中していたらしい。安江が目頭をもみながら軽く伸びをして辺りを見渡すと、フロアからは人がほとんど消えており、あとはいつも遅くまで残っている総務部が営業部とは反対の隅に数人残っているだけになっていた。
「ふう」
いい加減帰るか、と時計を見ながらため息をついたのと同じタイミングで、かたん、と背後で音がした。
——あ、そういえば。
残りの男性陣四人のうち三人は直帰だが、一人だけ。
「課長」
かつ、かつ、と人の減ったフロアの床に靴音を響かせ、近づいてくる人影に、安江は背中を緊張させた。
「古谷」
ゆっくり振り向く。自然な顔ができている、だろうか。
君はまだ帰らないのか、と聞こうとして口を開いたまま、安江の視線は古谷の手元に引き寄せられた。
光沢ある深い赤の包装紙に包まれ、黒に金字でロゴらしきものが織られているリボンがかかった、細長い箱。それが何であるか、さっきの今でさすがに安江にも分かる。
その箱がスッと自分の方に差し出されて、安江は戸惑った。
「課長、甘いもの、お好きですよね」
お好きですか、ではなく、お好きですよね、と確認するように聞かれることに、また戸惑う。
確かに、安江は甘いものが好きだった。それこそこの時期、主戦場であるだろう百貨店の特設売り場にこそ乗り込む勇気はないが、さりげなくそれよりは少し地味なショッピングモールの製菓店などでフェアの内容をチェックしてしまうくらいには。それでも今年はなんだか惨めな気持ちになりそうな気がして、あえて視界に入れないようにしていたのだ。
それがなぜ古谷に把握されているのだろう、と訝しく思った安江の心中が顔に出ていたらしい。
「飲み会の時、いつもデザートが出る頃にはみんな酔っててほとんど見向きもしないのに、課長は必ず食べてたんで、お好きなんだろうなあと」
見られていた。
不意を突かれ、安江は取り繕う暇もなくかあ、と顔が熱くなるのを感じた。誤魔化すように片手で鼻から下を覆う。
「……っ」
目を伏せた安江の視界の端に映る古谷の大きな体躯が、わずかに身じろいだ気がした。安江が視線だけ上に向けると、先ほどまでまっすぐ安江を射抜いていた古谷の視線はわずかに逸らされ、目元がうっすら赤く染まっている。
——え……っ。
予想だにしない反応に、安江は固まった。
——何それ、反則だろ。
何が反則なのか自分でもよくわからないが、そう思った。
沈黙は時間にしてものの数秒だったに違いないが、やたらと長く感じられた。
「っ、とにかく、これ、どうぞ」
それだけ押し出すように言うと、有無を言わさぬ力強さで素早く箱を安江の手元に押し付けると、古谷はそのまま頭を下げてフロアの入り口の方へ歩き去っていった。
古谷が自分のところに来た時点ですでに帰り支度を済ませていたのだ、と安江が気づいたのはそれから随分経ってからだった。
艶々とした表面を見つめ、安江は何度目かのため息をついた。
「よし」
昨日帰宅後すぐに鞄から出して冷蔵庫に入れた細長い箱のことは頭から追い出すようにさっさとシャワーを浴びて寝た安江である。
しかし今朝目が覚めて一番に思い出したのがそれだったのだから、もうこれ以上引き伸ばすのは無理だろうと結論づけ、朝から箱と対峙している。
リボンをほどき、包装紙を破らないように慎重に開いた中の箱はしっかりとした厚紙製の高級そうな黒い箱だった。思わずこくりと唾をのみながらぱか、と蓋を開けると芳醇な香りに包まれた。細長い箱の中に鎮座ましましているのは、たったの五粒。
「……お高いやつじゃん……」
古谷はどうしてこれを安江に渡してきたのだろうか。
「誰かからもらったけど、要らなかったのかな」
それくらいしか思い当たらなかったのだけれど、口に出したらひどく苦い響きがした。
「……っ」
チョコレートに罪はない。ましてこんな高級そうな。
そうでなくたって、安江が甘いもの好きであることを古谷が覚えていてくれたというだけで、十分嬉しいはずだ。
なのになぜ、こんな苦しいような気持ちになるのだろう。
理由を深く考えてはいけない気がして、安江は一粒、そっと摘んで口に入れた。
「う、ま……」
