12 / 57
12
しおりを挟む
──同時刻。
街から戻ってきたライナスは、幼少のころから仕えてくれている従者のホレスと共に、国王が用意してれた宮廷内にある客室に向かい、歩いていた。それを待ち構えていたかのように姿を現したのは、パメラだった。
「ライナス殿下。お待ちしておりましたわ」
「……これは、パメラ嬢。わたしに何か用でも?」
「はい。お疲れかと思い、お茶の準備をして待っておりましたの」
ライナスが「まさか、二人でとは言いませんよね?」と眉をひそめる。パメラは口元を覆いながら笑った。
「ご心配なく。ヘイデン殿下はいま、国王になるための必要な教育を受けておられますから」
ライナスは大きくため息をついた。
「パメラ嬢。わたしは友好国の王子の婚約者候補であるあなたと、特別親しくなるつもりはありませんよ」
パメラが「まあ!」と顔を赤くする。
「特別親しくだなんて……あたし、そんなつもりはありませんよ?」
言いながら、ちらちらとライナスを見てくるパメラ。口元があきらかに緩んでいる。ライナスは何だか苛ついたが、あえて微笑んでみせた。
「それは良かった。では、わたしはこれで失礼します」
「あ、お待ちくださいな!」
ぐいっ。逃がさない、とでも言うように腕をつかまれた。主への無礼にホレスが動きかけたが、ライナスはそれを視線だけで止めた。腐っても、相手は第一王子の婚約者──候補だ。怒鳴り付けるわけにもいかないし、どうするか。考えたところで、ライナス自身も意図しないところで、とある問いかけを口にしていた。
「──あなたには、妹がおられるのだとか」
ライナスから話しかけられたことが嬉しかったのか。パメラは、顔を輝かせた。
「ええ。一つ下の、妹がおります。と言っても、血は繋がっていないのですが」
「血の繋がりがない?」
「はい。あたしの母親と、あの子の父親が再婚しましたので。連れ子同士という関係ですね」
「なるほど……」
雰囲気はもちろんのこと、見た目も何ら共通点がないと感じていたが、そういうことかとライナスは妙に納得した。
「あの、ライナス殿下はどこであたしに妹がいることをお聞きになったのですか?」
まさか夜更けにうろうろしていて出逢ったとも言えず「ああ、いや……」と答えを濁していると、パメラはあからさまに表情を暗くした。
街から戻ってきたライナスは、幼少のころから仕えてくれている従者のホレスと共に、国王が用意してれた宮廷内にある客室に向かい、歩いていた。それを待ち構えていたかのように姿を現したのは、パメラだった。
「ライナス殿下。お待ちしておりましたわ」
「……これは、パメラ嬢。わたしに何か用でも?」
「はい。お疲れかと思い、お茶の準備をして待っておりましたの」
ライナスが「まさか、二人でとは言いませんよね?」と眉をひそめる。パメラは口元を覆いながら笑った。
「ご心配なく。ヘイデン殿下はいま、国王になるための必要な教育を受けておられますから」
ライナスは大きくため息をついた。
「パメラ嬢。わたしは友好国の王子の婚約者候補であるあなたと、特別親しくなるつもりはありませんよ」
パメラが「まあ!」と顔を赤くする。
「特別親しくだなんて……あたし、そんなつもりはありませんよ?」
言いながら、ちらちらとライナスを見てくるパメラ。口元があきらかに緩んでいる。ライナスは何だか苛ついたが、あえて微笑んでみせた。
「それは良かった。では、わたしはこれで失礼します」
「あ、お待ちくださいな!」
ぐいっ。逃がさない、とでも言うように腕をつかまれた。主への無礼にホレスが動きかけたが、ライナスはそれを視線だけで止めた。腐っても、相手は第一王子の婚約者──候補だ。怒鳴り付けるわけにもいかないし、どうするか。考えたところで、ライナス自身も意図しないところで、とある問いかけを口にしていた。
「──あなたには、妹がおられるのだとか」
ライナスから話しかけられたことが嬉しかったのか。パメラは、顔を輝かせた。
「ええ。一つ下の、妹がおります。と言っても、血は繋がっていないのですが」
「血の繋がりがない?」
「はい。あたしの母親と、あの子の父親が再婚しましたので。連れ子同士という関係ですね」
「なるほど……」
雰囲気はもちろんのこと、見た目も何ら共通点がないと感じていたが、そういうことかとライナスは妙に納得した。
「あの、ライナス殿下はどこであたしに妹がいることをお聞きになったのですか?」
まさか夜更けにうろうろしていて出逢ったとも言えず「ああ、いや……」と答えを濁していると、パメラはあからさまに表情を暗くした。
239
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる