惚れた弱みにも、限度がありました。

ふまさ

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「ゴンザレス子爵。もう充分です。慰謝料はやはり、減額はしません。この男をはやく連れて行ってください」

 席を立ち、嫌悪感まるだして距離をとりはじめたマーシアに、パスカルは唖然とした。それは、マーシアの行動と台詞、両方に驚いたせいだった。

「……減額?」

 ゴンザレス子爵は、はあと深いため息をついた。

「私はその必要はないと言ったが、マーシアが、自分にも非があったからと、お前が少しでも心からの謝罪を見せたら、慰謝料を減額すると言っていたんだ。貴様はそれを、見事台無しにしたがな」

 パスカルはさあっと顔から血の気を引かせ「マ、マーシア!」と、縋り付くように叫んだ。

「ぼく、ちゃんと謝っただろ?!」

「どこが? わたしは、口だけじゃない、心からの謝罪を求めていたのよ。そんなもの、一度も感じられなかったわ」

「そんなの、きみの──」

「黙って。あなたの腹が立つだけの言い分なんて、もう聞きたくないの。よかったじゃない。これからは好きなだけ、女性をはべらせる生活ができるのよ? もっと喜んだら?」

「貴族令息のぼくに、庶民に交じって暮らせと──っっ」

 言い終わる前に、ゴンザレス子爵の付き人が、パスカルを持ち上げ、肩にのせた。

「おろせ! おろせよ!」

 暴れるパスカルの頬を、ゴンザレス子爵が無言で平手打ちした。

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