姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ

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 ──同時刻。

 街から戻ってきたライナスは、幼少のころから仕えてくれている従者のホレスと共に、国王が用意してれた宮廷内にある客室に向かい、歩いていた。それを待ち構えていたかのように姿を現したのは、パメラだった。

「ライナス殿下。お待ちしておりましたわ」

「……これは、パメラ嬢。わたしに何か用でも?」

「はい。お疲れかと思い、お茶の準備をして待っておりましたの」

 ライナスが「まさか、二人でとは言いませんよね?」と眉をひそめる。パメラは口元を覆いながら笑った。

「ご心配なく。ヘイデン殿下はいま、国王になるための必要な教育を受けておられますから」

 ライナスは大きくため息をついた。

「パメラ嬢。わたしは友好国の王子の婚約者候補であるあなたと、特別親しくなるつもりはありませんよ」

 パメラが「まあ!」と顔を赤くする。

「特別親しくだなんて……あたし、そんなつもりはありませんよ?」

 言いながら、ちらちらとライナスを見てくるパメラ。口元があきらかに緩んでいる。ライナスは何だか苛ついたが、あえて微笑んでみせた。

「それは良かった。では、わたしはこれで失礼します」

「あ、お待ちくださいな!」

 ぐいっ。逃がさない、とでも言うように腕をつかまれた。主への無礼にホレスが動きかけたが、ライナスはそれを視線だけで止めた。腐っても、相手は第一王子の婚約者──候補だ。怒鳴り付けるわけにもいかないし、どうするか。考えたところで、ライナス自身も意図しないところで、とある問いかけを口にしていた。

「──あなたには、妹がおられるのだとか」

 ライナスから話しかけられたことが嬉しかったのか。パメラは、顔を輝かせた。

「ええ。一つ下の、妹がおります。と言っても、血は繋がっていないのですが」

「血の繋がりがない?」

「はい。あたしの母親と、あの子の父親が再婚しましたので。連れ子同士という関係ですね」

「なるほど……」

 雰囲気はもちろんのこと、見た目も何ら共通点がないと感じていたが、そういうことかとライナスは妙に納得した。

「あの、ライナス殿下はどこであたしに妹がいることをお聞きになったのですか?」

 まさか夜更けにうろうろしていて出逢ったとも言えず「ああ、いや……」と答えを濁していると、パメラはあからさまに表情を暗くした。


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