幼馴染みに恋愛感情がないのは本当みたいですが、だからと言って何をしても許されるとは思わないでくださいね。

ふまさ

文字の大きさ
7 / 22

7

しおりを挟む
 伯爵令嬢が「……それは」と言葉を濁す。

「わたしは勝手に、ネイトがアデラをあまりに優先するからだと思い込んでいたのですが……もしや他に、理由があるのですか? わたしに訊ねたいこととは、それに関係があるのではないですか?」

 伯爵令嬢は「……はい。その通りです」と、ぐっと拳を握った。

「……エリン様は、ネイト様を怖いと感じたことはありますか?」

 エリンは目を丸くした。怖い、とは。いつも笑顔のネイトからはかけ離れた印象だと思ったからだ。その様子に、伯爵令嬢が目を伏せる。

「……そう、ですか。なら、信じてもらえるかどうか……」

 少しの間のあと。エリンは伯爵令嬢に近付き、微かに震える手をとった。

「……エリン様?」

「どうしたのです? いったい、ネイトと何があったのですか?」

「…………」

「まだ話を聞いていないうちから、絶対に信じるとは約束はできません。ですが、はじめからあなたを否定するなど、決してしません。それだけは信じて」

 必死に訴える。すると、その熱意が伝わったのか。

「……ネイト様には、黙っていてもらえますか?」

 と、伯爵令嬢はぽつりと呟いた。エリンは「はい。約束します」と深く頷いてみせた。



「あたしは、ネイト様に一目惚れして……思いきって想いを告げたら、ネイト様と付き合えることになって、本当に嬉しかったのですけれど……傍にはいつも、アデラさんがいて」

 エリンは「ですね」と答える。伯爵令嬢は、ふふ、と薄く笑った。

「最初はね、我慢していたんですよ? アデラさんは悪い人ではありませんでしたし……強引に誘うのは、いつだってネイト様でしたから。今もあまりお変わりはないようで……」

「はい。登下校も昼食も、いつもネイトがアデラを連れてきます──愚痴のようでみっともないですが、アデラが原因で、デートを遅刻されたことが何度か。それどころか、キャンセルされたことすらあります。あなたもそうでした?」

 今まで誰にも言えず、溜め込んでいたものが、自分でも驚くほどスラスラと口をついて出てきた。伯爵令嬢が瞠目する。

「……エ、エリン様にまでそのようなことを。あの、そのこと公爵様に伝えたりなどは」

「したことはありませんね。ネイトの弟であるリックだけは承知していますが、わたしが誰にも言うなと伝えてあるので。侯爵も知りません」

「……何故、ですか? それほどまでにネイト様を愛しているからですか?」

「それもむろん、ありますが……その場合、アデラも責められることになるでしょう? それはわたしの本意ではありませんので」

 伯爵令嬢は「……何と、お優しい」と小さく囁いてから、

「ああ、やはり……あたしの心があまりに貧しかったせいで、ネイト様はあんなに怒ってしまわれたのかしら……」

 と、頭を抱えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

愛されない妻は死を望む

ルー
恋愛
タイトルの通りの内容です。

私の夫は妹の元婚約者

彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。 そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。 けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。 「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」 挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。 最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。 それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。 まるで何もなかったかのように。

愛する人の手を取るために

碧水 遥
恋愛
「何が茶会だ、ドレスだ、アクセサリーだ!!そんなちゃらちゃら遊んでいる女など、私に相応しくない!!」  わたくしは……あなたをお支えしてきたつもりでした。でも……必要なかったのですね……。

夫で王子の彼には想い人がいるようですので、私は失礼します

四季
恋愛
十五の頃に特別な力を持っていると告げられた平凡な女性のロテ・フレールは、王子と結婚することとなったのだけれど……。

処理中です...