幼馴染みに恋愛感情がないのは本当みたいですが、だからと言って何をしても許されるとは思わないでくださいね。

ふまさ

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 伯爵令嬢が「……それは」と言葉を濁す。

「わたしは勝手に、ネイトがアデラをあまりに優先するからだと思い込んでいたのですが……もしや他に、理由があるのですか? わたしに訊ねたいこととは、それに関係があるのではないですか?」

 伯爵令嬢は「……はい。その通りです」と、ぐっと拳を握った。

「……エリン様は、ネイト様を怖いと感じたことはありますか?」

 エリンは目を丸くした。怖い、とは。いつも笑顔のネイトからはかけ離れた印象だと思ったからだ。その様子に、伯爵令嬢が目を伏せる。

「……そう、ですか。なら、信じてもらえるかどうか……」

 少しの間のあと。エリンは伯爵令嬢に近付き、微かに震える手をとった。

「……エリン様?」

「どうしたのです? いったい、ネイトと何があったのですか?」

「…………」

「まだ話を聞いていないうちから、絶対に信じるとは約束はできません。ですが、はじめからあなたを否定するなど、決してしません。それだけは信じて」

 必死に訴える。すると、その熱意が伝わったのか。

「……ネイト様には、黙っていてもらえますか?」

 と、伯爵令嬢はぽつりと呟いた。エリンは「はい。約束します」と深く頷いてみせた。



「あたしは、ネイト様に一目惚れして……思いきって想いを告げたら、ネイト様と付き合えることになって、本当に嬉しかったのですけれど……傍にはいつも、アデラさんがいて」

 エリンは「ですね」と答える。伯爵令嬢は、ふふ、と薄く笑った。

「最初はね、我慢していたんですよ? アデラさんは悪い人ではありませんでしたし……強引に誘うのは、いつだってネイト様でしたから。今もあまりお変わりはないようで……」

「はい。登下校も昼食も、いつもネイトがアデラを連れてきます──愚痴のようでみっともないですが、アデラが原因で、デートを遅刻されたことが何度か。それどころか、キャンセルされたことすらあります。あなたもそうでした?」

 今まで誰にも言えず、溜め込んでいたものが、自分でも驚くほどスラスラと口をついて出てきた。伯爵令嬢が瞠目する。

「……エ、エリン様にまでそのようなことを。あの、そのこと公爵様に伝えたりなどは」

「したことはありませんね。ネイトの弟であるリックだけは承知していますが、わたしが誰にも言うなと伝えてあるので。侯爵も知りません」

「……何故、ですか? それほどまでにネイト様を愛しているからですか?」

「それもむろん、ありますが……その場合、アデラも責められることになるでしょう? それはわたしの本意ではありませんので」

 伯爵令嬢は「……何と、お優しい」と小さく囁いてから、

「ああ、やはり……あたしの心があまりに貧しかったせいで、ネイト様はあんなに怒ってしまわれたのかしら……」

 と、頭を抱えた。

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