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「ねえ、言った? 言ったよね? だってあきらかに、アデラの様子はおかしかった。涙を拭ったあともあったし。きみが泣かせたの?」
いつものネイトとあまりに違う雰囲気に、伯爵令嬢が泣きそうに言葉を詰まらせる。
「あ、あの……」
だが、それで追求を緩めてくれるわけもなく。
「なに? はっきり言って」
「あたしはただ……ネイト様と二人になりたくて……」
「は? なってじゃないか。デートにアデラを連れてきたこと、今まであった?」
「……ない、ですが……学園ではいつもアデラさんが一緒ですし……それに週に一度のデートでもアデラさんが原因で……その、遅刻されたり、キャンセルされたこともありますし……」
「アデラが原因? 嫌な言い方するね。それに遅刻もキャンセルも、ちゃんと理由があってしたことだ。きみもそれは承知しているよね?」
「……けれど。どうしても、ネイト様は恋人のあたしより、幼馴染みのアデラさんを大事にされているようで、あたし……っ」
絞り出すようにもらされた伯爵令嬢の言葉に、ネイトは「何それ」と吐き捨てた。
「──嫉妬? ぼくはアデラに恋愛感情はないって言っているのに、おかしくない?」
「で、ですが……っ」
そのとき。ネイトの顔から、すっと表情が消えた。
「そんな身勝手な理由で、きみはアデラを泣かせたの?」
「──ひっ」
ネイトは壁から手を離すと、そのまま伯爵令嬢の首を掴んだ。力は込められていない。だが、伯爵令嬢に恐怖を与えるのは、充分だった。
「アデラから、きみは優しい人だと聞いていたから、付き合ったのに。残念だよ」
僅かに、手に力が込められた。少しの圧迫を感じ、伯爵令嬢の手が震えた。
「ねえ、伯爵令嬢。アデラが子爵令嬢だからって、泣かせたの? なら、覚えておいて。ぼくは、侯爵令息だよ。この意味、わかるよね?」
返事は?
顔を近付けられ、伯爵令嬢はできる範囲で小さく、こくこくと頷いた。
「うん。じゃあ今後、ぼくにも、アデラにも近付かないでね。もし約束を破ったら、ぼくはきみに、何をするかわからないよ?」
伯爵令嬢は涙を流しながら、掠れた声で「……はい」と答えた。
いつものネイトとあまりに違う雰囲気に、伯爵令嬢が泣きそうに言葉を詰まらせる。
「あ、あの……」
だが、それで追求を緩めてくれるわけもなく。
「なに? はっきり言って」
「あたしはただ……ネイト様と二人になりたくて……」
「は? なってじゃないか。デートにアデラを連れてきたこと、今まであった?」
「……ない、ですが……学園ではいつもアデラさんが一緒ですし……それに週に一度のデートでもアデラさんが原因で……その、遅刻されたり、キャンセルされたこともありますし……」
「アデラが原因? 嫌な言い方するね。それに遅刻もキャンセルも、ちゃんと理由があってしたことだ。きみもそれは承知しているよね?」
「……けれど。どうしても、ネイト様は恋人のあたしより、幼馴染みのアデラさんを大事にされているようで、あたし……っ」
絞り出すようにもらされた伯爵令嬢の言葉に、ネイトは「何それ」と吐き捨てた。
「──嫉妬? ぼくはアデラに恋愛感情はないって言っているのに、おかしくない?」
「で、ですが……っ」
そのとき。ネイトの顔から、すっと表情が消えた。
「そんな身勝手な理由で、きみはアデラを泣かせたの?」
「──ひっ」
ネイトは壁から手を離すと、そのまま伯爵令嬢の首を掴んだ。力は込められていない。だが、伯爵令嬢に恐怖を与えるのは、充分だった。
「アデラから、きみは優しい人だと聞いていたから、付き合ったのに。残念だよ」
僅かに、手に力が込められた。少しの圧迫を感じ、伯爵令嬢の手が震えた。
「ねえ、伯爵令嬢。アデラが子爵令嬢だからって、泣かせたの? なら、覚えておいて。ぼくは、侯爵令息だよ。この意味、わかるよね?」
返事は?
顔を近付けられ、伯爵令嬢はできる範囲で小さく、こくこくと頷いた。
「うん。じゃあ今後、ぼくにも、アデラにも近付かないでね。もし約束を破ったら、ぼくはきみに、何をするかわからないよ?」
伯爵令嬢は涙を流しながら、掠れた声で「……はい」と答えた。
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