感動するほど繊細な甘みと香りが、鼻を抜けていく。
ほう、と安江はため息をついた。美味しいチョコレートに、罪はないのだ。
もう一粒行くか、後の楽しみにとっておくか悩んでいた安江の目に、開けた蓋の裏に印刷してある文字が目にとまった。
『特別な日にも、そうでない日にも』
何語かわからないアルファベットの流麗な文字の下に、さりげなく日本語も添えてある。海外のブランドの日本市場向け、というところだろう。さすが古谷、贈られるものも洒落ている。
「特別な日、ね……」
自分にとってそれはまた訪れるのだろうか、と思いながら、そっと蓋を閉じた。
結局誘惑に抗えず、週末の間に五粒全て平らげた安江は、お礼を伝えるタイミングを測りあぐねていた。
廊下の突き当たりを出たところの非常階段にある共用の喫煙所に立ち、外を眺めながら考えに耽る。安江自身は喫煙者ではないが、時々こうして外の空気を吸いにここにくる習慣があった。
ぎい、と扉が軋む音がして、安江が振り返る。そこに今まさに考えていた相手の顔があったものだから、一瞬反応が遅れた。
「古、谷」
「お疲れ様です」
「君、吸うのか」
「いえ、でも気分転換しに、たまに」
「俺と一緒だな」
「はい」
くす、と笑いが起きて、空気が緩んだ。
だから、素直にいえた。
「先週のあれ、ありがとう。美味しかったよ」
古谷の顔がみるみる輝いた。ぱあ、と音がしそうな具合である。
「よかった、ぁ……」
心底ほっとしているような様子を意外に思いながら、お世辞ではないと表情にこめて安江は頷いて見せた。
「あれ、でも高そうなやつだったけど、よかったの」
「?」
「いや、俺なんかがもらっちゃって」
本当は君がもらうものだったんだろ、とはすんでのところで飲み込む。
途端に、古谷の顔に見慣れない表情が走った気がした。一瞬のことで、それがなんであったのか分かる前に、いつもの人当たりのいい笑顔に戻ってしまった。
「もちろんですよ。もし気に入ってもらえたなら、また買いに行きましょう」
あまりに自然に言われたから、そうだねと頷きかけた。しかし全く何を言われているのか自分が理解できていないことに気づいて、安江の笑顔がそのまま固まる。
——また買いに……行きましょう……?
古谷の顔に冗談を言っているような気配はなかった。
大きな疑問符が張り付いているだろう安江に、駄目押しのようににこり、と古谷が笑いかける。
「特別な日にも、そうでない日にも。いつ食べたって、いいんですよ」
どこかで聞いたことがあるな、と思ったその言葉の出どころを安江が思い出し、それは封を開けていなかったチョコレートをただ「誰かからもらった」だけならば知るはずもないということに思い当たって潰れた悲鳴を上げる頃には、もちろんその場に古谷の姿はなかった。
「特別な日」は、案外すぐそこまで来ている、のかもしれない。
ーーー
第100回 お題「甘いもの」
「バレンタイン……かぁ」
昨今では女性から男性にというより、女性たちがこぞってお目当てのチョコレートブランドの新作やら限定品やらを勝ち取りに行く戦争じみたイベントとなっていると、部下の一人から聞いた。安江の学生時代とはだいぶ様相が違うようである。
まだ夢見がちだった学生の頃は、密かに思う相手に憚らずチョコと手紙を贈れる女の子たちが恨めしいイベントでしかなかった。晴れて同性の恋人ができてからは普段より少しだけ積極的になっても許される年に数回の機会として張り切った記憶があるような気がするが、それも今となっては色々複雑な思いになるので普段はあまり思い出さないようにしている。
穏やかに、若者たちを微笑ましく見守る菩薩か何かのように。昨年の夏の終わりに長く付き合った恋人から唐突な別れを告げられ、それ以来久しぶりの独り身に耐えている安江は、そんな気持ちで過ごすことを固く決意していた。
その決意を呆気なく瓦解させにくる人物がすぐそばにいることに、安江はこの時まだ気づいていなかった。
「それじゃぁお先に失礼しま~す」
「おーお疲れさんー」
「私もお先です~」
「おーみんな今日は早いねえ、優秀優秀」
