幼馴染みに恋愛感情がないのは本当みたいですが、だからと言って何をしても許されるとは思わないでくださいね。

ふまさ

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「──早くはなしてっっ!」

 アデラが泣きながら叫び、ネイトの胸をどんと叩いた。ネイトの手から力が抜け、エリンは涙目になりながら、地面に両手をついた。

「……アデラ?」

「馬鹿馬鹿! エリン様は、いじわるで水をかけられて動けずにいたあたしを心配してくれただけなの! 早く着替えないと、具合が悪くなるからって!!」

 これには流石にネイトも「……え?」と、目を丸くし、慌ててエリンに謝罪した。

「ご、ごめん。勘違いして……立てる?」

 すまなそうに、上半身を起こそうとするエリンに手を差し出すネイト。エリンはその手を、ぱしっと払った。

「──結構。自分で立てます」

 言葉通りに立ち上がったエリンは、乱れた髪を整え、制服についた土を払った。アデラとネイトがおろおろする。

「ご、ごめんなさい。あたしが誤解されるような態度を取っていたばかりに……」

「違う。悪いのはぼくだよ。よく話しを聞きもせず……本当にごめん。だってきみが、今朝、おかしな質問してきたら、つい」

 エリンが「──わたしのせいだとでも?」と冷たい声音で問うと、いつもと違う様子に気付いたのか、ネイトは「い、いや。そんなつもりは」と珍しくも口ごもった。

「そうですか。でもまあ、謝罪は不要です」

 エリンの言葉に、ネイトはほっと胸を撫で下ろした。

「そっか。本当にきみは、優しいね」

「勘違いしないでくださいね。たんに、わたしが完全に吹っ切れる切っ掛けとなったので、この場での謝罪はまあいいかと思っただけです」

「? それはどういう……」

 エリンはふっと口角をあげた。

「ねえ、ネイト。わたし、公爵令嬢なんですよ。知っていましたか?」

 質問の意図が読めず、ネイトが戸惑う。その横では、いつものエリンと雰囲気が違うことにアデラも気付いたのか、ひどく困惑している様子だった。

「……もちろん。知っている、けど」

「それは、良かったです。わたし、頭と背中が痛むので、早退しますね。それではご機嫌よう」

 足を校舎内に向けるエリン。アデラがネイトの服の裾を焦りながら引っ張る。

「ネイト! エリン様に付き添ってあげないと!」

「あ、ああ。そうだね。エリン、待っ──」

 エリンは、にっこり笑った。

「必要ありません。それよりネイト。アデラがびしょ濡れですよ? 風邪でも引いたらどうするのです?」

 この期に及んで、まだ「え、ええと」と迷うネイト。アデラは「あたしのことはいいから!」と必死だ。

 ──馬鹿馬鹿しい。

 エリンは胸中で吐き捨て、さっさとその場を後にした。

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