6 / 22
6
「わたしに、ですか?」
「……はい」
質問の内容が見当もつかないエリンは「構いませんが、何でしょう?」と、小首を傾げた。
「ええと……先ほど、廊下でのエリン様とネイト様の会話を聞いてしまいまして。あ、盗み聞きしていたわけではなく、たまたまでっ」
伯爵令嬢は慌てるが、エリンが「はい。信じますよ」と小さく笑ってくれたので、ほっと息をつき、話を続けた。
「公爵令嬢であるエリン様が婚約者でも、ネイト様は変わらず、アデラさんを優先しているのだなと思いまして……」
ああ、とエリンは苦笑した。
「そのことですか。まあ、そうですね」
大変ですねと、同情でもされるのかと思っていたエリンだったが──。
「……大丈夫ですか?」
伯爵令嬢は胸の前で手を組み、心配そうな双眸をエリンに向けてきた。
(同情……とは違うような。では、いったい)
エリンは「何がでしょう」と、一歩、足を前に出した。伯爵令嬢がうつ向く。
「……あたしの次にネイト様とお付き合いした方も、同じような体験をされたとおっしゃっていたので……ああ、でも。エリン様は公爵令嬢ですもの。さすがに」
一人言のようにぶつぶつ言いはじめた伯爵令嬢に、エリンが眉をひそめる。
「あの……」
「す、すみません。あたし、早とちりしてしまったのかもしれません」
伯爵令嬢が、あわあわと両手を左右にふる。一方のエリンは、公爵令嬢、という言葉が引っかっていた。
「わたしの身分が、何か関係があるのですか?」
「……い、いえ。その」
しん。
一瞬、あたりが静まり返ったものの、エリンは「わたしも、あなたに訊ねたいことがあります」と、すぐにその空気を破った。伯爵令嬢が姿勢を正す。
「は、はい」
「──あなたはどうして、ネイトと別れたのですか?」
「……はい」
質問の内容が見当もつかないエリンは「構いませんが、何でしょう?」と、小首を傾げた。
「ええと……先ほど、廊下でのエリン様とネイト様の会話を聞いてしまいまして。あ、盗み聞きしていたわけではなく、たまたまでっ」
伯爵令嬢は慌てるが、エリンが「はい。信じますよ」と小さく笑ってくれたので、ほっと息をつき、話を続けた。
「公爵令嬢であるエリン様が婚約者でも、ネイト様は変わらず、アデラさんを優先しているのだなと思いまして……」
ああ、とエリンは苦笑した。
「そのことですか。まあ、そうですね」
大変ですねと、同情でもされるのかと思っていたエリンだったが──。
「……大丈夫ですか?」
伯爵令嬢は胸の前で手を組み、心配そうな双眸をエリンに向けてきた。
(同情……とは違うような。では、いったい)
エリンは「何がでしょう」と、一歩、足を前に出した。伯爵令嬢がうつ向く。
「……あたしの次にネイト様とお付き合いした方も、同じような体験をされたとおっしゃっていたので……ああ、でも。エリン様は公爵令嬢ですもの。さすがに」
一人言のようにぶつぶつ言いはじめた伯爵令嬢に、エリンが眉をひそめる。
「あの……」
「す、すみません。あたし、早とちりしてしまったのかもしれません」
伯爵令嬢が、あわあわと両手を左右にふる。一方のエリンは、公爵令嬢、という言葉が引っかっていた。
「わたしの身分が、何か関係があるのですか?」
「……い、いえ。その」
しん。
一瞬、あたりが静まり返ったものの、エリンは「わたしも、あなたに訊ねたいことがあります」と、すぐにその空気を破った。伯爵令嬢が姿勢を正す。
「は、はい」
「──あなたはどうして、ネイトと別れたのですか?」
あなたにおすすめの小説
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。
喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。
学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。
しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。
挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。
パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。
そうしてついに恐れていた事態が起きた。
レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。