バレンタインデーを来週半ばに控えた金曜日、営業部第三課の女性たちが定時を回った途端ばたばたとPCを閉じて立ち上がった。
「今日が狙い目なんですっ!」
一人が鼻息も荒く訴えると、残りの三人も一斉に頷く。なんでも今年のバレンタインは平日なので、その前の週末にあらかためぼしいものは売り切れてしまうのだという。
「じゃあ来週戦果の報告を待ってるよ」
はーい、と朗らかな声をあげた部下たちを見送り、安江はPCに向き直った。そういえば男性陣の四人のうち三人はいつものように外回りだが、全員直帰すると言っていた。詳しく聞いてはいないがこっちもおそらくデートの予定か何か入れているのだろう、と今更のように見当がつく。自分は今年はそんなイベントごととは一切縁遠い生活になるのだし、せめて部下たちが仕事をしやすいようにバックアップに努めよう、と安江は出そうになったため息を飲み込んで、ぬるくなったコーヒーの入ったマグカップを口に運んだ。
しばらく集中していたらしい。安江が目頭をもみながら軽く伸びをして辺りを見渡すと、フロアからは人がほとんど消えており、あとはいつも遅くまで残っている総務部が営業部とは反対の隅に数人残っているだけになっていた。
「ふう」
いい加減帰るか、と時計を見ながらため息をついたのと同じタイミングで、かたん、と背後で音がした。
——あ、そういえば。
残りの男性陣四人のうち三人は直帰だが、一人だけ。
「課長」
かつ、かつ、と人の減ったフロアの床に靴音を響かせ、近づいてくる人影に、安江は背中を緊張させた。
「古谷」
ゆっくり振り向く。自然な顔ができている、だろうか。
君はまだ帰らないのか、と聞こうとして口を開いたまま、安江の視線は古谷の手元に引き寄せられた。
光沢ある深い赤の包装紙に包まれ、黒に金字でロゴらしきものが織られているリボンがかかった、細長い箱。それが何であるか、さっきの今でさすがに安江にも分かる。
その箱がスッと自分の方に差し出されて、安江は戸惑った。
「課長、甘いもの、お好きですよね」
お好きですか、ではなく、お好きですよね、と確認するように聞かれることに、また戸惑う。
確かに、安江は甘いものが好きだった。それこそこの時期、主戦場であるだろう百貨店の特設売り場にこそ乗り込む勇気はないが、さりげなくそれよりは少し地味なショッピングモールの製菓店などでフェアの内容をチェックしてしまうくらいには。それでも今年はなんだか惨めな気持ちになりそうな気がして、あえて視界に入れないようにしていたのだ。
それがなぜ古谷に把握されているのだろう、と訝しく思った安江の心中が顔に出ていたらしい。
「飲み会の時、いつもデザートが出る頃にはみんな酔っててほとんど見向きもしないのに、課長は必ず食べてたんで、お好きなんだろうなあと」
見られていた。
不意を突かれ、安江は取り繕う暇もなくかあ、と顔が熱くなるのを感じた。誤魔化すように片手で鼻から下を覆う。
「……っ」
目を伏せた安江の視界の端に映る古谷の大きな体躯が、わずかに身じろいだ気がした。安江が視線だけ上に向けると、先ほどまでまっすぐ安江を射抜いていた古谷の視線はわずかに逸らされ、目元がうっすら赤く染まっている。
——え……っ。
予想だにしない反応に、安江は固まった。
——何それ、反則だろ。
何が反則なのか自分でもよくわからないが、そう思った。
沈黙は時間にしてものの数秒だったに違いないが、やたらと長く感じられた。
「っ、とにかく、これ、どうぞ」
それだけ押し出すように言うと、有無を言わさぬ力強さで素早く箱を安江の手元に押し付けると、古谷はそのまま頭を下げてフロアの入り口の方へ歩き去っていった。
古谷が自分のところに来た時点ですでに帰り支度を済ませていたのだ、と安江が気づいたのはそれから随分経ってからだった。
艶々とした表面を見つめ、安江は何度目かのため息をついた。
「よし」
昨日帰宅後すぐに鞄から出して冷蔵庫に入れた細長い箱のことは頭から追い出すようにさっさとシャワーを浴びて寝た安江である。
しかし今朝目が覚めて一番に思い出したのがそれだったのだから、もうこれ以上引き伸ばすのは無理だろうと結論づけ、朝から箱と対峙している。
