姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ

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「──実は君に、私の婚約者になってほしいと思っていてね」

 ヘイデンの言葉に、公爵令嬢は顔をあげた。その双眸は、驚きに見開かれていた。

「……ヘイデン殿下にはすでに、パメラ様という婚約者がいるはずでは?」

 ヘイデンは意識して、表情を曇らせた。

「……ああ、そのとおりだ。だが、まだ詳しく話すことは出来ないが、パメラは王妃にはなれないんだ……」

 切ない声音で、ヘイデンが呟く。これで勝手に、病気だと何だと想像してくれるだろう。そう思っていたのだが──。

「どうして詳しく話せないのですか?」

「……誰にでも、言いたくないことの一つや二つ、あるものだろう?」

「いいえ。これに関しては、そんな訳にはいきません。どうしてパメラ様は王妃になれないのか。どうしてわたくしに婚約者になってほしいと思われたのか。全て、偽りなく、お話しくださいませ。でなければ、お返事のしようがありませんわ」

 ヘイデンは一瞬、頭に血がのぼるのを感じた。だが、本能のままに手を出せば、いくら第一王子とて、どうなるかわからない。

(……こいつはハズレだな)

 ヘイデンは胸中で舌打ちしながら、ゆるりと微笑んでみせた。

「確かにそうだな。失礼した。出直してくるよ」


 教室を出て、三階にある自身の教室に向かう。廊下を歩いているあいだ、階段をのぼるあいだ、生徒たちがヘイデンを遠巻きに見ながら、何やらこそこそと話しているのが視界の端であちこち見られた。いつもの羨望の類いではない、何か、もっと別の──。

(何なんだ……くそっ)

 先ほどのことも相まって、よけいにイライラが募っていく。

 こうなると、余計にパメラに会いたくなってくる。婚約者探しのため、しばらくは距離を置こうかとも思っていたが、やめだ。どちらにせよ、みなはまだ、パメラが婚約者だと思っているのだから、無意味だろう。

(もっとうまい作り話を考えればいいだけだ)

 気位の高い貴族令嬢は、これだから嫌なんだ。ヘイデンは三階までのぼってからくるりと方向転換をし、昼食の約束をするため、二階にあるパメラの教室を目指した。


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