姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ

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 同時刻。

 学園に着いたヘイデンは、その足で、とある公爵令嬢の元へと急いでいた。資料によるとその令嬢はマイラと同学年。まだ婚約者も恋人もおらず、頭の出来も悪くないとのこと。他にも候補はいたものの、ヘイデンはまず、その令嬢に目をつけた。

(これがうまくいけば、今日で婚約者探しを終えられる)

 面倒なことは、とっとと済ませておくに限る。その思いから、ヘイデンは足早に公爵令嬢がいる教室を目指していた。

 だからだろうか。この時点で、自身を見つめるまわりの視線が、昨日までとはまるで違っていたことに気付かなかったのは。


 教室に着くなり、ヘイデンは教室内にいた一人の男子生徒に、目当ての令嬢の名を告げた。男子生徒が席に座る一人の女子生徒を指差す。ヘイデンは男子生徒に礼を言い、その女子生徒に近付いた。

 まわりがざわつく。ヘイデンは気にしない。容姿端麗。文武両道。そして、第一王子という地位。

(どこにいようと注目の的にされてしまうのは、仕方のないことだ)

 ヘイデンは苦笑しながら、目当ての公爵令嬢の前に立った。公爵令嬢が、席に座りながらゆっくりと顔をあげる。顔を赤らめるかと思ったが、目の前の女は驚愕に目を見開いたかと思うと──眉をひそめた。

「あの、何か……?」

 その態度にいささか苛立ちを感じたヘイデンだったか「突然すまない。君と話したいことがあるんだ。少しだけ私に時間をくれないだろうか」と、にっこりと笑ってみせた。だが、女はますます表情を曇らせた。

「……話し、ですか。では、ここでお願いできますか?」

 ヘイデンは片眉をぴくりとあげた。

「いや、とても大事な話しなんだ。あまり人に聞かれたくない。むろん、君にとって悪い話しではないから安心してくれ」

「……申し訳ありません。ヘイデン殿下と二人きりになるのはちょっと……」

 うつ向く女に、ヘイデンは一人納得した。何だ、照れているだけかと。もしくは、パメラという婚約者がいる王子と二人きりになるのには立場的にまずいと、そう警戒しているのかもしれない。

「そうか。私も考えなしだったな。謝るよ」

「…………」

 沈黙する令嬢。教室内を見渡すと、みなこちらに視線を集めているものの、一定の距離は保たれていた。それを確認したヘイデンは、小声で語りはじめた。
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