リボンをほどき、包装紙を破らないように慎重に開いた中の箱はしっかりとした厚紙製の高級そうな黒い箱だった。思わずこくりと唾をのみながらぱか、と蓋を開けると芳醇な香りに包まれた。細長い箱の中に鎮座ましましているのは、たったの五粒。
「……お高いやつじゃん……」
古谷はどうしてこれを安江に渡してきたのだろうか。
「誰かからもらったけど、要らなかったのかな」
それくらいしか思い当たらなかったのだけれど、口に出したらひどく苦い響きがした。
「……っ」
チョコレートに罪はない。ましてこんな高級そうな。
そうでなくたって、安江が甘いもの好きであることを古谷が覚えていてくれたというだけで、十分嬉しいはずだ。
なのになぜ、こんな苦しいような気持ちになるのだろう。
理由を深く考えてはいけない気がして、安江は一粒、そっと摘んで口に入れた。
「う、ま……」
感動するほど繊細な甘みと香りが、鼻を抜けていく。
ほう、と安江はため息をついた。美味しいチョコレートに、罪はないのだ。
もう一粒行くか、後の楽しみにとっておくか悩んでいた安江の目に、開けた蓋の裏に印刷してある文字が目にとまった。
『特別な日にも、そうでない日にも』
何語かわからないアルファベットの流麗な文字の下に、さりげなく日本語も添えてある。海外のブランドの日本市場向け、というところだろう。さすが古谷、贈られるものも洒落ている。
「特別な日、ね……」
自分にとってそれはまた訪れるのだろうか、と思いながら、そっと蓋を閉じた。
結局誘惑に抗えず、週末の間に五粒全て平らげた安江は、お礼を伝えるタイミングを測りあぐねていた。
廊下の突き当たりを出たところの非常階段にある共用の喫煙所に立ち、外を眺めながら考えに耽る。安江自身は喫煙者ではないが、時々こうして外の空気を吸いにここにくる習慣があった。
ぎい、と扉が軋む音がして、安江が振り返る。そこに今まさに考えていた相手の顔があったものだから、一瞬反応が遅れた。
「古、谷」
「お疲れ様です」
「君、吸うのか」
「いえ、でも気分転換しに、たまに」
「俺と一緒だな」
「はい」
くす、と笑いが起きて、空気が緩んだ。
だから、素直にいえた。
「先週のあれ、ありがとう。美味しかったよ」
古谷の顔がみるみる輝いた。ぱあ、と音がしそうな具合である。
「よかった、ぁ……」
心底ほっとしているような様子を意外に思いながら、お世辞ではないと表情にこめて安江は頷いて見せた。
「あれ、でも高そうなやつだったけど、よかったの」
「?」
「いや、俺なんかがもらっちゃって」
本当は君がもらうものだったんだろ、とはすんでのところで飲み込む。
途端に、古谷の顔に見慣れない表情が走った気がした。一瞬のことで、それがなんであったのか分かる前に、いつもの人当たりのいい笑顔に戻ってしまった。
「もちろんですよ。もし気に入ってもらえたなら、また買いに行きましょう」
あまりに自然に言われたから、そうだねと頷きかけた。しかし全く何を言われているのか自分が理解できていないことに気づいて、安江の笑顔がそのまま固まる。
——また買いに……行きましょう……?
古谷の顔に冗談を言っているような気配はなかった。
大きな疑問符が張り付いているだろう安江に、駄目押しのようににこり、と古谷が笑いかける。
「特別な日にも、そうでない日にも。いつ食べたって、いいんですよ」
どこかで聞いたことがあるな、と思ったその言葉の出どころを安江が思い出し、それは封を開けていなかったチョコレートをただ「誰かからもらった」だけならば知るはずもないということに思い当たって潰れた悲鳴を上げる頃には、もちろんその場に古谷の姿はなかった。
「特別な日」は、案外すぐそこまで来ている、のかもしれない。
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第100回 お題「甘いもの」
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